エスパルガロとザルコのアクシデントはやむを得ない

世界GP王者・原田哲也のバイクトーク Vol.39「混戦のMotoGP、8耐中止、そして全日本では……」

1993年、デビューイヤーにいきなり世界GP250チャンピオンを獲得した原田哲也さん。虎視眈々とチャンスを狙い、ここぞという時に勝負を仕掛ける鋭い走りから「クールデビル」と呼ばれ、たびたび上位争いを繰り広げた。’02年に現役を引退し、今はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。そんな原田さんのWEBヤングマシン連載は、バイクやレースに関するあれこれを大いに語るWEBコラム。第39回は、レース界での様々な話題と、亡くなった岩崎選手について。

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日本の……といえば、鈴鹿8耐の中止がアナウンスされましたね。僕は今年、チーム監督を務めさせていただく予定だったので、本当に残念です。でも、新型コロナウイルスの感染状況を考えると、こればかりはやむを得ないのかな、と納得もしています。これで8耐がなくなってしまうわけじゃない。必ずまた開催されるはずですので、その時に喜びを分かち合いましょう!

全日本ロードレースもスポーツランドSUGOで開幕し、最高峰のJSB1000クラスは野左根航汰くんが2連勝を挙げました(※JSB1000は2レースが行われた)。エースの中須賀克行くんがウエットコンディションのレース1で転倒リタイヤを喫し、レース2も欠場。レース数が少ないシーズンですから、チャンピオン争いにはかなり大きな影を落とすこととなりました。

レース序盤の転倒だったので、「焦ったんじゃないか?」という見方もあるようですが、僕はそうは思いません。若くて勢いのあるライダーが台頭しようとする時、トップの座にいるベテランライダーは全力でそれを阻止するものです。若手が勢いに乗ると手が付けられなくなるからです。だから「抜かれたら何としてでも抜き返す」「絶対に前に出る」というのは、焦りでもなんでもなく、ベテランがとるべき戦略のひとつだと考えます。

レース1の序盤から2人が抜け出し、激しいトップ争いの末に#1中須賀克行選手が転倒。#3野佐根航汰選手が独走で勝利を挙げた。

結果的に転倒してしまいましたが、それは仕方ないこと。戦略としてはまったく間違っておらず、僕が中須賀くんと同じ立場にいれば、同じように攻めたと思います。実際、アプリリア時代にバレンティーノ・ロッシがチームメイトになった時は、『これはヤバイ若手が来たぞ!』と懸命になりました……。

繰り返しになりますが、結果的な転倒は仕方ないこと。バイクのレースですから起こり得ます。それだけ野左根くんが成長していて、中須賀くんの脅威になっているのでしょう。中須賀くんが欠場したレース2で、野左根くんは独走優勝を果たしていますから、かなり力を付けているのだと思います。もちろん中須賀くんも黙ってはいないはず。今後が楽しみです。

全日本ロードレースもスポーツランドSUGOで開幕

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