岡崎静夏のホンダPCX160試乗インプレ【もはやオーバースペック!? カテゴリーを超えた車体】

’09年の初代登場以来、国内外のコミューターカテゴリーを牽引し続けているホンダPCX。細部を磨き上げ、ハイブリッドや電動モデルを追加するなどしてシリーズの魅力を高めてきた。新型PCX / PCX160は、スタイリング刷新/エンジン4バルブ化とフルモデルチェンジした4代目。全日本ライダー・岡崎静夏さんが試乗してそのポテンシャルを体感した。


●文:高橋剛 ●写真:楠堂亜希 ●取材協力:ホンダモーターサイクルジャパン

全日本ライダー・岡崎静夏
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【岡崎静夏】チャーミングな笑顔でも、中身はスパルタンな”バイクフリーク”。’09~’10年のMFJレディースロードレースで2年連続王者に。全日本はGP-MONOを経て’12年からJ-GP3に参戦中。TwitterFacebookInstagramYouTube

【HONDA PCX160】■全長1935 全幅740 全高1105 軸距1315 シート高764(各mm) 車重132kg ■水冷4スト単気筒OHC4バルブ156cc 最高出力15.8ps/8500rpm 最大トルク1.5kg -m/6500rpm 無段変速式(Vマチック) 燃料タンク容量8.1L ■タイヤサイズF=110/70-14 R=130/70-13 ●色:パールジャスミンホワイト ●価格:40万7000円

シンプル&クリーンでありながら上質なモダンさを感じさせる面構成は、高級車のデザインを感じさせる。ワンランク上の仕上がりのよさで、所有する喜びを満たしてくれる。

岡崎「足の置き場を選べるフットボードや、着座位置を選べる広いシート座面。自由度が高く、長距離でも疲れにくかったですね。身長148cmの母が座っても重さを感じなかったそう。好バランスです」

【カラーバリエーション】車体色はポセイドンブラックメタリック(上左)、パールジャスミンホワイト(上右)、キャンディラスターレッド(下左)、マットディムグレーメタリック(下右)の全4色。

もはやオーバースペック!! カテゴリーを超えた車体

先日、千葉の茂原ツインサーキットに行き、NSF100で基礎練習をしてきました! 主に取り組んだのはブレーキングでしたが、新しい発見がありました。それは”キッチリ止める”ということなんです。

今までは、減速しているつもりでも、しきれていませんでした。減速するよりバンク角を優先してしまい、コーナーのボトムスピードが十分に落ちていなかった。そこで先日は、もう完全に停車するぐらい減速することを心がけました。そこから見えてきたものがあるんです。全日本J‐GP3マシンで確かめるのが楽しみ〜!

と、すっかりブレーキングづいている自分ですが、PCX160に乗って「これ、スクーターなの!?」と驚かされたのは、まさにキッチリとブレーキングできることでした。いきなりマニアックなインプレですが(笑)、PCX160はフロントサスペンションに十分なストローク量と減衰力が与えられているから、不安なくブレーキをかけられます。車体剛性のしっかり感も利いていますね。

ちょっとスクーター離れした仕上がりに、インプレも熱を入れてしまいますね(笑)。PCX160のブレーキングがスゴイのは、ただ速度を落とすだけじゃなくて、コントロール性が非常に高いことなんです。

普通のスクーターだとただ減速するだけで精一杯ですが、PCX160はブレーキがコントローラブルな上にサスペンションがストロークの奥の方まで引っかかりなく滑らかに作動してくれるから、コーナリング中にも自分の好きな車体姿勢を作れます。

前後ともディスクブレーキなのも大きいですね。制動力が高いことはもちろん、入力に対して効力が素直に追従してくれるからとても扱いやすい。さらにフロントにはABSが標準装備されていて、安心感が高いんです。

スクーターのインプレっぽくないと自覚してますが(笑)、このブレーキはスクーターの域を越えているから仕方ありません。そして走れば走るほど、PCX160のスゴさはブレーキングだけじゃないことが分かってきました。

PCX160は、乗り心地が非常に良好です。あまりにも振動がないので、大げさではなくクルマに乗っているみたい。エンジンが静かで振動が少ないことももちろんありますが、やっぱり車体の優秀さがスゴイ!

ブレーキングのところでも書きましたが、サスペンションの動きがとにかくいいから、路面からの衝撃を上質にいなしてくれます。凸凹があった時にガツン!と体に響くようなショックが抑えられていて、「トンッ」と軽く走り抜けることができるんです。

これって、乗り心地以上のメリットもあるんですよね。スクーターでよくあるのは、コーナリング中にギャップに乗ってしまうと、ドン!と大きな衝撃を食らい、外へ外へとはらんでしまうこと。スクーターはとかくリヤ下がりでアウトにはらみがちですが、ギャップがそれに輪をかけてしまうんです。

でも、PCX160ではこのイヤな現象が起きません。ギャップがあってもうまくいなしてくれるから、素直に行きたい方向に進めます。これは気持ちいい! フロントサスペンションはもちろん、リヤサスもすごくよく機能していることの恩恵でしょう。

先にブレーキングについて書きましたが、加速時のフロントの伸び上がり感も非常に分かりやすい! 信号待ちで停車し、再び発進するという一連の動作の中で、サスペンションの動きが分かりやすいとこんなに気持ちをアゲてくれるのか、と思います。

160ccエンジンはパワーも十分で、街乗りなら余裕で流れをリードできるし、高速道路でも不足はありません。しかも”どうにか走れる”というレベルではなく、普通に違和感なく高速道路をチョイスできます。

そのエンジンを搭載しても余りあるパフォーマンスを発揮してくれるこの車体…。ホンダ、ヤバイです(笑)。PCXはオリジナルが125ccなので、パッケージングとしては原付二種の枠組みに入るのですが、車体は完全に原二のものではありません。

オーバースペックと言ってもいいと思いますが、この車体、ライディングの楽しさはもちろん、安定感ももたらすと私は思います。

スクーターとはいえ、ライダーが思った通りに操れることは、とても大事です。これは乗り手がエキスパートでもビギナーでも関係ありません。普段の走りでも、いざという時にも、意のままに動いてくれることは、安全につながります。

かなりハイレベルな車体構成で、スポーツバイクみたいに手足のように操れて、なおかつクルマみたいに快適なPCX160。ホンダ、ヤバイ……。

【ライディングが楽しめるスクーター!】岡崎「スポーツバイクに近い感覚で、自分の手足のように扱えます。筑波サーキットを攻めたくなるほど(笑)。意のままになるハンドリングは、どんなライダーにも安全につながるはず」

PCX160:SHIZUKAの評価

  1. スタイリング:クルマに近い大人っぽさを感じさせてくれます。ラインはシンプルなのに高級感があって、ちょっと宇宙っぽさも。
  2. スポーツ性:こちらの操作にしっかり応えてくれ、前後サスを使って思い通りの車体姿勢が作れるなんて、スクーターの枠外!
  3. ツーリング:不足も不安もなく高速道路に乗れるし、乗り心地良好でポジションの自由度も高い。ちゃんと遠出できる「バイク」。
  4. 街乗り:車格は少し大きめですが、その分チャチさがなくて満足度が高いですね。加減速時にふらつかない安定性もグッド。
  5. コストパフォーマンス:あまりに出来栄えがいいのでホンダは赤字になるんじゃないかと心配になるぐらい。誰が乗っても損はないはず!
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