愛車セロー250は別格として……

世界GP王者・原田哲也のバイクトーク Vol.48「2020年のバイクBEST3/個人的ビッグニュース」


TEXT:Go TAKAHASHI

1993年、デビューイヤーにいきなり世界GP250チャンピオンを獲得した原田哲也さん。虎視眈々とチャンスを狙い、ここぞという時に勝負を仕掛ける鋭い走りから「クールデビル」と呼ばれ、たびたび上位争いを繰り広げた。’02年に現役を引退し、今はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。そんな原田さんのWEBヤングマシン連載は、バイクやレースに関するあれこれを大いに語るWEBコラム。第48回は、2020年に試乗したバイクBEST3と、個人的ビッグニュースです。

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遊びの幅が広がるバイクが第1位!

新年明けましておめでとうございます! コロナ禍が多方面に大きく影響した2020年でしたが、今年は少しでも早くコロナ禍が終息して、元通りの生活が戻ってほしいものですね。

2020年は、コロナ禍の影響で僕もずいぶんと日本での仕事がキャンセルになってしまいました。でも、こればかりは仕方ない。腐っていても始まらないので、とりあえずプライベートで例年以上にたくさんバイクに乗りました(笑)。釣りを始めたし、ゴルフもしたけど、何だかんだ言ってバイクに一番時間を費やしたんじゃないかな。セローを所有するようになってからというもの、バイクに乗る時間がすごく増えた気がします。

やっぱり自転車感覚で気軽に乗れるのがイイんですよね。正直言ってカッコいいバイクじゃないし、所有感という点ではビッグバイクにはとうてい敵いません。でも、軽くて押し引きがラクだから毎日でも乗れるのがセローの美点です。ビッグバイクは、せっかく買ったのに乗るのが億劫になってだんだん乗らなくなってしまう人もいらっしゃるそうですが、セローならそんな心配は無用!(笑)乗れば乗るほど楽しくなってしまいます。

そんな愛車セローはちょっと別格として(笑)、2020年に僕が乗らせていただいたバイクの中から、独断と偏見でベスト3を選んでみたいと思います。まず3位は、KTM 890 DUKE。並列2気筒のネイキッドバイクですね。造りがものすごくイイ、というわけではないのですが、とても軽くてクイックなのが面白い! 極端な例えですが、トライアンフのストリートトリプルRSがロールスロイスやベントレーだとすると、890 DUKEはフェラーリやランボルギーニと言った感じ。走りに特化したスーパーカーっぽい感覚が楽しめました。

第2位は、並列4気筒エンジンが話題となったカワサキ・ニンジャZX-25Rです。僕が好きな(笑)250ccクラスでありながら、小排気量を感じさせない上質な乗り味が魅力的でした。雑誌「RIDE HI」の企画でZX-25Rでレースに出たんですが、正直、並列2気筒のホンダCBR250RRの方が速かった(笑)。軽さが武器になってましたね。でも、この時代に4発の250ccを出してくるカワサキの心意気が素晴らしいし、デザインや個々のパーツの仕上がりの良さなど、速さだけではない魅力がたくさんあります。サーキットでレースするだけがバイクの楽しみ方ではないので、ZX-25Rのような方向性もアリだと思います。

そして第1位は、ホンダCT125ハンターカブ! 僕の愛車・セローと同じで、気兼ねなく毎日乗れる気軽さがとても気に入りました。ちょっとしたオフロードにも入ってみようという気分になるし、行き止まりでもラクにUターンできます。キャリアも大きいからたっぷりと道具を積んでキャンプもいいな……という具合に、遊びの幅が広がるバイクですよね。唯一残念なのは、125ccだから高速道路に乗れないこと。これで排気量が150ccぐらいあっていざという時に高速道路を走れれば、ツーリングの行き先の選択肢がもっと広がるのになぁ……。

毎日乗れて、遊びの幅が広がりそうなCT125ハンターカブが第1位になりました!

