’20年春に発売開始となったホンダCBR1000RR-Rに続いて、ヤマハもモデルチェンジした新型YZF-R1を8月に投入。どちらも200ps台、お値段も約240万円~300万円オーバーという、まさにバイク版スーパーカー。今回はこの最新国産スーパースポーツ4モデル(YZF-R1/M&CBR1000RR-R/SP)を徹底比較。ヤングマシンメインテスター・丸山浩と神永暁の師弟コンビが、サーキットでの実力チェックに続き、公道での試乗インプレッションをお届けする。
ヤマハYZF-R1/M:コンマ1秒も無駄にせず、確実に速さにつなげていく 今回のYZF-R1/Mは、ユーロ5に対応するとともにエンジンを熟成。さらに電子制御まわりやサスセッティングの最適化、そして空力[…]
丸山浩インプレッション:一般道はガマン…。これはレーシングマシンなのだ
今回の比較テストにあたり、袖ヶ浦フォレストレースウェイに向かうまで、YZF-R1MとCBR1000RR-R SPの2台を一般道&高速道路で自走しながら公道テスト。サーキット以外のポテンシャルも探った。
さすがにスーパースポーツ最高峰を目指しているこの2台。ツーリング的な用途はお世辞にも得意とは言えない。特にYZF-R1Mは、そのレーシーな足着き性から渋滞にはまるようなところではかなり辛い。一方、シート高が低く前方も絞り込まれているCBR1000RR-R SPの方が足着きに関してはラクだ。しかしながら走っている最中は、CBRはハンドルがやや開き気味なうえ、上半身が遠く感じて小回りが利きにくい。また下半身も膝の曲がりがきつくて狭く、長時間乗っていると疲れやすいと一長一短だ。
サーキット全振りのはずのYZF-R1Mの方が、CBR1000RR-R SPと比べて膝の曲がりが少なく、動き出しさえすれば意外とストリートでの扱いやすさでは上を行く場面もあって驚きだった。それでも、CBRも少しは公道走行を意識していると見え、発進時などの低回転域では排気音をかなり絞ったりしているのだが…。
電子制御サスペンションの設定についてもYZF-R1Mの方がサーキット最速優先という印象に対し、CBR1000RR-R SPは多分に公道域でもよく動く感じ。クイックシフターもCBRが公道域からサーキットまでキレイに作動するのに対し、R1Mはかなりのレーシング速度域に合わせたようで、サーキットでもちょっとスムーズに入ってくれないことが多かったのが残念。ここは改良の余地がありそうだ。
いずれにせよ、結局どちらもライディングポジションは思い切り伏せていることを前提としており、サーキット以外ではかなり疲れることは、こうしたマシンの宿命だと覚悟してもらいたい。エンジンからの熱もV4のように内股が火傷しそうになるほどではないものの、それなりに伝わってくる。ツーリングに行くのなら、なるべくガランと道が空いている時間を選びたい。
前方にまったく他車がいない高速道路をかっ飛ばせるとしたら、さすがに爽快だろう。だが、もちろん制限速度を超えてスピードを出すわけにはいかない。200ps台のパワーとスピードを安全に楽しむには、やっぱりサーキットじゃないと無理だ。
フェラーリ的なYZF-R1M、ランボルギーニ的なCBR1000RR-R SP
YZF-R1MとCBR1000RR-R SP、取材中にこの2台を並べていてふと思った。2台合わせるとSTDでも約480万円、上級版の方だとおよそ600万円! そして200ps台のパワー。ナンバープレート付きで公道も走れるが、実質レーシングマシン…。これはもう4輪でいうところの”スーパーカー”なのだなと。そう考えたときに、見た目でも走りの上でもそれぞれにピッタリとイメージが合うスーパーカーの姿があった。
そのスマートなデザインを含め、すべてをひたすら速さを追い求めることに注ぎ、鋭い切れ味を感じさせる機能美まで昇華させたフェラーリ。これはずばりYZF-R1Mに当てはまる。これに対して、見た目にも荒々しさを全面に押し出し、暴力的なまでにタガが外れたようなパワー感のオーラで多くの人を惹きつけるランボルギーニ。これはサウンドやウイングレットも目立つCBR1000RR-R SPのキャラそのものだと言えよう。
どちらが優れているかといった問いはもはやナンセンス。コーナーではYZF-R1の方がキレイに走れたと言っても、どちらの車両も軽く2~3周しただけでヒジスリの超フルバンクに挑戦しても難なくこなしてしまえる安定感のすごさ。実はちょっとイン側の縁石に乗り上げてヒヤッとした場面もあったが、それすら何事もなく切り抜けてくれた。本当に甲乙つけがたく、ここはもうライダーの好み次第。フェラーリ好きかランボルギーニ好きか、ストイックな美学が好きか炸裂パワーが好きか、買うならばそこが決め手だ。
神永暁インプレッション:令和のHYバトル、その行方は…?
