2022年のお盆休みは、高速道路の休日割引が適用されないことになりました。これの根拠はコロナ禍の前にあたる2019年と比較して、2022年のゴールデンウィークは交通量の減少が見られたからということです。しかし、よく見てみると同条件に揃っているとは言えないことがわかってきました。これ、都合のいい統計なんじゃありませんか?
●文: Nom(埜邑博道)
今年のお盆休みは、休日割引が適用されません!
コロナ禍の下の3度目の夏がやって来ました。
さすがに今年は、お盆時期に帰省や家族旅行などを考えている人が多いと思いますが、それに水を差すようにオミクロン派生株BA.5の感染が拡大しています。
とはいえ、ワクチンを3度、4度接種した方々は、不安を抱えながらも今年こそはお盆休みに出かけようとしていて、すでに予定を立てている方も多いと思いますが、もうひとつ、そんな気持ちに水を差すのが8月11日~14日までのお盆休み期間はNEXCO3社管轄の全国の高速道路とJB本四高速、宮城県道路公社管轄の高速道路は休日割引が適用されないことです。
筆者にも、ETCマイレージ事務局からその旨のメールが届いていますが、そのメールに書かれている休日割引除外の理由は、「社会資本整備審議会・道路分科会・国土幹線道路部会の中間答申において、繁忙期を中心に激しい渋滞が発生している状況や、観光需要を平準化する取組みも進められている状況を踏まえ、繁忙期等の交通の集中が見込まれる時期等においては、渋滞の激化を避けるため、休日割引を適用しないことについて検討する必要があるとされていることを受けた国土交通省からの依頼により実施するものです」というもの。
WEBヤングマシンでも以前お知らせしていますし、実際に今年のGWの4月28日(木)~5月8日(日)の11日間の間は、土日休日であっても休日割引は適用されませんでした。
では、今年のGWに休日割引を行わないことで、高速道路の渋滞状況はどうだったのか。目論見通りに、渋滞は緩和されたのでしょうか。
GW期間中、新型コロナウイルス感染症の流行が少し収まっていたこともあって、TVのワイドショーは観光地の人出の多さとともに、各高速道路の渋滞状況を詳細にレポートしていました。そして、TVを見ていた印象では休日割引が適用されないにもかかわらず、各高速道路の渋滞はコロナ禍以前と同様、絶望的な混みようでした。
つまり、休日割引があろうがなかろうが、そこしか長い休みを取れない方々は渋滞すると分かっていても、その期間に旅行や帰省などをせざるを得ない。しかも今年は、高速道路料金も通常のままという二重の苦しみを味わったことになるのではないでしょうか。
国交省の指導の下始まった繁忙期の「休日割引除外」は、我々ユーザーにとって何かメリットはあったのでしょうか。
それを検証すべく、NEXCO3社がそれぞれGW明けの5月6日に発表した「ゴールデンウイーク期間における高速道路の交通状況」のデータを見てみました。
今年の渋滞状況のデータと比較対象となっているのは、各社とも新型コロナウイルス感染症が流行する以前の2019年のもので、参考としてコロナ禍だった昨年(2021年)との比較も行っていました。
まず、高速道路全体の交通量ですが、NEXCO東日本(以下東日本)は平均日交通量が3万300台/日で対2019年が74%、対2021年が131%、NEXCO中日本(以下中日本)は4万7700台/日で対2019年が80%、対2021年が129%、NEXCO西日本(以下西日本)は4万2800台/日で対2019年が78%、対2021年が139%となっています。
コロナ禍だった昨年よりは3社とも全体交通量は増えていますが、2019年に比べると減少したというデータになっています。
次に、10km以上の渋滞回数とその内30km以上の渋滞が何回あったか。
東日本は、10km以上が97回(2019年169回、2021年51回)、30km以上が14回(2019年25回、2021年3回)、中日本は10km以上が103回(2019年194回、2021年36回)、30km以上が5回(2019年15回、2021年3回)、西日本は10km以上が82回(2019年178回、2021年4回)、30km以上が6回(2019年7回、2021年3回)でした。
そして、最大の渋滞長を見てみると、東日本が51.9km(2019年49.7km、2021年41.1km)、中日本が46.2km(2019年49.5km、2021年39.5km)、西日本は43.5km(2019年41.6km、2021年19.7km)となっています。
10連休だった2019年との比較は適切なのか?
