世の中は電動バイクへと舵を切っていく動きが鮮明になり、各メーカーからは2050年のカーボンニュートラルに向けた計画の発表などが相次いでいるがまだまだ内燃機関には力がある! ヤマハは2022年型モトクロッサーのYZシリーズを発表し、なんとYZ125をフルモデルチェンジ。カワサキは排気量を上げたKX112を発表している。
●情報提供:ヤマハ発動機、カワサキモータースジャパン
17年ぶりのフルモデルチェンジとなったYZ125
オフロードコンペティションの主役が4ストロークに切り替わって久しい。1997年のAMAスーパークロス最終戦 ラスベガス大会でダグ・ヘンリーのライドにより衝撃のデビューウィンを飾ったYZM400Fから、わずか3か月後の市販車YZ400F発表。それからしばらくは2ストローク250ccとの混走が続いたが、21世紀に入ってからトップカテゴリーは4ストロークが席捲している。
だが、ヤマハやカワサキ、そして外国のいくつかのメーカーは2ストロークマシンを残し、育み続けてきた。そんななか、近年は2ストロークの面白さが見直されはじめ、ファンライドやファンレースで楽しむユーザーが国内外を問わず増えてきているようだ。
また、2ストロークの特徴である軽量さや、デバイスで広がったとはいえ4ストロークに比べれば狭いパワーバンドゆえの難しさ、そして維持管理費の安さなどが、これからのライダーを育てるのにうってつけ、という見方も根強い。ちなみにロードレースの世界では、バレンティーノ・ロッシが2000年代に語った「2ストローク500ccはライダーの腕で2秒変わるが4ストローク990ccはコンマ数秒しか違いを出せない」というコメントが有名だ。
こうしたムーブメントや熱心な2ストロークファンの声を受けてか、ヤマハとカワサキがやってくれた。
まずヤマハは、YZ250、YZ125、YZ85/LW、YZ65という2ストローク・モトクロッサーのラインナップ中、YZ125のフルモデルチェンジを敢行。なんと17年ぶりと言うから驚きだ(ちなみにYZ250、YZ85/LWおよび4ストロークのYZ450F、YZ250Fはマイナーチェンジ)。
17年ぶりのフルモデルチェンジとなる「YZ125」は、
1)レースで勝つためのパワーアップを図った新エンジン
2)操縦安定性とコーナリング性能、扱いやすさに寄与する軽量・コンパクトな車体
3)次世代YZシリーズのパイオニアとなる先進的かつ機能的な外観デザイン
などを採用し戦闘力を向上させたという。
エンジンは、シリンダーボディ、シリンダーヘッド、ピストン、ピストンピン、コンロッドからクランクケース、チャンバーなど、エンジンの機能パーツ全てを一新。シリンダーポートは、ポートタイミングや形状も最適化。新チャンバーの排気脈動効果が加わり、パワーデリバリー感や加速感が向上、出力も大幅にアップした。さらに排気のタイミングをコントロールし全域でスムーズなトルク特性を引き出す“YPVS(ヤマハパワーバルブシステム)”もスペックを刷新して搭載している。
また、吸気方法をサイドカバー後方から直線的に外気を導入する後方ストレート吸気とすることで、高回転域での伸び感、優れたオーバーレブ特性を感じられるように。加えて、新キャブレターや「3Dマップ制御CDIユニット」搭載のスロットルポジションセンサーの採用により良好なドライバビリティを達成。カーボン製リードバルブ「V-FORCE4」の採用やクランク室の最適設定によるパワーバンドの拡大、ハイパワーに呼応して歯幅を広げたトランスミッションギアなどにより、さまざまなコース状況に適応可能としている。
専用のアルミフレームは、新型エンジンに合わせて懸架ブラケットを新作してバランスを調整。リヤフレームは従来からの強度/剛性バランスをそのままに、後方ストレート吸気のダクト機能を持たせた構造に変更された。
さらに、4ストロークYZ-F同様の前後KYB製サスペンションは、ショック吸収性はもちろん、旋回性、トラクションに貢献。特にフロントは、ごく低速での作動時から減衰力を発揮し、前後ピッチが少なく、しっとり落ち着いた減衰特性をもたらす。シートは極力フラットな座面とし、タンク、シュラウド、サイドカバーの形状もライダーが動きやすい面構成とすることで、加速から制動・旋回時まで様々なシーンでのポジション/アクション自由度を広げた。
このYZ125の刷新にともない、YZ250とYZ85/LWにおいても後方ストレート吸気の採用で高出力化を実現したという。
YAMAHA YZ125[2022 model]
主要諸元■全長2135 全幅825 全高1295 軸距1445 シート高980(各mm) 車重95kg■水冷2ストローク単気筒クランクケースリードバルブ 出力未発表 変速機6段 燃料タンク容量7L■タイヤサイズF=80/100-21 R=100/90-19 ●価格&色:青=73万7000円/黒(モンスターエナジーヤマハレーシングエディション)=74万8000円 ●発売日:2021年10月28日
カワサキ「KX112」は、KX85と同サイズの車体にパワフルなエンジンを搭載
「表彰台のトップにライダーを送り込む」というKXブランド共通の設計理念をもとに、KX85Lと同サイズの車体によりパワフルなエンジンを搭載し、2016年モデルとして新登場したのがKX100。その6年後となる2022年モデルとして、さらに排気量アップした111ccの2ストロークエンジンを搭載し、戦闘力を向上したのがKX112だ。
エンジンは99cc→111ccへと排気量を拡大し、低回転域のトルクを増強。これにあわせてトランスミッションも強化した。ほかにも新設計シュラウドやアグレッシブなKXルックスを採用。ペリメターフレームやφ36mm倒立フロントフォーク、ペータルタイプの前後ディスクブレーキ、6ポジションに調節可能なハンドルバーなどを特長としている。
小排気量クラスのモトクロッサーは、ショートホイールベースにハイパワーなエンジンを搭載していることもあって独特の挙動の早さがあり、ベテランも楽しめるし、キッズのステップアップにも有効。2ストロークゆえの維持費の安さも魅力だ。
KAWASAKI KX 112[2022 model]
主要諸元■全長1920 全幅765 全高1150 軸距1310 シート高870(各mm) 車重77kg■水冷2ストローク単気筒ピストンリードバルブ 出力未発表 変速機6段 燃料タンク容量7L■タイヤサイズF=70/100-19 R=90/90-16 ●価格:45万1000円 ●色:ライムグリーン ●発売日:2021年9月17日
ヤマハのその他の2ストロークマシン
カワサキのその他の2ストロークマシン
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