カワサキから続々と発表されているNinja H2、Ninja H2SXといったスーパーチャージャー搭載車。このほど登場した「Z H2」はその末弟であり、そしてZシリーズの”親玉”ともいえる存在だ。兄貴分2車と方向性や性格はどのように異なるのか? ヤングマシンメインテスターの丸山浩がサーキットにて検証する。
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【TESTER 丸山浩】都内からZ H2を自走させて袖ヶ浦入りした本誌メインテスター。「ストリートでは非常に扱いやすい。これなら毎日乗れる!」そんなスパチャ三男坊のサーキット能力はいかに?
フロントタイヤを浮かせない方が難しい
カワサキ・スーパーチャージドシリーズ第3弾「Z H2」が遂に登場。’19年9月、ギュンギュン回るインペラに「Z」と映し出されたティザームービーの公開から待ちわびていた方も多いだろう。というわけで今回は袖ヶ浦フォレストレースウェイに持ち込み、スーパーチャージャー搭載ストリートファイターのポテンシャルを余さずチェックする。
【スパチャを備えたZの親玉:カワサキZ H2】カワサキZシリーズの旗艦として、扱いやすくパワフルなネイキッドを目指したZ H2。スーパーチャージャーによる圧倒的な出力を有しつつ、それをコントロールできる専用トレリスフレームや足回りを持ち、軽快なハンドリングや市街地での快適性など、乗りやすさも高次元で満足させた新世代のZだ。 ●色:黒×灰 ●価格:189万2000円
まずはポジションから。身長168cmのワタシで両足つま先の腹がしっかり付く。タンクはボリューミーだが前後は短いので、軽く前傾するとハンドルバーにスッと手が届く。ハンドルはストリートファイターにしてはショートで、肩幅からこぶし半分ほど外に出たくらい。絞りも緩くてタレ角はほとんどなく、跨っての印象は正にビッグネイキッド、あるいはツアラーっぽくもある。もうちょっとステアリング位置が低ければスポーティさも出るが、気構えないポジションからもストリートでのフットワークを意識したことがうかがえる。
ステップに足を乗せると、ちょうどヒザがフレームに当たる。街乗り用のライディングパンツだと少々痛い。なお日本人男性平均身長である私に対して足の長さに対する異論は愚問。[身長168cm/体重61kg]
外装を脱ぎ払ったZ H2の車重は、SXよりなんと約20kg軽い。ところがどっこいH2より2kg重かったりするのだが、体感ではサイドスタンドから引き起こす瞬間からZの方が軽い。取り回しも同様、ハンドル切れ角も大きいのでUターンも楽にできそう。乗り出す気軽さは間違いなくZが一番だ。しかしながら心臓部はスーパーチャージド200㎰、アップライトなストリートファイタースタイルで全開走行するとどうなるか。そう、答えは明白、至るところでフロントアップ祭りである。もはや浮かせない方が難しい。とはいえ電子制御のコントロールが秀逸で、シフトアップの度に浮いてくるフロントを30cmあたりでキープしながら延々スーパーチャージド加速が可能。自分のテクニックが上手くなったのではと錯覚してしまうほど、楽しく走らせてくれる。
一方、コーナー進入時のバンキングスピードを上げていくと、一定領域からリヤがゴツゴツ跳ねて流れ始める。コントロール不能には陥らないが、なかなかクリップに付けない。これは動きの良い柔らかい足まわりと、ツーリングスポーツ寄りのタイヤ特性にも依るもの。高荷重時の旋回力より、大出力を受け止められる剛性と安定性、耐久性を優先したのだろう。
そもそも、ライダーがどれだけ前に乗って抑え込もうともフロントはフワッフワなわけで、ガンガン前に荷重をかけてコーナーをプッシュするキャラではないのだ。スーパーチャージャーも高回転に行くほどパワー炸裂というわけではなく、あくまで200㎰に留めている感触。つまりは超スピードレンジでスーパーチャージャーに酔いしれるのがH2&SX、より現実的な速度域でそれをできるのがこのZという配役なのだ。
【SX用をベースに低中速をより強化】H2 SX用エンジンをベースに、主にFIや電子制御スロットルのチューニングで特性を変更、最大トルク値は同一だが発生回転数を1000rpm低下。2次減速をショート化してバルブタイミングも最適化する。膨張室を廃し、管長を長く取った排気系も低中速を重視したZ H2専用品だ。
【安定感と軽快感を両立専用スチールトレリス】専用トレリスフレームは兄弟2車と同様、エンジンに固定したプレートにスイングアームをマウント。このスイングアームはZX-10RRの技術を還元したアルミ製で、タイヤはピレリのディアブロロッソ3を履く。
【最新の電子制御機構を満載。快適装備も充実】カラー液晶メーターには車体姿勢やブースト、スロットル開度なども表示可。パワーモードは3モード+トラコンOFFも可能なライダーモードの計4種。トラコンや旋回中ブレーキ、ウイリーなどを統合制御するKCMF、アップ/ダウン対応のクイックシフター、クルーズコントロールやスマートフォン連動機能も備える。
ヤングマシンメインテスター・丸山浩氏によるZ H2テスト。次ページでは袖ヶ浦フォレストレースウェイでスパチャ3兄弟ラップタイム比較を行う。
●文:丸山浩 ●写真:富樫秀明 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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