若き日に端から眺めていた大人の世界

’80sビッグシングルを入手して青春をやり直してみる【’80年代名車購入ガイド】

日本車の絶頂期だった’80年代の名車たちに“高騰”の波が押し寄せている。超プレミアマシンと化した’70年代車のような状況ではまだないものの、現実的な価格で入手できる時間的猶予はそう長くないだろう。本記事ではビックシングルで一部のユーザーから熱烈な支持を得たヤマハ SRX600/400とホンダGB500TT/400TTの状況をレポートする。

※本記事に掲載されている車両価格等は、取り扱い店舗における’20年6月時点の情報です(関連写真提供:グーバイク)。

’80年代の青春時代、熱に浮かされたようにスピードとスペックを追い求めていた。その傍らで、悠々と肩肘を張らずにスポーツしている単気筒ライダーを不思議に思っていた。しかし今思えば、本当に自由なのはアイツらだったのかも知れない。 

当時のネオレトロだった和製シングルは、歳月を経て、より高い香気を放っている。’85デビューのヤマハSRX400/600は、当時から一部の”大人”から熱烈に支持され続けてきた1台。オフ車であるXTベースの単気筒に、鉄製ダブルクレードルフレーム+リヤ2本サスと特別な装備はまったくない。だが不必要な装備は省き、ひたすら公道での操縦性を磨き抜いた。モダンかつ端正な傑作デザインも見事だ。 

同じく’85登場のホンダGB-TTシリーズは、’60年代のマン島TTレーサーがモチーフで、よりビンテージな趣。今では風格を一層増しており、”本物”と見紛う人がいても不思議ではない。

大人になった今、あの頃のビッグシングルで青春をやり直すのも悪くない。

ヤマハ SRX600/400:GK一条厚氏のデザイン遺産

セルもカウルもDOHCも不要。その代わり日常域の痛快な運動性だけは譲らない。――レプリカ全盛時代に思い切ったコンセプトで登場したSRX。エンジンに沿うフレームと当時では珍しいショートマフラーほか優美なデザインは、VMAXなどを手掛けたGKダイナミクス・一条厚氏の作。名デザイナーと技術者が切磋琢磨した賜物で、今こそひときわ輝く。

【’85 YAMAHA SRX600】■空冷4スト単気筒SOHC4バルブ 608cc 42ps/6500rpm 4.9kg-m/5500rpm ■149kg(乾) ■F=110/80-18 R=140/70-18

SRX600/400:各年式のポイント

’85モデル〈初期型〉18インチにダブルディスク

当初はSRの後継機として開発されたSRX。初期型は前後18インチだ。600はダブルディスクでリヤサスも豪華。

’87年モデル〈2型〉17インチ4ポットキャリパー

フロント17インチ化に伴い、全車がシングルディスク+4ポット採用。エンジンを改良し、軽量化も促進。

’88年モデル〈3型〉ラジアルタイヤへ

吸排気系の改良とともにバルブタイミングを変更し、圧縮比アップ。ラジアルタイヤも採用した。

’90年モデル〈最終型〉モノサスに進化

フルモデルチェンジでモノショック+アルミアームを導入。フレームを見直し、セルも採用された。

実例物件サンプリング〈SRX600/400〉400は平均27万円前後

  • 相場:50万円前後(約70~92万円)
  • タマ数:極少 ※データは600

現行の国産ビッグシングルはSR400のみ。スポーツできる大型のSRX600は特に貴重だ。好事家以外は魅力を認識しておらず、価格は程度相応。安いタマもあるが、上玉はそれなりの値段を覚悟したい。ただし新車の流通が少なかったため、タマは選びにくい。一方400はタマが豊富で値頃感高し。

サンプル1:貴重な初期型400の場合

リザーバータンク付きのリヤサスを備える初期600に対し、400はタンクなし。初期型は相場も安め。

ヤマハ SRX

■参考価格:29万8000円(当時新車価格:54万9000円) ■1985年式 ■車検:なし ■走行距離:6290km ●SHOP:クローバーモーターサイクル亀岡店(京都府)

サンプル2:600後期型の場合

タマがあり、人気が高いのは’90以降の後期型。相場は40万円から、上玉やフルカスタムは60万円以上。

ヤマハ SRX

■参考価格:57万8000円(当時新車価格:54万8000円) ■1991年式 ■車検:2021年7月 ■走行距離:17294km ●SHOP:バイク王つくば絶版車館(茨城県)

サンプル3:国内/逆車で差はない?

20年乗れるようエンジンやキャブをオーバーホール、足回りも徹底整備後に納車するという車両。相場より高いのも納得。

ヤマハ SRX

■参考価格:65万8800円(当時新車価格:54万8000円) ■1991年式 ■車検:なし ■走行距離:57740km ●SHOP:エムフィールド(東京都)

〈次のページは…〉ホンダ GB500TT/400TT:35年前のネオクラに浪漫