新旧ハヤブサに通じる”デッカいアメ車”的な面白さ〈比較試乗インプレッション〉

新旧ハヤブサに通じる"デッカいアメ車"的な面白さ〈比較試乗インプレッション〉

日本では’17年モデルを最後にラインアップから消えていたが、’21年型で3代目に生まれ変わったスズキ ハヤブサ。新旧モデルを徹底的に比較する今回の特集にて、テスター丸山浩氏の試乗取材に同行したライター・田宮徹氏も両機に試乗した。サーキット遊びにも興ずるファンライド層が抱いたインプレッションを、セカンドオピニオンとしてお届けする。


●テスター:田宮徹 ●写真:長谷川徹 真弓悟史 山内潤也 ●取材協力:スズキ

新型登場で”ハヤブサ”という乗り物が理解できたかも

新旧ハヤブサを乗り比べてまず感じるのは、13年という時間の長さだ。

特に電子制御に関しては、旧型が2代目として登場した’08年というのは、ようやく市販車に出力特性を切り替えられる機構(スズキの場合はSDMS)が使われ始めた黎明期。その後、’15年から6軸慣性計測装置(IMU)が市販車にも活用されはじめ、このあたりから一気に制御が高度化されたわけで、それらをフルに装備してきた新型と、まだほとんど何もない時代に生まれた旧型を比べるというのは、かなり酷な話だと思う。

旧型にもSDMSは採用され、出力特性を3タイプに切り替えられるが、フルパワーモード以外は制御に違和感があり、今となっては懐かしさを感じてしまう。ただし、ウェット路面を含むどんなシーンでもフルパワーのままで十分に扱いやすく、そもそもモード変更が必要という感じはない。

対して新型はSDMS-αに進化され、パワーモード/アンチリフトコントロール/クイックシフト/エンジンブレーキコントロール/トラクションコントロールの5項目が連動して切り替わる。こちらも、フルパワー状態でも扱いやすいのは同じ。しかし違うのは、特性や出力がマイルドなモードでも違和感が少ないことだ。電子制御のあり/なしはもちろんだが、唯一どちらにもあるパワーモードセレクターの制御にもだいぶ差があり、「13年ってそういうことだよな」と妙に納得させられてしまった。

かなりのデカさだが、じつにユーザーフレンドリーな新型。あまり身構えずに乗り出せてワインディングで振り回せる1340ccって、スゴいと思うのだ。

コーナリングは、新型のほうがだいぶイージー。優れた接地感を味わいながら、深く考えずに操れる。私は’19年型GSX-R1000Rを所有しているのだが、シフターによる変速のスムーズさは新型ハヤブサのほうが勝っている印象で、ちょっとうらやましい。まあ、現行型GSX-Rの登場は’17年なわけで、ここにも4年の差があるわけだが…。

そういう意味では、むしろ旧型ハヤブサオーナーのほうが、ここまで大差があるとむしろ嫉妬しないのではないかと思える。上質で扱いやすい新型に対し、スパルタンな旧型。性格が完全に異なるわけで、それぞれに魅力がある。

旧型には過去に何度も乗ってきたが、当時はあまりその長所を理解できずにいた。スポーティに走るなら、長距離を快適に走るなら、普段使いのツーリングマシンにするなら…とシーンごとに考えると、ハヤブサ以外の車種が次々に思い浮かんでしまい、なおかつ「日本ではどうせトバせないじゃん…」と、じつは否定的だったのだ。

しかし新型に乗ったことで、「あぁ、ハヤブサはスピードではなくエンジンフィーリングと意外性を楽しむ乗り物なんだ」と感じた。トバさなくてもエンジンに気持ち良さがあり、この巨体が実はけっこうよく曲がる。デッカいエンジンを積んだアメ車のよう…とでも表現するべきか。新型は、その部分が”デフォルメ”されていて、魅力が伝わりやすかった。そして新型に乗ったからこそ、じつは旧型にも同じ楽しみが詰まっていると知ったのだ。

どこか荒々しい雰囲気の旧型。タイヤを現行製品にして前後サスをセッティングしたらもっと楽しめそうだが、電子制御ばかりは…。


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