新型コロナの影響で、なかなかリッタースーパースポーツでサーキットを走る機会がなかったんだけど、久々に走ることができて、疲れたけど楽しかった。スーパースポーツということで、同じように見えても個性がはっきり分かれているのがわかったのが、何よりいい勉強になった。
これまで僕の中でのYZF-R1/Mは、クロスプレーンが出始めたころはまだエンジン制御がこなれていなかったのか、軽くてパワーがあるけど、ちょっとギクシャクして乗りこなすにはシビアという印象だった。しかし、熟成が重ねられた今回の新型に乗ってビックリ。驚くほどスムーズに走らせることができる。やっと僕の中のクロスプレーンのイメージを乗りやすいという方向に変えてくれた。R1Mのサスペンションも含めて電子制御が非常に洗練されており、車体全体と上手くひとまとまりになっていて、パッケージングとしての完成度の高さが強く感じられる。
フルモデルチェンジしたCBR1000RR-Rの方も、新鮮さでは強烈だった。これまでの行儀のいいホンダらしくなく、圧倒的なパワー感を遠慮せず派手に見せつけてきてる感じがして、思わず欲しいCBRが出たなって印象。先代と比べてキャラクターがまったく変化しており、ひと言でスーパースポーツと言っても、これまでとは違うところでインパクトを見せてやろうという意気込みが感じられ、なんだか新しいジャンルのバイクにさえ思えてくる。走らせればやっぱりスーパースポーツなんだけどね。この新しいCBRなら、他メーカー好きのライダーが乗り換えても後悔しないんじゃないかな。分かりやすいパワー感で、ビギナーが乗っても楽しいと思う。
YZF-R1は、最初のクロスプレーン型(’09~’14年式)YZF-R1やサーキット方向にフルモデルチェンジした’15~’19年式のオーナーが乗り換えるのにもいいんじゃないかな。特にフルモデルチェンジ最初の’15年ユーザーは、基本的なデザインやキャラクターは変わっていないんだけど、確実に進化している部分を感じ取ることができるので、R1のキャラが好きな人ほどすごく満足できるはずだ。
丸山は万人に凄さが伝わりやすいCBR1000RR-Rの方が結果的に売れるんじゃないかなと予想しており、実際に発売以来見かけることが多いんだけど、僕としてはどちらかというとYZF-R1が好み。こちらを選んだ最大の理由としては、そのスマートな外装デザイン。各パーツの作りのクオリティも美しいしね。でも、これは人それぞれだから。ただ、性能だけで選ぶとしたら、洗練されたR1の走りも魅力だし、CBRのパワーも魅力だし…と、ちょっと迷ってしまうかも。サーキットを走るという性能の面では、どちらもあっさりヒジスリもこなせちゃうし、もう十分すぎるほど。なので令和のホンダvsヤマハは、最後はデザインで好きな方を選んでもいいと思いますよ。
〈参考〉リッターSSポジショニングマップ
●文:宮田健一 ●写真:長谷川徹 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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