ホンダは欧州で、エンジンのみ先行発表されていた新型ネイキッドスポーツモデル「CB750 ホーネット(CB750 HORNET)」を発表した。91.8psを誇る755cc並列2気筒エンジンに190kgの装備重量、トラコンや充実の足まわり装備で“ホーネット”ブランドを再構築する。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ)
欧州で1998年に登場したホーネット600からライトウェイトスポーツのコンセプトを継承
ホンダは欧州で、従来“ホーネット コンセプト”と呼ばれていたニューマシンを正式発表した。その名も「CB750 ホーネット(CB750 HORNET)」だ。
クラスをリードするパワーウェイトレシオを標榜し、91.8ps/7.65kg-mを誇る新設計の755cc並列2気筒・ユニカムSOHC4バルブエンジンを装備重量190kgのパッケージにまとめ上げた。ミッドレンジの力強さとトップエンドパワーを両立するエンジンはスロットルバイワイヤで制御され、3段階のライディングモードを実装。3段階のホンダセレクタブルトルクコントロール(HSTC=トラクションコントロールシステムに相当)には、ウイリーコントロールと3レベルのエンジンブレーキコントロール、パワーデリバリー制御が統合されている。
新設計フレームには前後SHOWA製サスペンションを装備。フロントはSFF-BP、リヤはリンク式モノショックだ。フロントブレーキはダブルディスク+ラジアルマウントキャリパーで制動力とコントロール性を両立する。
5インチフルカラーTFTのメーターパネルには、スマートフォン接続することで利用可能なHSVC(ホンダスマートフォンボイスコントロール)を採用。灯火類はフルLEDで、ウインカーにオートキャンセル機構とエマージェンシーストップシグナル(急ブレーキでハザードが高速点滅)を組み込んでいる。
英国で発表された価格は6999ポンド(日本円換算約115万円)。なんとNC750XのMT仕様(7846ポンド)よりも安い。現地での価格比を当てはめるなら、日本で発売された場合の価格はなんと82万4000円程度になる。これはちょっと凄い価格設定だ。
“トータルコントロール”のアナザーストーリー?
1996年に初登場したホーネット(250)、1998年に登場したホーネット600(欧州名:CB600F ホーネット)、そして2001年に登場したCB900ホーネットは、いずれもスーパースポーツのCBR系に由来する並列4気筒エンジンを搭載していた。2000年代で販売終了していたホーネットが2022年に蘇るにあたって、並列2気筒エンジンを搭載していることに抵抗感を覚えるファンもいることだろう。
ただ、新型ホーネットのコンセプトである「Fast, agile, fun.」は歴代ホーネットも持ち合わせていたものだ。軽量な車体とパワフルなエンジンの組み合わせが、リッターバイクにも対抗できる運動性と楽しさを実現するという点では、今回のエンジンチョイスはけっして不自然なものではない。
初代CBR900RRファイアーブレードからCBR954RRファイアーブレードまでの開発責任者を務めた馬場忠雄さんは、かつて引退後のインタビューで、「もし次にスポーツバイクを作るなら?」という問いに対し、「100馬力程度で軽量な車体、何より100万円以下の買いやすい価格で操って楽しいスポーツバイクを作りたい。それはきっと2気筒か3気筒になるだろう」と回答してくれたことがある。時を経て登場した新型ホーネットは、スーパーバイク世界選手権のレギュレーションに縛られなかった時代の「トータルコントロール」を改めて体現している、と言ってもいいのかもしれない。
270度位相クランク&ユニカム採用の755cc並列2気筒エンジン
新設計の並列2気筒エンジンは、内径87mm×行程63.5mm(ボアスト比0.7299)というかなりのショートストローク設定。シリンダーヘッドをコンパクトにできるユニカム式のSOHC4バルブとし、CRF1100LアフリカツインやNC750系で実績のある270度位相クランクを採用した。乱暴に言ってしまえば、アフリカツインのエンジンを小さくしてショートストローク化したような構成になっている。
これらの狙いは、低中回転域でエキサイティングなトルクとクラスをリードする最高出力を発生しながら、コンパクトなエンジンが車体全体の軽量化に貢献することで、ストリートにおける機敏で楽しい走りを実現すること。270度位相クランクは90度のVツインエンジンと同じ爆発間隔を有し、鼓動感のある低中回転と、慣性トルク変動を2つの気筒が打ち消し合う特性によって高回転域のスムーズな吹け上がりやエンジンブレーキの滑らかさを提供してくれる。
このほか、エンジンまわりでは特許登録済みのヴォーテックスエアフローダクトやアシスト&スリッパークラッチを採用。また、燃費は23km/Lとすることで340kmの航続距離(タンク容量は15.2L)を確保した。
電子制御関連では、ライダーモードはレイン/スタンダード/スポーツの3種類。3レベルのエンジンパワーとエンジンブレーキ制御、ウイリー制御を統合したホンダセレクタブルトルクコントロール(トラコン相当)をがモード設定に合わせて変化する。もちろんユーザーモードを選択すれば個別のセッティングも可能だ。なお、クイックシフターはオプション設定とされる。
スズメバチのようなスタイリング
不要な部分を削ぎ落したかのようなシャープなデザインが最新のホーネット像を表現する。ライディングポジションはネイキッドスポーツらしくアップライトなものだ。
5インチTFTモニターは表示をカスタマイズ可能で、シフトアップインジケーターも装備。アンドロイドとIOSで使えるスマートフォン接続により、ホンダスマートフォンボイスコントロール(HSVC)も採用している。
フレームは新設計のスチール製ダイヤモンドで、単体重量は16.6kg(CB650Rは18.5kg)。キャスター角25度/トレール99mmとし、足まわりはフロントにSHOWA製φ41mmSFF-BP倒立フロントフォーク(ストローク130mm)、リヤにはSHOWA製ショックユニット(5段階プリロード調整機構付き)をプロリンクを介してマウントする。リヤホイールトラベルは150mmと長めにとってあり、さまざまな路面に対応してくれそうだ。
フロントブレーキはφ296mmのディスクをダブルで装着し、ニッシン製ラジアルマウントキャリパーを装着。フロントタイヤは120/70ZR17だが、リヤタイヤは敢えて細めの160/60ZR17を履く。
このほか、欧州では3種類のアクセサリーパック、「スポーツパック/スタイルパック/ツーリングパック」をラインナップする。
HONDA CB750 HORNET[2023 EU model]
主要諸元■全長2090 全幅780 全高1085 軸距1420 最低地上高140 シート高795(各mm) 車重190kg(装備)■水冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブ 755cc 91.83ps/9500rpm 8.65kg-m/7250rpm 変速機6段 燃料タンク容量15.2L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=160/60ZR17 ※諸元は欧州仕様
CB750 ホーネットのディテール
オプションパック
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