スーパースポーツもネイキッドもいろいろ乗らせていただいた2020年でしたが、こうしてベスト3を選んでみると、我ながら「とことん手軽なバイクが好きなんだなあ」と思います。これは僕の個人的な考え方ですが、バイクにはできるだけ毎日乗った方が感覚が衰えないように思います。僕も50歳になって体力も視力も感覚も衰えてきていることを感じます。でも、できるだけたくさんバイクに乗ることが、その衰えを遅らせてくれることも確かなんです。大きくてカッコいいバイクに1ヶ月に1回だけ乗るよりも、小さくてそんなにカッコよくはないバイクでも週に1、2回乗った方が、スキルや体力を維持できるでしょう。

僕自身は、さんざんレースをやってきたので、もう「自分の限界を試してみよう」なんて気はありません。ちょっと本気で走ったら、3周で足が攣っちゃいます(笑)。転んでケガをするのも痛いし怖いし、何より治りも遅くなっていることでしょう。だから限界に挑む気はありませんが、バイクを楽しみたいという思いは年々強くなっています。でも、実はこの「バイクで楽しむ」って、僕の原点なんですよね。子供の頃、ポケバイに乗るのが楽しくて仕方がなかったから真剣なレースも続けられたし、今も僕をバイク好きにしているんだと思います。

真剣なレースは、本当に大変です。自分だけでタイムを詰めるのとは違って、相手がいて、相手に何とかして勝たないといけない。自分の限界じゃ足りなくて、相手の限界よりも先に行かなくちゃいけません。そりゃあ全力以上で頑張るしかないし、しんどくもなります。そんなレース生活を送っていたから、今はただただ楽しみたい。僕は「世界GPで勝つために戦う」というちょっと特殊な例かもしれませんが、皆さんも決して無理をせず、あまりストイックにならず、楽しむことに真剣になっていただければいいな、と思います。

夢はイーハトーブに出場して大自然の中を走ること!

さて、僕的な2020年ビッグニュースもいくつかご紹介しますね。ひとつは、年末の最後に飛び込んできました。飛び込んできた、というか自分で買ったんですけど(笑)。トライアル車、モンテッサの4ストマシンを購入してしまいました。本多元治くんのスクールに行ったりして「これはやっぱり買わなくちゃ!」とホームページをいろいろ検索していたら、神戸のミタニモータースポーツというショップにちょうど新車があったんです。直接「原田です」なんて電話して買わせてもらったんですが、僕はモナコに帰ってしまうので本多くんに受け取りをお願いしました。そしてミタニさんと連絡を取り合い、「まさかあの原田さんとは……!」と驚かれていたそう。「声は似てると思ったんですが……」とのことでした(笑)。

これで今年はまた本多くんに教わりながらたくさん練習して、夢はイーハトーブに出場すること! 大自然の中をトライアル車で走ってみたいんです。トライアルならエンジンをかけなくてもスタンディングスティルやホッピングなど、多くの練習ができるそう。新たな挑戦を見つけてワクワクしています。

あとは、YouTubeチャンネルの開設も、ビッグじゃないけど(笑)2020年のニュースでした。初めての経験なのでなかなか思うようにいかない部分もありますが、チャンネル登録してくださっている方ももうすぐ1万人に届きそうで、思っている以上に観ていただいているみたいです。個人YouTubeですし、大々的にやっているわけじゃありませんが、楽しみにしてくださっている方もいらっしゃるので、できる範囲のことを細々と(笑)やっていこうかと思っています。

そして付け加えておきたい「ビッグニュース」は、MotoGPがちゃんと開催されたことです。今年もまだコロナ禍次第でどうなるか分かりませんが、とりあえず昨年シーズンが成立したことは、本当に大変な努力があったことと思います。レースファンとしては心から感謝しています。残念ながらマルク・マルケス選手はシーズン通して欠場となってしまいましたが、大混戦の面白いシーズンでした。そしてスズキが創業100周年に20年ぶりのチャンピオンを獲得するなんて、「そんなドラマみたいなことがあるのか!」と熱くなるものがありました。

そんなこんながあった2020年が終わり、新たに始まった2021年。去年以上にいろいろと新しい企画にチャレンジしたくて、いろいろアイデアを練っているところです。基本的にはバイク乗りの皆さんとバイクを軸にして遊び、楽しむための企画です。メディアもうまく巻き込みながら、面白いことをどんどん考えて、できる範囲で形にして行こうと思っています。

モナコではロリス・カピロッシ夫妻と食事を楽しんだりしています。


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