●文:ヤングマシン編集部
またしてもヤマハの象徴が消える。この流れはもはや止められないのか…? 覚悟していたとはいえ、いざ突きつけられると何ともたとえようのない空虚さに襲われる。空冷/単気筒/キックスターター…。機械と人間の清い関係性を伝え続けてきた「SR400」が43年目にしてファイナルを迎えることを、我々は受け入れなければならない。
ヤマハを象徴する長寿モデルが43年の歴史にピリオド
’78年から43年に渡る国内向け生産は累計12万台以上。そして’20年は400ccクラス2位の2450台(二輪車新聞調べ)を販売。購入者の年代は20代が約30%ともっとも多く、30代/40代/50代もそれぞれ20%前後と、幅広い年代に支持されている「ヤマハSR400」。
非常に残念なことだが、この2輪界きっての超長寿モデルが、ついにファイナルを迎えることとなった。
その理由をヤマハは「今後の様々な規制に対応していないため」と説明する。具体的にはABSの装着義務化で、非対応車は’21年10月までしか生産できないことと、’22年10月以降は平成32年排出ガス規制(≒ユーロ5)のクリアが必須となることの2点がネックになったと思われる。
上述の通り、相変わらず人気は根強いとはいえ、仮に開発コストをかけて規制をクリアしたとしても、その回収は難しい…という判断なのだろう。’20年7月のセローに続き、ヤマハの象徴が消えるという事態は何ともやるせない。
ラストSRは手作業サンバースト塗装で有終の美を飾る
SRを愛するライダーへの最後のプレゼントとして、最終生産車「ファイナルエディション」が2仕様用意された。
まず、標準バージョンはツートーングレーとソリッドブルー。それぞれグラフィックやサイドカバーのロゴが異なり、グレーはタンクに、ブルーはサイドカバーに”Final Edition”の文字が刻まれる。国内の販売台数は5000台を予定。
さらに、その上位モデルとして限定仕様車「リミテッド」が1000台用意された。最大の特徴は燃料タンクに施された”サンバースト塗装”と呼ばれる手作業のボカシ塗装。熟練職人によるマスキング処理や手吹きでの塗装のため、製作できるのは1日に5台が精一杯という。さらに専用の本革調シートや銅色にアルマイトされたホイールリム、専用のエンブレム類など、細部に渡って上質な仕上げが施される。
基本構成を変えずに43年も販売されたという大記録は、電動化などの転換期を迎えている2輪界において、もう破られることはないだろう。そんなレジェンドの最終モデルだけに、ファイナルエディションは、発売発表から数日で6000台を受注。姿を消してしまうのは大いに悔やまれるが、長く語り継がれる稀代の名車となるのは間違いない。
SR400ファイナルエディションリミテッド:販売店が限られるエクスクルーシブモデル
限定1000台の「リミテッド」は専用装備を満載。特にサンバースト塗装は、過去に5回も限定車に採用されたことのある、まさにSRのラストにふさわしいグラフィックだ。なおこのリミテッドは、YZF-R1やテネレ700と同様にエクスクルーシブモデルとして、YSP店(リニューアル中の店舗含む)とアドバンスディーラーにて専売される。
SR400ファイナルエディション:シンプル&アイコニックな新色
標準仕様の「ファイナルエディション」は2色。ブルー車はXS650スペシャルなどを、グレー車は’83年式あたりのSR400/500を彷彿とさせる。”Final Edition”の文字は、前者がサイドカバー、後者はタンクに刻まれる。
SR400短史
SR400は、’78年に500とともに誕生。ビッグオフ・XT500のロードスポーツ版という位置づけだったが、SRXの登場で’85年には前輪の19→18インチ化、フロントブレーキのドラム化などでビンテージ路線へ。’01年には排ガス規制に対応しつつ再びディスク化(500はここで消滅)。’08年に一度生産を中断するも、’10年にFI化し復活。’18年には小改良でユーロ4にも適合した。
サンバースト車は’84年に初登場
’84年の初登場以来、限定のサンバーストカラー車は’95/’03/’08/’18年に登場。今回のファイナルエディションリミテッドで6度目となる。
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