’21年モデルで排気量を43ccアップし、シャーシを全面刷新したヤマハの”ザ・ロデオマスター”MT-09。その上位版である「MT-09 SP」に試乗した。KYB製の倒立式フロントフォーク、オーリンズのリヤショックともSP専用設計で、MT-09としては初のクルーズコントロールも装備している。
●まとめ:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:松井慎 ●外部リンク:ヤマハ
‘21 ヤマハMT-09 SP
[〇] 上質であり本気で速い。シャーシの進化も実感
まずは排気量を888ccにアップした水冷トリプルから。このエンジン、低回転域での粒立った鼓動感が印象的だったが、’21年型は直4並みにスムーズになっている。1速と2速がハイギアード化されているが、発進加速は先代と同様に力強く、街中ではせいぜい4000rpmまでで事足りてしまう。ライディングモードは1~4の4段階で、もっともスポーティーな1は初代を彷彿させるほどピックアップが鋭い。一方、4はかなり穏やかな反応となり、出力自体も制限されているのが体感できる。
トップ6速、100km/hでの回転数はおよそ4000rpm。微振動はほとんどなく、パルス感と適度な吸排気音が心地良い。このMT-09 SPはクルーズコントロールを新採用しており、特に空いた高速道路の移動では非常に役に立った。また、ダウン側にも対応するようになったクイックシフターは、街乗り程度の速度域でもショックが少なく、これも実用的な進歩のひとつと言えるだろう。
ハンドリングもいい。ピッチングを強調したスーパーモタード的な走りの初代は、どこかに飛んでいってしまいそうな危うさがあったが、3代目となる新型はトリッキーな面白さを残しつつも、接地感が増したことで恐さは激減した。この印象については、しなやかに動くSP専用の前後サスペンションによるところも少なくないだろうが、コンセプトをそのままに進化させてきたことを実感する。
さて、外観からは分かりにくい6軸IMUの採用について。トラクションコントロールについては、リヤタイヤの横滑りを検知して抑制するスライドコントロールや、加速時の前輪の浮き上がりを制御するリフトコントロールを追加。またブレーキについては、旋回中の制動力を調整するコーナリングABSが採用されている。今回の試乗で試せたのは通常のトラクションコントロールとABSだけだったが、ぞれぞれの制御が緻密であることを体感できた。
新たに採用されたスピンフォージドホイールは、軽量化だけでなく質感の向上にも貢献している。スポーク側面は切削加工されており、ぜひショップで展示車を見てほしい。
[△] 刺激なのか過激なのか。そこで好みが分かれる
右手を勢いよく動かしたり、回転数が7000rpmを超えると初代以上のヤンチャさが顔を出す。それを“刺激的”と感じる人ならストライクゾーンど真ん中だろう。個人的には後退気味のステップに対し、ハンドルがやや高いように感じた。
[こんな人におすすめ] コンセプトを信じ続けて進化した3代目
乗りやすい/扱いやすいことが善とされる現代において、乗りこなすことに喜びを見出せる稀少な存在だ。初代/2代目とも街中で見かけることが多く、この3代目もいずれ増えるだろう。装備面を考慮するとこのMT-09 SPはお買い得だ。
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