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オフロードマシン専門誌『ゴー・ライド』連載中の「令和の世に放つ 愛と青春のオフロードマシン」より、バイクが熱かった時代にラインナップされた懐かしのオフロードマシンを、”迷車ソムリエ”ことムッシュ濱矢が振り返る。本記事ではカワサキ、それも2ストロークマシン祭りとして、国内では生き残れなかったKDXシリーズとちびっこKSRたちを、ダート好きムッシュによる不思議な線引きで紹介しよう!!
●文:濱矢文夫
どれも速くておもしろい車両だった…。懐かしさにむせび泣け!
『母さん 僕のあの2ストロークどうしたでしょうね? ええ、夏、碓氷から霧積に行く道で谷底に落としたあの2ストオフロードマシンですよ』 ♫ママ〜・ドゥ・ユー・リメンバ〜♪
クローズドコースのレースモデルとしてまだ残っているものの、公道を走れる市販車としては絶滅してしまった2ストロークエンジン。同じ排気量なら間違いなく4ストロークよりパワフルで、エンジン構造が簡単で、よって軽い。そんないいことだらけで素晴らしいのに、もう搭載されていない。4ストロークより未燃焼ガスを多く排出して環境規制をクリアできないのは理解できるけれど、あのパワーバンドに入った時の脳天まで突き抜けるような独特な加速は心をシビれさせた。そしてその振動は手もジンジンしびれさせたものだった。
オイル混じりの青白い煙を吐くから煙いし汚れるし後ろを走りたくない、なんて口さがなく言われる反面、熱狂的に2ストロークが大好きな人もいる。2ストローク車に乗ったことがないという若いライダーもいるだろう。どちらかといえば乗りにくい方になるんだろうけど、なんというか、デメリット以上の満足感がある。
- KDX200SR
- KDX125SR
- KDX250SR
- KDX220SR
- KSR-Ⅱ
こうやってカワサキの2ストロークモデルを並べてみると、2ストローク全盛期を思い出して感慨深くなることだろう。他社にもいろんな機種があって、エンデューロブームの中で切磋琢磨しながら進化したあのころが異常で、消えた今こそが本当に正常なのか。転んだり滑ったり、いちごの香りがする変な2ストオイルを入れてみたり、焼き付かせたりしたっけな…。カワサキはどのカテゴリーでも最強を狙ってしまうカルマを背負ったメーカーだから、そこに惹かれて乗っていた人も多いだろう。パーツ供給などを考えると、中古車を手に入れて乗り回すのは厳しいかもしれないが、乗る価値のある楽しい走りなのは間違いない。
KDX200SR:いま万感の思いを込めてKIPSが働く(城達也さん風に)
エンデューロの“R”じゃなく、デュアルパーパスの“SR”シリーズとして最初に登場したKDXがこれだった。この初期モデルは正立フォークだったけれど、すぐに倒立フォークになる。ひと世代前は空冷のKMX200だった。これの水冷化されたエンジンに排気デバイスのKIPSを装着。よりハイパフォーマンス化されたわけだ。ライムグリーンはよく見かけた一方で、ブラックはあまり見た記憶がない。黒い服を着たメーテルのようで、母性で鉄郎を人さらいするのとは違う、最初から「さぁ行くわよネジ」と身もフタもないことをクールに言いそうな感じがカワサキらしいところ(意味不明)。
【KAWASAKI KDX200SR】主要諸元 ■全長2175 全幅855 全高1225(各mm) 車重124kg ■空冷2ストローク単気筒 198cc 35ps/8000rpm 変速機6段 ■タイヤサイズF=80/100-21 51P R=100/90-19 57P ●発売当時価格:39万8000円
KDX125SR:ライムグリーンばかりの反動が来たころ
