●記事提供:MOTO INFO(初出2022年5月31日)
“若者の〇〇離れ”というフレーズとともに「若者のバイク離れ」とメディアが取り上げた時期に、覚悟を決めて当時流行り始めたSNSから1,000人以上の意見を読み込んだことがある。
実際に「バイクなんて必要ない」と一刀両断する方もいるなかで、実際には「若者からバイクを遠ざけているのは大人の方ではないか」「規制対応や性能競争によって価格が上がってしまっては初心者が購入しづらくなる。」「販売店に行っても跨いだら怒られるのでは!」「どこで買えば良いのか?」など辛辣な投稿が散見された。
そういえば過去に数回、高校生を含め“バイクに対する意識調査”を見た事があるのだが、予想に反してカッコいいという意見や憧れを抱く若者も多いというポジティブな調査結果しか見たことがなかった。そのためここ数年にわたる新規若者ユーザー増加の兆候については正直驚いてはいない。バイクに乗るためのハードルを様々な面で下げることができれば、バイクの世界に入ってきてくれるという期待はあった。
今回、一般社団法人 日本自動車工業会の行った2021年度の市場動向調査でも、50ccスクーターの平均年齢は56.7歳(うち女性38%)に対し、251~400ccオンロードバイクの平均年齢は46.4歳(うち女性7%)と実に10歳の差異(女性の割合は31ポイントもの差)がある。つまり、二輪車ユーザーの中でもどちらかと言うと移動手段が主をする50ccスクーターユーザーを統計に入れてもなお上記の表からわかるように、二輪車ユーザーの全体平均年齢が54.7歳から54.2歳へ下がったという調査結果から、おそらく普通二輪クラスだけでも、さらに中古で購入しているユーザーを含めると実際はもっと若いユーザーが動いているのではないだろうか。
情報の質、量、経路がバイクの価値観を変える
最近バイクに乗り始めた若者と会話すると、必ずと言ってよいほど「SNS(特に動画)」や「アニメ」などの影響を口にする。そしてそれを媒介するデバイスは、通信速度の飛躍的向上や大画面化によって見やすくなったスマートフォンがほとんどだ。
バイクに乗るきっかけはアニメや動画系SNS、商品評価は口コミサイトやSNS全般、レッスンやメンテナンスも動画系SNS、そして納車時の商品説明も動画で見たから店頭説明は不要と語るユーザーも現れはじめるほど。
こうした情報取得方法の変化や消費行動の変化によって、ユーザーの価値観をさらに大きく影響を与えているのが、バイク購入後の具体的な遊び方や楽しみ方を想起させてくれる動画だろう。
SNSにアップされる動画は、近い境遇のユーザーによる投稿であるケースが多く、ある意味で信頼性・信憑性さらに親近感が高まり、インパクトもある。能動的に検索閲覧すれば、以降は優れたレコメンド機能によって自分好みの動画がどんどん表示される。リアルな楽しみ方を伝え、困った時は同じような体験をした動画が情報を提供してくれる。
こうした動画をスマホで閲覧することに若者は絶対的な価値と信頼を見出しており、そこに世の中のトレンドが集約されている。
バイクライフのリアルを伝える動画
バイクやバイク利用者に対するイメージの回答を見ると、2017年の調査では32%に過ぎなかった「人生を楽しんでいる」というイメージがなんと40%にも上昇した。
また、同3位の「趣味性の強い」が2位に浮上しており、バイクのイメージ向上はもちろんのこと、特にバイク使用者に対するイメージが向上している。
何故こんなにも急にバイク利用者(=ライダー)のイメージがアップしたのだろうか。いや、急にそうなったのではなく、これも一重に動画による影響が非常に大きいと考えられる。
もともと今までもカッコよくバイクを楽しむ人がいたが、動画系SNSの普及によってそうしたユーザーが見えやすくなったのではないだろうか。好きな時に好きな情報だけが取捨選択できる。
バイクの性能や数値だけではなく、バイクをどう使うか、どう楽しむか、どう困っているかといったリアルな情報が数多く発信され、カッコ良いライフスタイルや自分が必要とする情報がたくさん見えるようになったのと同時に、間違いなく潜在ユーザーの抱える様々な不安を解消する助けとなっている。
楽しみ方一つにとっても、不安を抱えてバイクを納車されるする(新車を受け取る)場面から実際に様々な旅をしている素晴らしい景色や面白い体験まで、魅力あふれるバイク動画はまさにモノでなくコト寄りの情報であり、スマホという手軽なデバイスを通して若者をバイクの世界にいざなっているのかもしれない。
ユーザーはルックスと”低・楽・安”を重要視
今も昔もバイクの魅力はなんといってもカッコよさ。二輪車市場動向調査の結果でもバイクを選択する際に最も意識するのは「スタイルやデザイン」という結果が出ている。
さらに、視覚的要因以外の回答を仕分けしてみると、”低・楽・安”のキーワードが見えてきた。
- 低いの「低」=低維持費、低燃費に優れ、低価格
- 簡単の「楽」=姿勢が楽、運転や取り回しが楽、整備も楽、気軽に乗れる
- 安心の「安」=安定感があり、操作補助機能装着によって安心、信頼のおけるブランド
昨今のユーザーは、”人生を楽しむモノ”としてバイクを認識しており、エンジン性能や大排気量といった他者の目を気にするステータスとしてではなく、自分のライフスタイルに合っているかどうかを重要視しており、それが”低・楽・安”志向に現れている。昨今、二輪車市場で人気を集めるモデルと照らし合わせても明確だ。
前記の通り、一旦離れてしまったバイクの存在は、動画をはじめとする各種SNSによって、バイクという”モノ”に加えてバイクで広がる”コト”についてもユーザー間で盛んに情報発信されるようになったことで、バイクの魅力が一気に伝わりやすくなったのは間違いない。
そして今やSNSをはじめとする様々な情報共有サービスの普及によって、各々のバイクの楽しみ方が容易に垣間見られるようになった。
バイクは免許取得や置き場など、所有にはまだまだ課題はあるものの、釣りやキャンプ、カメラなど、様々な趣味を広がる媒体として、遊び方が広がるスマートフォンと同じような可能性を若者が気づき始めたのかもしれない。
2021年度 二輪車市場動向調査記事 – 一般社団法人 日本自動車工業会(P16、P51、P56)
https://www.jama.or.jp/release/docs/release/2022/20220420_2021Motorcycle.pdf
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