今も絶大な人気を誇る‘80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末永く楽しんでいくには何に注意し、どんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、本記事ではカワサキ初の400cc4気筒マシン・Z400FXについて、ウエマツ東京本店・峯尾真史氏のインタビューをお届けする。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●外部リンク:ウエマツ東京本店
好調な状態で楽しんでほしいから、きちんとした整備でトラブルの回避を
Z400FXに限った話ではないが、かつてはトラブル多発が当たり前と言われていた旧車。とはいえ昨今のウエマツでは、納車後にトラブルが発生する機会はほとんど皆無と言う。「当社の場合は、エンジン内部に手を入れないステージ1と3を廃止したことが大きな要素ですが、整備の費用を惜しまない人が増えたことも、納車後のトラブルが減った一因だと思います。逆にひと昔前のような、”少しでも安く”という要望は、最近では珍しくなってきました。おそらくお客さんの中でも、”旧車は購入時にきちんと整備しないと、本来の資質が楽しめない”という考え方が浸透してきたのでしょう」
もっとも、他店やネットオークションなどで旧車を購入した人には、その考え方は通用しない。そういう事情もあって、現在のウエマツは持ち込みでの修理を受け付けていない。
「単純に忙しいからという理由もありますが、旧車の整備はイタチごっこで、こっちを修理したらあっちが壊れるというケースが珍しくないんです。例えば、エンジン腰上をオーバーホールしたら始動が困難になったり、ブレーキを整備したらフォークの動きに違和感が生じたりという感じで。だから、当店で全面的にリフレッシュした車両以外は扱いたくない、という気持ちはありますね」
兄貴分のZ500と同時開発されたこともあって、基本的には丈夫なZ400FXだが、同時代のライバルだったCBX400F、あるいは兄貴分のZ1〜1000系と比べると、整備や維持の状況はどうなのだろうか。
「その点に関しては、やっぱりZ1~1000系が一番でしょう。耐久性は抜群に高いし、補修部品もダントツで豊富ですから。一方のCBXは、いったん好調を取り戻してからの維持は難しくないですが、新車時にスーパースポーツとして販売されただけあって、FXよりエンジンが酷使されている個体が多い気がします。さらに言うなら、バルブの数がZの倍の16本なので、整備する側としては大変ですね(笑)」
E1~4が存在するZ400FXで、人気の型式はあるのだろうか。
「あえて言うなら、装備が豪華になったE4、マンガで活躍したE3を探している人はいますが、E1と2の人気が低いわけではありません。このバイクの場合は、型式ではなく、ノーマル度にこだわる人が多いようです」
実際にZ400FXを購入したら、どんなことに気を遣うべきだろう。
「好調を維持するために、2ヶ月に1回ぺースでいいので、1時間以上しっかり乗ることでしょうか。それ以外に我々がお客さんにお願いしているのは、定期的なオイル交換と、バッテリー/タイヤの点検くらいです。もちろん、Z400FXは昔から盗難の対象になりやすいバイクですから、その怖さは事前にしっかりお話させていただきますよ。と言うより、このバイクを購入するのであれば、鍵とシャッター付きの保管環境は不可欠だと思います」
メンテナンスコスト[ウエマツの場合]
- エンジン腰上OH:30万円~
- エンジンフルOH:50万円~
- キャブレターOH:5万円~
- フロントフォークOH:4万円~
※価格は税抜き
とりあえず工賃を教えてもらったものの、これから販売する車両とすでに販売した車両の整備で多忙なため、現在のウエマツは持ち込みでの修理を受け付けていない。なお同店の販売車両は2ヶ月/3000kmの保証付きで、ステージ4以上は+1年/走行距離無制限の延長保証に入ることが可能。
おすすめモデル:後継車はお買い得だが、選ぶ人はほぼ皆無
近年のZ400FXの中古車相場はかなり高い。となれば、後継車のZ400GP/GPz400/GPz400F/ゼファーなどに目が向きそうなものだが、ウエマツに来店するお客さんで、FXが無理だから後継車を選択するケースはほぼ皆無のようだ。「FXが欲しいと言うお客さんは、そういう形での妥協はしないんです。私自身も、その気持ちはわからないでもないでもないですね。FXと以後のモデルは、やっぱりスタイルがまったく違いますから」
その話を聞いた後では言いにくいのだけれど、取材時の同店の在庫車を見ていると、海外から里帰りしたモデル、200万円台のZ550GP、100万円台のGPz550などは、何となくお買い得に感じられた。
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