バーハンドルを装着したスポーツネイキッドの世界は、ドゥカティ ストリートファイターV4/Sの新登場でさらに過激化! いやぁマジでスゴい時代がやってきた…。ヤングマシンのテスター・丸山浩がカウルレス208psを徹底分析。同じく200ps級スポーツネイキッド・カワサキZ H2を比較対象とした公道走行インプレッションをお届けする。
ドゥカティ ストリートファイター V4S スーパースポーツのドゥカティ パニガーレV4をカウルレス&バーハンドル化したモデル。'20年のニューモデルで、日本では8月より販売が開始された。 カワサキ Z[…]
パニガーレV4シリーズにかなり近いという第一印象
(前ページより続く)
フルカウルに守られていない状態で200ps級のフル加速をしたら、ライダーはどの領域まで耐えられるのだろうか…なんてことを考えるのは、野暮なことかもしれない。スポーツネイキッドクラスに、200ps時代がやって来た。この事実に、心ときめいているライダーは多いに違いない。
『ヤングマシン』では以前、カワサキが’20年4月に新発売した200psの「Z H2」をサーキット中心でテストした(→記事はこちら)が、今回の主役は日本デビューを果たしたドゥカティの「ストリートファイターV4S」。スーパースポーツのパニガーレV4Sをカウルレス&バーハンドルに仕様変更した、なんと208psの獰猛なファイターだ!
今回のテストフィールドは、高速道路とワインディング。つまり、日本の公道環境で208psネイキッドに魅力が感じられるのかをチェックする。比較のため、Z H2にも再び試乗。’20年型としてデビューした個性的かつ刺激的な2台の驚速ネイキッドによる、公道インプレッションをお伝えしよう。
ただしこの2台は、超ド級のエンジンを搭載したハイパーネイキッドという点においては共通だが、その家系や生い立ちにはかなり違いがある。Z H2は、ビッグネイキッドの基礎に、過激かつ現行量産二輪車ではカワサキだけが手がけるスーパーチャージドエンジンを搭載したというパッケージ。対してストリートファイターV4Sは、サーキットで超ハイパフォーマンスを発揮するスーパースポーツのカウルを取り去った設計だ。
だから、ストリートファイターV4Sに乗ったときにまず感じるのは、スーパースポーツの雰囲気。ライポジが異なるだけで、フィーリングは開発ベースとなったパニガーレV4Sに極めて近い。これは、Z H2にはまるでない特徴である。
V4になっても変わらないドゥカティらしさ
ストリートファイターV4Sのハンドルはバータイプに換装されているが、シートに対するグリップ位置は遠めで、前輪荷重がかかりやすい傾向にある。このことも好影響となって、高速巡航時の安定性は非常に高い。やっぱりスーパースポーツの血統だ。サーキットレベルの速度域でも、間違いなく十分な接地感を得られるだろう。
対してZ H2は、前輪にほとんど荷重をかけられないライポジで、以前のサーキットアタック時もフロントの接地感は薄め。トバすとどこに飛んでいくかわからないような雰囲気がある。ただしこれは、Z H2を酷評しているということではなく、ある意味でカワサキは、そんなエンジンと車体のアンバランスな状態を楽しませようとしているのだと思う。
搭載されているエンジンは、どちらも非常に個性的だ。並列4気筒+スーパーチャージャーのZ H2は、ぶち切れ感が魅力。特徴的なヒュルヒュル音は、高速道路でも十分に堪能できる。
一方、挟角90度のV型4気筒エンジンを搭載するストリートファイターV4Sは、どんなシーンでも消えることがない”ドゥカティらしさ”に驚かされる。不思議なのだが、ドゥカティがこだわり続けてきたLツイン(挟角90度のV型2気筒)のフィーリングが4気筒に継承されていて、乗り始めに2気筒と錯覚することが多々ある。これはパルス感や排気音などに関しての話で、性能面においては高回転域でV4が圧倒するのだが、違うエンジン形式になってもここまでドゥカティらしいエンジンフィーリングを守れるというのは、本当にスゴいことだ。
しかも、たとえばかつてのカリカリに性能が高められた水冷Lツインと比べて、より高回転型となるV4エンジンは3~4000rpmのトルクが適度に間引かれていて、神経質な感覚がないことから、市街地やタイトなワインディングでも拍子抜けするほど扱いやすい。もちろんこれは、最新電子制御システムの恩恵もあるだろう。
