
去る4月19日、電動キックボードに関する改正道路交通法が衆議院本会議で可決した。2年以内の施行が迫るなか、各地の会議体などで委員を務めるモビリティジャーナリストの楠田悦子氏に話を聞いた(その3/最終回)。16歳から免許不要で乗れるようになる予定の電動キックボードに対して、自治体行政はどう考え、動くべきなのか?
●文:ヤングマシン編集部(田中淳麿)
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交通ルールを学ばないと、何に乗っても危ない ───「事故を起こさない=乗り物を取り上げる」ほうが多い。三ない運動の頃から進化していないのでは? 楠田:新潟県の某市では、自転車通学で事故が多発したらスク[…]
【モビリティジャーナリスト・楠田悦子氏】自動車新聞社モビリティビジネス専門誌「LIGARE」初代編集長を経て、’13年に独立。省庁/自治体等の有識者会議や各種委員会の委員を歴任する。
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交通ルールを学ばないと、何に乗っても危ない
───法改正の可決以降、多くのメディアがそれぞれの立場で論調を展開しています。電動キックボードについては「免許がいらないにしても運転講習をすべき」だとか、それに対して認定制度が必要といった記事も見られます。こうした考えについてどう思われますか?
楠田:何でもかんでも免許がなきゃいけないとは思いません。乗り物側がしっかりしていて、ルールが守れていて、インフラがしっかりしていれば別にいらないなとは思うんですよね。日本のインフラが脆弱だったり、乗り物自体が危ないからそう言われるんだと思うんですよ。
デンマークとかは、車道はここ、自転車はここを走るというのが本当に徹底されていて、「危ないと感じるようなインフラを作るのは行政の責任だ」みたいなことを言うくらいなので。そこまでインフラ側がしっかりしていたら、そんなに乗り物側に安全性を求めなくてもいいわけですよ。
───安全教育やしつけに厳しいドイツだと、州によっては小学生で交通安全に関する試験をやっているところがあると聞きました。日本だと先生が教えて先生がチェックするというケースはあるんでしょうか?
楠田:ありますよ。自転車の免許を付与するということをさいたま市(埼玉県)がやっています。さいたま市は「子ども自転車運転免許制度」というのを2013年から導入していて、筆記試験と実技試験をして、合格者には埼玉県警と教育委員会から免許証を交付しています。
───(ネットで調べて)この制度はすごいですね。免許証を持っていればインセンティブまで受けられる。埼玉県自転車軽自動車商協同組合の加盟店で免許証を見せれば、自転車パンク修理が1割引になったり安全点検を無料でしてもらえるんですね。かつては高齢者にも同様の制度があったようで、自転車事故の実情に則した対策をしています。
楠田:やってるところはちゃんとここまでやっているんです。
子供自転車運転免許証の見本。交通安全講習/学科試験のほか、模擬コースでの交差点の渡り方や一時停止といった実技試験があり、合格するともらえる。※埼玉県警察ホームページ内「子供自転車運転免許制度の推進について」より引用(埼玉県警察本部交通総務課/’22年4月12日更新)
───埼玉県は中/高校生への自転車講習を行なっていますし、三ない運動を撤廃してからは、バイクに乗っている/免許を取得した高校生にも講習会を実施しています。埼玉県のような意識の髙い自治体では、電動キックボードについてもこういう対応を取る可能性もあるかもしれません。
楠田:どうでしょうか。自転車については、ここまで多くの人が乗るモビリティだから実現しています。電動キックボードの普及しだいでしょうね。ここまで市民権を得られている乗り物というのは、自転車かクルマしかないわけですよ。子どもの時に自転車の乗り方を親から教えてもらって、補助輪を取って乗るというのが日本だと当たり前だからここまでやれるんです。海外だと自転車に乗れない人がほとんど、という国もあるので。
電動キックボードの位置付けが自転車と同じくらいまで行けば、そういう対応になるでしょうけど、少人数しか乗らない乗り物に対してそこまでできるかはわかりません。ただ、交通ルールを守れている子どもたちが電動キックボードに乗るようなら、期待もできるかもしれません。
───ここまで行政対応についてお伺いしました。電動キックボードについて他に気になっていることはありますか?
楠田:ユーザーからすると、電動キックボードも含めた新しいモビリティを販売するお店の数や周知/PRが全然足りていません。“良いものであるか”よりも、売っていくための環境が整ったり、“売っていこう”という判断で販売網まで作れるかどうかで全然違ってくると思います。
───法改正でモノが認可されても、販売網や周知が整っていないことが課題のひとつだということですね。ありがとうございました。
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