イタルジェットのドラッグスターシリーズが現代に復活! ’95年の発売当時から独自メカニズムを搭載してきた同シリーズだが、やはり目を引くのはビックリドッキリメカの、インテリジェントステアリングシステム(I.S.S.)。本記事では、ヤングマシンメインテスターの丸山浩が、このI.S.S.の乗り心地を確かめる。
●まとめ:ヤングマシン編集部(谷田貝洋暁) ●撮影:長谷川徹 ●取材協力:金城IVY Racing ●外部リンク:MVアグスタ
目立つにはコレに乗れ! イタリア発のアーバンスポーツ
その姿はあまりにも異質。このイタルジェットのドラッグスターを表現するとき、言葉を選ばなくてよいなら、もっともしっくりくるのは”異形”という単語だろう。エッジの効いたフロントマスクはもとより、車体を見れば、これでもかと配された鋼管スチールパイプ。このバイクがトレリスフレームの本場、イタリアを出生とすることを強く感じさせるスタイリングだ。
イタルジェットは’59年、イタリアのボローニャで生まれたバイクメーカーだ。創設者は、ドゥカティのワークスレーサーまで上り詰めたレオポルド・タルタリーニ。’59年の創業以来、150台以上のマシンをリリースしてきたイタルジェットの特徴は、なんといってもイタリアンデザインを地で行く、機能的かつ人目を引く意匠だろう。そのデザイン性は世界的にも認められており、折り畳み式のレジャーバイク「パック2(’82)」は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に永久コレクションされているほどだ。
ドラッグスター200は現在のイタルジェット唯一のモデルで、’95年までその歴史を遡ることができる。前作も鋼管トレリスフレームを採用し、フロントのサスペンション&ステアリングシステムに「インディペンデントステアリングシステム(以下I.S.S.)」を搭載。世界で7万台以上が販売される人気モデルだった。
さて、今回紹介する新型ドラッグスター200が世の中に姿を表したのは、’18年のミラノショーでのこと。初代よりも過激さを増したプロトタイプのデザインは世間を再び魅了。翌年には生産試作車が完成し、’20年の発売を予定するも、コロナ禍により’21年末になってようやくデリバリーがスタート。…したはいいのだが、全世界限定499台のファーストエディションはすでに完売。今回の試乗車両もファーストエディションだが、金城IVYレーシングから納車前のオーナー車両をお借りすることで試乗が実現した次第だ。
丸山浩インプレ:I.S.S.採用の意味、その乗り味は果たして!?
やはり気になるのは、フロント足回りで異彩を放つI.S.S.。ハブステアの一種であり、ステアリングアクションと衝撃吸収アクションを分離することで、それぞれの動きをスムーズに行えるというのが、構造上の最大のメリット。またテレスコピックに比べて、サスペンションを柔らかくできるため乗り心地も良くなる。
これまでもハブステアリングのモデルに色々乗ってきたが、そもそもの構造としてサスの動きは絶対的に良くなるので、当然乗り心地はいいだろう。ただ、気になるのは、コーナリング時とブレーキング時の挙動をどのようなフィーリングに仕上げてきているのか? というところだ。
今回の試乗コースは、首都高速道路を経て湾岸地域へ。アーバンスポーツモデルらしいコースを設定してみた。I.S.S.を体感しての第一の感想は、やはりピッチングモーションを打ち消すことで、キャスターアングルやトレール量の変化が少なく、走行状況によって走行フィーリングが左右されないというところだ。今回はフロントホイール14インチのADV150と比較してみたが、ドラッグスター200はフロント12インチとかなり小径。それにも関わらず、低速から高速域までしっかり安定性が出ているのは、紛れもなくこのI.S.S.の恩恵だ。
フィーリングとしては17インチのロードスポーツモデル、それもスーパースポーツモデルでコーナリングしているフィーリングに近い。今回はワインディングでの試乗はしていないが、実際に走ってみたらかなりいい走りをしてくれそうな手応えを得ることができた。
ただ注意したいのは、I.S.S.の機構でいくらコーナリングに安定感があって、接地感も掴みやすいとはいえ、履いているのは12インチホイールであることを常に忘れないことだ。いくら扁平率を60%に設定して接地面積を稼いでいるとはいえ、タイヤのグリップ性能限界を超えてしまえば、安易に足を掬われることになる。
とはいえ、一般的なスクーターとは一線を画すスポーツ性を持っていることは明白。コンセプト的にはアーバンスポーツとのことだが、このドラッグスター200の性能を街中だけに留めておくのはもったいない。手に入れたのなら、ぜひワインディングでその運動性能を体感してほしいところだ。
セカンドオピニオン・谷田貝によるインプレッション
僕自身、ハブステアリングのマシンに乗るのは今回が初。ということでどんな機構なんだろ? 違和感はあるのか? などなど興味津々だったわけだが、走ってみれば意外に普通。雰囲気はBMWのテレレバーに近く、加減速時のピッチングモーションを極力減らすような雰囲気だ。驚いたのは、ブレーキやハンドルに操作入力をしても接地感が変わらないこと、ブレーキングしてもアクセルオンしても、フロントタイヤから伝わってくる接地感が変わらないのだ。最初は違和感を覚えたが、慣れてI.S.S.が信用できるようになると、結構な車速で曲がることができた。
ADV150との比較試乗:I.S.S.機構による安定性を強く感じる
また今回は、尖りすぎたドラッグスター200のキャラクターを明確化するために、比較車両としてADV150も用意。排気量は32ccほどドラッグスター200の方が大きいため直接的な比較はできないが、参考までにそれを踏まえた上で動力性能の差を記しておこう。
発進加速では一瞬、ADV150が前に出る。しかし数秒後にはドラッグスター200が前に出て、そのままじわじわと離れていく。巡航状態からの再加速でも、伸びのいいドラッグスター200がじわりじわりと前へ出て、ADV150を引き離していく。排気量差がそのまま現れる結果となった。コーナリングにおける比較では特にI.S.S.機構による安定性を強く感じた。ADV150では不安に感じるような速度感でも、ドラッグスター200にはまだ余裕があった。
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