ヤマハMT-09 SP試乗インプレッション【より熱く濃く! 官能的な異色作】

ヤマハ MT-09 SP試乗インプレッション

’21年モデルで排気量を43ccアップし、シャーシを全面刷新したヤマハの”ザ・ロデオマスター”MT-09。その上位版である「MT-09 SP」に試乗した。KYB製の倒立式フロントフォーク、オーリンズのリヤショックともSP専用設計で、MT-09としては初のクルーズコントロールも装備している。


●まとめ:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:松井慎 ●外部リンク:ヤマハ

‘21 ヤマハMT-09 SP

【’21YAMAHA MT-09 SP】■全長2090 全幅795 全高1190 シート高825(各mm) 車重190kg ■水冷4スト並列3気筒DOHC4バルブ 888cc 120ps[88kW]/10000rpm 9.5kg-m[93Nm]/7000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量14L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●色:黒 ●価格:126万5000円

【シャーシの軽量化で3kg減量に成功】カバー類を極力減らして構造体を見せるスタイリングを追求。最低肉厚を3.5→1.7mmとしたCFアルミダイキャストフレームを採用。スイングアームと合わせて約2.3kgもの軽量化を達成した。6軸IMUの採用により電脳化も促進。

右足を下ろすと膝にクラッチハウジングが干渉するのは相変わらず。ただし足着き性は良好だ。ハンドルは400cc並みに幅が狭い。[身長175cm/体重62kg]

【YAMAHA MT-09】SPよりも16万5000円安く設定されるSTD版。フロントフォークはフルアジャスタブル、リヤはプリロードと伸び側減衰力が調整可能だ。SPともども品薄状態が続いているというのが現状。●色:青 黒 灰 ●価格:110万円

[〇] 上質であり本気で速い。シャーシの進化も実感

まずは排気量を888ccにアップした水冷トリプルから。このエンジン、低回転域での粒立った鼓動感が印象的だったが、’21年型は直4並みにスムーズになっている。1速と2速がハイギアード化されているが、発進加速は先代と同様に力強く、街中ではせいぜい4000rpmまでで事足りてしまう。ライディングモードは1~4の4段階で、もっともスポーティーな1は初代を彷彿させるほどピックアップが鋭い。一方、4はかなり穏やかな反応となり、出力自体も制限されているのが体感できる。

トップ6速、100km/hでの回転数はおよそ4000rpm。微振動はほとんどなく、パルス感と適度な吸排気音が心地良い。このMT-09 SPはクルーズコントロールを新採用しており、特に空いた高速道路の移動では非常に役に立った。また、ダウン側にも対応するようになったクイックシフターは、街乗り程度の速度域でもショックが少なく、これも実用的な進歩のひとつと言えるだろう。

ハンドリングもいい。ピッチングを強調したスーパーモタード的な走りの初代は、どこかに飛んでいってしまいそうな危うさがあったが、3代目となる新型はトリッキーな面白さを残しつつも、接地感が増したことで恐さは激減した。この印象については、しなやかに動くSP専用の前後サスペンションによるところも少なくないだろうが、コンセプトをそのままに進化させてきたことを実感する。

さて、外観からは分かりにくい6軸IMUの採用について。トラクションコントロールについては、リヤタイヤの横滑りを検知して抑制するスライドコントロールや、加速時の前輪の浮き上がりを制御するリフトコントロールを追加。またブレーキについては、旋回中の制動力を調整するコーナリングABSが採用されている。今回の試乗で試せたのは通常のトラクションコントロールとABSだけだったが、ぞれぞれの制御が緻密であることを体感できた。

新たに採用されたスピンフォージドホイールは、軽量化だけでなく質感の向上にも貢献している。スポーク側面は切削加工されており、ぜひショップで展示車を見てほしい。

ストロークを3mm伸ばし845→888ccとした水冷並列3気筒“CP3”エンジン。軽量ピストンの採用をはじめ、コンロッド/クランク/カムなど主要部品の多くを新設計。最高出力は116→120psへ。

クイックシフターは新たにシフトダウンにも対応。シフトフォークはフローティング式に。6段ミッションは1速と2速をハイギアード化。ステップは2段階に高さ調整可能だ。

ヤマハ独自のスピンフォージドホイールを採用。前後で約700gもの軽量化を達成している。スイングアームは新設計のアルミボックス構造で、SPにはバフ&クリア塗装が施されている。

DLCコーティングのKYB製φ41mm倒立式フォークとリヤのオーリンズはSP専用品だ。前後ともフルアジャスタブルで、さらに前は圧側減衰力が2ウェイとされる。

【メカニカルな表情が特徴的なヘッドライト】LEDプロジェクターヘッドライトはハイビームとロービームを一体型としたバイファンクションタイプ。テールランプや前後のウインカーもLEDで、ナンバー灯にのみ5.0Wのフィラメント球を採用。

ハンドルはクランプの位置を前後2か所から選べる。ワイズギアではカスタムパーツとしてフライスクリーン/ミドルスクリーン/ナックルガードなどをラインナップ。

【3.5インチフルカラー】3.5インチTFTメーターを採用。各機能の操作はハンドルスイッチで行う。

MT-09 SPは新たにクルーズコントロールを導入したため、左側スイッチをトレーサー9と共通化。

SPはセンターをシルバーに塗り分けたタンクを採用。さらにシートも上質な表皮とグレーのダブルステッチを用いたり、ブラックのハンドルバーやレバーなどで差別化を図る。

[△] 刺激なのか過激なのか。そこで好みが分かれる

右手を勢いよく動かしたり、回転数が7000rpmを超えると初代以上のヤンチャさが顔を出す。それを“刺激的”と感じる人ならストライクゾーンど真ん中だろう。個人的には後退気味のステップに対し、ハンドルがやや高いように感じた。

[こんな人におすすめ] コンセプトを信じ続けて進化した3代目

乗りやすい/扱いやすいことが善とされる現代において、乗りこなすことに喜びを見出せる稀少な存在だ。初代/2代目とも街中で見かけることが多く、この3代目もいずれ増えるだろう。装備面を考慮するとこのMT-09 SPはお買い得だ。


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