ワインディングでのストリートファイターV4Sは、やはりスーパースポーツ由来のクイックなハンドリング。旋回力を引き出しながら積極的にライディングを楽しむような走りに向く。対してZ H2は、リヤにドカッと乗るようなライポジで、前輪からガンガン旋回させるような走りにはあまり向かないが、ある程度のペースまではバンク中に安定感が生まれやすく、景色を見ながらゆっくりクルージングするような走りもできてしまう。つまり、一般的なネイキッドの要素も豊富なのだ。
今回試乗したストリートファイターは上級版のV4Sなので、前後サスがセミアクティブタイプ。3種類のライディングモードに連動して、エンジン特性だけでなく前後サスの設定も変更される。とあるワインディングでレースモードを使用してみたところ、局所的にはコーナリングがばっちり決まる反面、やや荒れた路面はゴツゴツ感が気になる。しかしスポーツモードでも、6000rpm付近で自分の感覚と出力特性がややマッチングしなかった。そこで、全体的に扱いやすくサスもしなやかなストリートモードで走るのがベストという結論に至った。
試乗を終えて2台から感じ取ったのは、「自分たちが生み出したエンジンを、もっと多くのライダーに公道で楽しんでもらいたい」という、メーカーからのメッセージ。最高出力ではなく、それぞれのエンジンにしかない個性に注目しながら選んでほしい2台だ。
ライター田宮のセカンドオピニオン
ワインディングでのストリートファイターV4Sは、しっとりとした旋回力と適度な軽快性が共存。かつて所有していたLツインの748Rを思い出させる、官能的なエンジンフィーリングがあり、思わず「ほ、欲しい……」とつぶやいてしまった。対してZ H2は、現行量産二輪車としてはカワサキのH2シリーズでしか味わえないスーパーチャージドエンジンを搭載するが、低中速域でのスポーツ走行やのんびりクルージングとの相性が良いという印象だった。ショートツーリングとサーキット遊びがメインの僕には、ストリートファイターV4Sが向きそうだ。
ストリートファイターV4Sは、個性は強いが市街地でも身構えるほどではなく、ワインディングや高速道路では快感たっぷり。サーキットで本領を発揮させてみたいマシンだ!
Z H2は特別感たっぷりのスーパーチャージドマシンだが、乗れば拍子抜けするほどのとっつきやすさ。ただし、トバすと難しさも感じられた。
●文:田宮徹 ●撮影:長谷川徹 ●取材協力:ドゥカティジャパン ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
ドゥカティはハイパーモタードファミリーに、「ハイパーモタード950 RVE」を追加すると発表した。これは2019年に開催された、クルマやモーターサイクルのエレガンスさ、見た目の美しさを競うコンクール「[…]
ドゥカティは、史上最強の量産V4エンジン「デスモセディチ・ストラダーレR」を搭載したドリームマシン「スーパーレッジェーラV4」の最初の1台をボルゴパニガーレ・ファクトリーからラインオフした。スーパーレ[…]
従来型の2294ccから一気に2458ccへと拡大されたビッグトリプルは、ボアを拡大しつつストロークを縮小(101.6×94.3mm→110.2×85.9mm)。ギヤボックスの5→6段化など内部パーツ[…]
多彩な走行環境に対応するムルティストラーダ。そのフラッグシップは、'18年型で1200から1260に刷新された。’19年型ではオフロードのイメージと走破性を高めた「エンデューロ」を追加。さらに'20年[…]
スーパースポーツのイメージが強かったドゥカティが、'15年に懐古スタイルやテイストを重視した800cc版スクランブラーシリーズを投入。大人気を博し、'18で兄貴分の1100を追加した。パンチ感が強烈な[…]
最新の記事
- 2025年「56レーシング」チーム体制発表! 13歳の富樫虎太郎は全日本J-GP3フル参戦、新たに9歳の木村隆之介も加入
- Wチャンピオンを手土産に世界に再挑戦!【國井勇輝インタビュー】
- 「いつから、いくら下がる?」ついにガソリンの暫定税率廃止へ! 新原付の地方税額も決着……〈多事走論〉from Nom
- 【2024年12月版】シート高780mm以下の400ccバイク10選! 地面に足が着くのはやっぱり安心
- 「これを待ってた」ホンダ新型CB400フルカウル「CBR400RR/CBR400R FOUR」スクープまとめ「かっけー!」
- 1
- 2