ファイナルエディション登場で価格高騰

ヤマハSR400 …空冷シングル搭載、43年の歴史に幕をおろした単車遺産〈YM的新車バイクざっくり解説#3〉

「このバイクって、どこが良いの?」バイク好きなら一度は口にしているであろうこのセリフ。そんな疑問に一発回答! 日夜ニューモデルに触れまくっているヤングマシン編集部が、取材で得た裏話も交えて注目モデルの魅力のキモをピンポイントで伝えます。第3弾はヤマハのSR400。1978年から基本的な姿を変えることなく、2021年に最後の新車が発売された。


●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:スタジオコバ(藤川翔平)、ヤマハ ●外部リンク:ヤマハ

オフロードバイク「XT500」をベースに誕生

2021年にファイナルエディション/ファイナルエディションリミテッドが発売されたヤマハSR400は、1978年にヤマハ初の4ストローク・ビッグシングルのXT500(1976年登場)をベースに誕生した、トラディショナルスタイルのロードスポーツだった。発売当初はSR500と併売で、バランサー機構を持たない空冷2バルブ単気筒という最もシンプルな構成が愛され、シングルレースやストリートカスタムなどに由来するブームを経て43年の歴史を刻んできた。

【’78 YAMAHA SR400[2H6]/500[2J3]】■全長2105 全幅765[845] 全高1135[1155] 軸距1410 シート高810(各mm) 車重158kg(乾) ■空冷4スト単気筒SOHC 2バルブ 399cc[499cc] 87×67.2mm[87×84mm] 27ps/7000rpm[32ps/6500rpm] 3kg-m/6500rpm[3.7kg-m/5400rpm] 変速機5段 燃料タンク容量12L ■タイヤサイズF=3.50-19/R=4.00-18 ●価格:31万円[35万円] ※[ ]内は500 ※写真の車体色はブラックゴールド(共通色)/タイトル写真の赤は’78年式の500

誕生した1978年当時を見ても、すでに時代の中心は多気筒モデルになっており、シングルエンジンはどちらかというとマニアやカスタム派にとって好材料。当初は大きな人気を得られなかったが、キャストホイール化→スポークホイールに戻す、ディスクブレーキ→あえてドラムブレーキ化といった紆余曲折を経て、それでも大きく姿を変えることなく熟成を重ねてきた。

セルスターターを持たず、キックスタートのみという始動方式は乗り手を選ぶといわれ、じっさいにキャブレター時代は一発でエンジンを掛けられるかどうかでオーナーのキャリアが分かってしまっていた。その後、2001年にフロントブレーキを再びディスク化(初代からは刷新したディスク&キャリパーを採用)し、2009年にはFI装備で厳しさを増した排ガス規制に適合するとともに始動性も向上した。2018年には、さらなる新規制に対応すべくキャニスター(燃料タンクの蒸発ガスを浄化)を装備し、ECUやマフラー内部構造が変更された。

初期型のエンジンは27psを発揮したが、最終モデルでは24psまでおとなしくなり、それでもシングルのビートを残しながら深化を続けてきたのがSR400だ。

初代モデルは強制開閉式のキャブレターを装備し、明確な鼓動感をイージーすぎないスロットルレスポンス、そしてフロント19インチホイール(1985年に18インチ化)によるおおらかな操縦性が特徴。それに比べれば最終モデルはソフトなエンジンフィーリングになっているものの、FIのチューニングなどでシングルらしい鼓動感を取り戻すこともできる。また、初代から引き継いできたしなやかな車体をコントロールし、シビアな領域に入り込むことなくスポーツライディングを楽しめるという往年のヤマハハンドリングは今も健在だ。ビッグシングルが路面を蹴るさまがダイレクトに感じられるのもSR400ならでは。

ヤマハはこの最終モデルに至った理由を「今後施行されるさまざまな規制に対応していないため」としており、エンジンの排出ガス規制適合だけでなくABSの義務化など、多くのハードルが立ちふさがったことを偲ばせる。2021年3月15日に発売された「SR400 Final Edition」は60万5000円、サンバースト塗装など特別仕様を施した「SR400 Final Edition Limited」は74万8000円だった。

現在では中古車価格が高騰を続け、年式を問わず状態のいいもので50万円を切るタマを見つけるのは困難。ファイナルエディションの新車/新古車に100万円を大きく超えるプライスタグを付ける業者も珍しくはない。手に入れた幸運なユーザーは、これからも大切に乗っていってほしい。

なお、タイではSR400が継続ラインナップされており、現行モデルには日本で見られなかったグラフィックも存在する。いつまで生産されるかは未知数だが、復活の望みを託すことはできるのだろうか……。

「SR400」はこんな人にオススメ!=“面倒なことも含めて趣味として楽しみたい!”という人に

こちらの2車はタイ仕様。左はヤマハブラックを名乗るが、日本ではなかったグラフィック。右のグリーンメタリックは35周年記念で登場したカラーリングをモチーフとしている(シートなど細部は異なる)。日本に持ち込んでも登録はできない。現地価格は28万5000バーツ(日本円換算約107万円)だ。

【YAMAHA SR400 Final Edition / Limited[2021 model]】主要諸元■全長2085 全幅750 全高1100 軸距1410 シート高790(各mm) 車重175kg(装備)■空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 399cc ボア×ストローク87.0×67.2mm 圧縮比8.5:1 最高出力24ps/6500rpm 最大トルク2.9kg-m/3000rpm 始動方式キック 変速機5段 燃料タンク容量12L■キャスター角27°40′ トレール111mm タイヤサイズF=90/100-18 R=110/90-18 ●価格:60万5000円/リミテッド=74万8000円 ●色:灰、青、黒(リミテッド) ●発売日:2021年3月15日

SR400ファイナルエディションリミテッド:販売店が限られるエクスクルーシブモデル

限定1000台で発売された「リミテッド」は専用装備を満載。特にサンバースト塗装は、過去に5回も限定車に採用されたことのある、まさにSRのラストにふさわしいグラフィックだ。なおこのリミテッドは、YZF-R1やテネレ700と同様にエクスクルーシブモデルとして、YSP店(リニューアル中の店舗含む)とアドバンスディーラーにて専売された。

YAMAHA SR400 Final Edition Limited[2021 model]ヤマハブラック

職人が手作業で塗り上げるサンバースト塗装を採用。リミテッドでは黒を基調に、タンク側面にブラウン系のグラデーションが入る。音叉エンブレムは専用の真鍮製だ。

ホワイトメーターの通常モデルに対し、専用のブラック文字盤を採用。タコメーターはFinal Editionの文字入りだ。

前後リムはアルマイト処理でカッパーブラウンに彩色。この色もリミテッド用の新色だ。

サイドカバーのエンブレムは電鋳立体の専用品。右側はシリアルNo. が入る。

シートには茶と黒の本革調表皮を採用。ステッチカラーもリミテッド専用色。

YAMAHA SR400 Final Edition[2021 model]

ダークグレーメタリックN(ツートーン)、ダルパープリッシュブルーメタリックX(ブルー)の2色がラインナップされる標準仕様のファイナルエディション。

YAMAHA SR400 Final Edition[2021 model]ダークグレーメタリックN

YAMAHA SR400 Final Edition[2021 model]ダルパープリッシュブルーメタリックX

YAMAHA SR400 Final Edition Limited[2021 model]

YAMAHA SR400 Final Edition Limited[2021 model]


※本記事は“ヤングマシン”が提供したものであり、文責は提供元に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

最新の記事