KDXシリーズ最小排気量(たぶん)。このころからカワサキは、定番グリーンがあるから他の色は自由にしようと思ったのか、変わったカラーコーディネートに手を出していった。125にも、フレームがペパーミントグリーン/外装がパープル/シートがピンクとかいう、いい表現をすればアバンギャルドでアーティスティック。少し悪い表現をすると、田舎の真面目な高校生が、都会の大学に入って髪の毛を染め、メガネをコンタクトにして、流行のファッションを身にまといデビューしたけれど、どこかズレている痛々しい感じ。歳をとって思い出すと恥ずかしくなるような若々しさがよかった。
【KAWASAKI KDX125SR】主要諸元 ■全長2115 全幅855 全高1190(各mm) 車重117kg ■空冷2ストローク単気筒 124cc 22ps/9500rpm 変速機6段 ■タイヤサイズF=70/100-21 44P R=4.10-18 4PR ●発売当時価格:33万9000円
KDX250SR:高性能ハイパワーでMMK(モテてモテて困っちゃう)
基本はモトクロッサー、エンデュランサー譲りで、水冷2ストエンジンは40ps、なんて今となっては頭がおかしいとしか思えない仕様。こういうのが普通に公道で乗れたいい時代だった。排気デバイスのKIPSは当然で、他に回転数によって点火時期を変更するDCIS(デジタルコントロールドイグニッションシステム)というビックリドッキリメカを採用。昔は「お前はDAIGOか!」といいたくなるほど略語が多くて、今のバイクおっさん=その頃はバイク少年だった人たちは頑張って覚えたもんさ。ペリメターフレームのメインパイプが角ではなくわざわざ丸にしているところがおもしろい。
【KAWASAKI KDX250SR】主要諸元 ■全長2185 全幅870 全高1220(各mm) 車重136kg ■空冷2ストローク単気筒 249cc 39ps/8000rpm 変速機5段 ■タイヤサイズF=80/100-21 51P R=4.60-18 63P ●発売当時価格:44万9000円
KDX220SR:軽くてハイパワーという甘美な響き
125と変わらない100㎏ちょっとの軽い車体に、250の40psに迫る37psを叩き出す216ccエンジンというベストバランスKDX。でもホントにそうか、誰も知らない、知られちゃいけない。所有したこともないのにすぐに”ベストバランス”とか書いちゃうライターが誰なのか。すごく便利な言葉で、同意を得やすい。前後ホイールトラベルが290mmもあって、前後のサスペンションはプリロードと16段階も圧側減衰力の調整ができるというハイスペックがたまらない。使えるかどうかはあなた次第(byセ○ルバーグ)。こういう突き抜けた公道オフマシンが今の時代にも欲しいのである。
【KAWASAKI KDX220SR】主要諸元 ■全長2160 全幅875 全高1225(各mm) 車重122kg ■空冷2ストローク単気筒 216cc 37ps/8000rpm 変速機6段 ■タイヤサイズF=3.00-21 51P R=4.60-18 63P ●発売当時価格:43万9000円
KSR-Ⅱ:カワサキ小さいもの倶楽部内最強
空冷KS-I/IIの後継モデルとして水冷化などブラッシュアップしたバージョン。KSシリーズと同じ法則で、50cc版が「Ⅰ」で80cc版が「II」だ。なぜ兄貴分の80cc版がⅠで弟分の50㏄版がIIにしなかったのか、考えると地下鉄をどこから入れたかと同じで夜も眠れない。後継の4ストKSR110になった時に、おとなしいエンジンとレバー操作のいらない自動遠心クラッチになってがっくりしたものだ。某たいやきの歌にたとえるなら、「喧嘩してう〜み〜に逃げ込んだのさ」ってのを間違って「喧嘩してう〜み〜に投げ込んだのさ」と、盗難された原チャリの末路みたいに覚えているぐらいの違い。
【KAWASAKI KSR-Ⅱ】主要諸元 ■全長1660 全幅720 全高960(各mm) 車重86kg ■空冷2ストローク単気筒 79cc 4.5ps/6000rpm 変速機6段 ■タイヤサイズF=100/90-12 48J R=100/90-12 48J ●発売当時価格:24万9000円
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