岡崎静夏のホンダGB350S試乗インプレッション【公道を楽しむにはピッタリ。絶妙な”ちょいスポーティー”】

ホンダ GB350S|岡崎静夏|試乗インプレッション

日常での扱いやすさを重視した空冷単気筒20psのエンジンを搭載し、手頃な価格と心地よい鼓動感で人気のホンダGB350/S。スポーティーバージョンのGB350Sは、前後フェンダーの樹脂化/専用デザインのサイドカバー/マット塗装のマフラー/2kgの軽量化などで差別化を図っている。本記事では、人並み外れた”ライディング感性”を備える現役レースライダー・岡崎静夏さんが、半年前に乗ったGB350(スタンダード)とGB350Sを比較する。想像以上の違いを見抜いたようだ。


●まとめ:ヤングマシン編集部(高橋剛) ●写真:楠堂亜希 ●外部リンク:ホンダモーターサイクルジャパン

【テスター:岡崎静夏】チャーミングな笑顔でも、中身はスパルタンな”バイクフリーク”。’09~’10年のMFJレディースロードレースで2年連続王者に。全日本はGP-MONOを経て’12年からJ-GP3に参戦中。TwitterFacebookInstagramYouTube

【’21 HONDA GB350S】■全長2175 全幅800 全高1100 軸距1440 シート高800(各mm) 車重178kg ■空冷4スト単気筒OHC2バルブ348cc 最高出力20ps/5500rpm 最大トルク3.0kg-m/3000rpm 5段リターン式 燃料タンク容量15L ■タイヤサイズF=100/90-19M/C R=150/70R17M/C ●色:パールディープマッドグレー ガンメタルブラックメタリック ●価格:59万4000円

おじさんの質問攻めに遭い、GBの魅力を再認識!

最初にGB350に乗ったのは’21年5月の終わり。あれから半年、今回は走りをイメージさせる専用パーツがふんだんに盛り込まれたGB350Sのテストです。

GB350とSでもっとも大きな変更は、リヤタイヤのサイズでしょうか。スタンダードの18インチに対して、Sは17インチに小径化。幅は、スタンダードが130、Sは150と2cm太くなっています。

外径を計算すると、スタンダードが約639mm、Sが約642mmとほとんど変わりませんが、走りのフィーリングは思った以上に違いますね。

スタンダードは、基本的にまったり。それと、ちょっと難しい言い回しになりますが、接地点がゆらゆらと左右に動く感じがするんです。後輪が少し細い影響かな、と思うんですが…。

それに対してSは、接地感がハッキリしています。どこがどんな風に接地しているかが、すごく分かりやすく伝わってくるんです。

ついでにもっと細かいことを言っちゃいますね(笑)。GB350はバイクが自動的に起き上がろうとするように感じます。ライダー用語で言えば”立ちが強い”という感じ。”直進安定性が強い”って言えばいいのかな。

だから、旋回にあたっての倒し込みでは、自分から積極的に”曲げよう”と意識して操作する必要があります。これが最初に言った「GB350はまったり」の内訳ですね。

一方のSは、ちょうど逆。自動的に寝ようとする特性を感じます。”曲げよう”と意識しなくてもスッと曲がってくれるんです。こういうのを”スポーティー”って言うんだろうな。

違いの度合いはほんのちょっとです。でも、ちゃんと違う。この味付けはなかなか見事だな~と思います。

どっちがイイか、という話ですが、これはズバリ、好みの問題ですね。まったり系が好きな人にはGB350がピッタリで、Sに乗ると思った以上に曲がるように感じるかもしれません。

逆に、スポーティー系が好きな人にはSがピッタリで、GB350では旋回力が弱いように感じるかもしれません。自分ですか? 自分は…。

GB350とGB350Sの違いについて考えながら、「あ~、自分はやっぱりバイクにスポーティさを求めてるんだな~」と気づきました。

全日本ロードを戦っているので、「プライベートでバイクに乗る時ぐらいはまったり行こう」と思うんです。実際、スーパースポーツはちょっと身構える部分もあります(その緊張感がよかったりもするけど…)。

でも、こうしてGB350とGB350Sを比較すると、やっぱりスポーティなSに惹かれてしまう自分がいるんですよね。

そうは言ってもエンジンはどちらも共通で20psだから、あくまでもスポー”ティー”。ガチのスポーツバイクと運動性能を比較するのは酷というものです。その中でも一生懸命に”スッと曲がるバイクを作ろう”というホンダの心意気には、「うんっ!」と感じるものがありますね。

自分はSのハンドリングが好き。思い通りに寝かせることができて、旋回力が高く、自分の好きなように起こすこともできます。だからスロットルをちょっとだけ大きく開けることができて、加速の楽しみが増えてます。

ラインの自由度も高いから、攻める…とまでは行かないものの、ツーリングにワインディングロードを組み込みたくなるんです。そして「公道なら、本当はこれぐらいのパフォーマンスがちょうどいいんだよな」と思えます。

それにSはカッコいい! そんなに大がかりな変更じゃないのにちゃんと雰囲気が変わっていて、シンプルでありながらモダンさも。なかなかやるな、という感じです。ファクトリーカスタムの底力を見せつけられました。

「優雅に景色を眺めながらトコトコ行きたいGB350に対して、Sはワインディングを組み込みたくなります。“カーブ”ではなく“コーナー”と言いたくなる感じ、分かります?」(岡崎さん)

今回お借りしている間、フラッとお買い物でドラッグストアに行ったんですが(そういう気にさせてくれるバイクです!)、駐輪場で60代ぐらいのおじさんに「おっ、シブいの選んだねえ」と話しかけられました。

おじさんは原付二種のスクーターだったんですが、「カッコいいね~。コレ、何ccなの?」と定番の質問が(笑)。おじさん、かなりのバイク好きで、「高速はどんな感じ?」「ツーリングはどう?」「街乗りは?」と矢継ぎ早。「ぜひヤングマシンを買って読んでください」と言いたくなるぐらいドンピシャな質問攻めでした(笑)。

自分はこういうコミュニケーションが大好きです。GB350Sのカッコよさと、いかにもバイクらしい親しみやすさが、おじさんを惹きつけたのでしょう。スタンダードとSのラインナップでシリーズとしての魅力も高いGB350。「これは人気を呼ぶのも分かるな…」と思いました。

「80km/hのクルージングはこなせても、追い越し加速はちょっと(笑)。のんびり行こうね!」(岡崎さん)

GB350S:SHIZUKAの評価

  1. スタイリング:「欲しい!」と思えるポイントを押さえてますね。かなりオシャレだけど、まだカスタムしたくなる隙がGood!
  2. スポーツ性:サーキットを激攻めしようとは思いません。でも公道をそれなりのスポーツムードで走るなら十分に楽しめますよ。
  3. ツーリング:旅+スポーティが味わえる1台。前後移動しやすくなったシートのおかげで、長距離走行の快適性は増しています。
  4. 街乗り:スペックを見ると物足りなさを感じるかもしれませんが、思った通り加速してくれるので不足感はありませんよ~。
  5. コストパフォーマンス:スタンダードでも十分にイケてたのに、4万4000円アップで細部の質感やスポーティさが高まるなら、買いです!

【SHIZU’sお気に入りポイント】ワディングシートやデザイン性の高いサイドカバー、そしてフォークブーツ…。ちょっとした変更ですがバッチリ質感アップしていて、さすがファクトリーカスタム! 私はSがいいかな~。


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