確かに、コロナ禍以前の2019年と今年のデータを比較すると(東日本の最長渋滞長を除いて)、今年のほうが幾分、渋滞が緩和されているように見えます。ただ、データを分析していて気づいたことがあります。それは、2019年は4月27日(土)~5月6日(月・祝日)まで10連休だったこと。
間に平日を1日も挟まないという非常に日並びのいいGWだったために、高速道路を使って遠出をした方々が多かったことが推察されます。そんな年と今年を比較することが適切なのかと思い、東日本の広報担当者に4月28日~30日が3連休で、5月1日と2日の平日を間に挟んで、5月3日~6日まで4連休というあまり日並びのよくなかった2018年のデータを調べてもらいました。
まず、平均日交通量は2022年の3万300台に対し2018年は3万9200台、10km以上の渋滞は2022年97回、2018年102回、うち30km以上は2022年14回、2018年12回、最大渋滞長は2022年51.9km、2018年56.5kmでした。
データを見る限り、今年のように間に平日を挟んでいた2018年と比較すると、休日割引が適用されなかったことによる影響はほとんどないように見えることが分かりました。
もちろん、渋滞の原因はさまざまで、交通集中に加えて予期できない交通事故によるものもありますから、単純な比較はできないことは承知していますが、2019年の10連休のようなときは予定を立てる自由度もあることから、交通量がバラける傾向にあり、逆に間に平日を挟むと子供が学校に行かなければいけないファミリー層はどうしてもその平日を避けるため交通集中が起きやすいとのこと。
どうしてもGWやお盆しか長い休みが取れない方々にとって、休日割引が除外になるのは非常に大きな不利益ではないかという質問に対して、NEXCO東日本の担当者は「ご迷惑をおかけして、大変申し訳なく思っている」とのことでしたが、繁忙期の休日割引除外を決定したのは国交省で、NEXCO3社はその指令の下、粛々と実行しているだけでもあるのです。
国交省の見解は、今回のGWの休日割引除外は「一定の効果があった。今後も続けていく方針」とのことで、いつものことですが痛みを感じる国民のことはおいてきぼりで、自分たちが書いた絵どおりに進めることのみが目的になっているように感じてしまいました。
唯一休日割引除外がない二輪車定率割引とツーリングプランを活用しましょう!
前述したように、割引があろうがなかろうが、そこしかお休みが取れない人たちはそこで行かざるを得ないわけですから、NEXCO各社としては何かほかの優待処置などを考えられないかと、NEXCO東日本の担当者に聞いてみました。いくらお国(国交省)の指令だとは言え、NEXCO各社は事業会社ですから売上増加につながるユーザーの利便性向上案を検討するのは当然のことのはずです。
しかし、残念なことに、一定の高速道路料金で高速道路を乗り・降り放題になる「周遊割」(NEXCO各社で呼称は異なります)も、GWやお盆は適用外。唯一、繁忙期も適用になる割引はみなさんもよくご存知の「二輪車定率割引」と「ツーリングプラン」のみです、という回答でした。
ツーリングにはとても便利でメリットも大きい定率割引とツーリングプランですが、残念ながら家族旅行や帰省などには使えない(使いにくい)ので、多くの人のための救済処置とは言えません。
多くの人を対象とするなら、エリアが決まっている周遊割ではなく、バイクの定率割引のように事前登録すればいつでも定率の割引が受けられるような、クルマの定率割引があってもいいように思います。
休日割引除外の目的は交通集中の緩和なのですから、ユーザーが不利益をこうむるだけの施策ばかりではなく、多くのユーザーがメリットを受けられるような交通量分散の施策をもっと真剣に考えてもらいたいものです。
※本記事は“ヤングマシン”が提供したものであり、文責は提供元に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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