筆者憧れの存在、その最新版に試乗

進化を続ける究極のハーレーコンプリートマシン【サンダンス スーパーXR1200-5】

ハーレーカスタムのスペシャリスト・サンダンスの技術の粋を集めた、スーパーXR 4カムエンジンを搭載する受注生産コンプリートモデル「スーパーXR1200-5」。’95年に正式発表され、じつに四半世紀。その性能の高さと唯一無二の機能美から、オーダーは今も絶えない。シリンダー内壁のコーティングをグレードアップさせ、新しく組み上げたばかりのマシンを試乗した。

ハーレーダビッドソンのスペシャリストとして、国内はもとより本場アメリカでも広く知れ渡るサンダンス。「スーパーXR」は、数ある名作のなかでも特に名高い代表作のひとつと言っていいだろう。

1995年の発表以来25年以上、コンプリートマシンでのみ受注販売され続け、現在も国内外からオーダーが絶えない。その理由はいったい何なのか、ずっと気になっていた。いや、理屈なしにずっと憧れていたと正直に言うべきだろう。

今回は、シリンダー内壁のコーティングを従来のニカジルメッキより硬度が高く、さらに摩擦抵抗も1/7しかないミラーフィニッシュとする「Tスペックコート」(仮名)にグレードアップ。組み上がったばかり、テスト段階の貴重な車両にいち早く試乗した。

【SUNDANCE SUPER XR1200-5】オーダー受付中。価格や仕様は要問い合わせ。

’90年代後半、憧憬の眼差しでバイク専門誌に掲載される写真を熱く見つめた自分にとって、スーパーXRは特別な存在。ハーレーはもちろん、大排気量スーパースポーツからオフロードまで新旧さまざまなモデルを毎日のように試乗する自分も、いざ実車を目の前にし、スーパーXRに乗ると思うと血が騒ぐ。平常心でいられるはずがない。

エンジンに火が入ると、サンダンス代表の柴崎氏がキャブレターを手際よく調整し、最終チェックを済ませた。スロットルケーブルにストレスがかからないよう取り回しを見直し、ハンドルを左右に切って確認。妥協を許さない真剣な眼差しは、コンマ何秒を競うレーシングメカニックそのものの鋭さで、これからレーストラックへ出て行くかのような緊張感が漂う。

凄まじい動力性能と評されるスーパーXR、やはり手強いのだろうか……。いいや、まったく違った。ガチャンと金属音のするハーレーのトランスミッションとはまるで異なる、滑らかに入るギヤを1速にスコっと入れれば、極低回転域からトルクが太くみなぎり、クラッチミートした途端に扱いやすいエンジンだとわかる。ハンドリングも軽快でクセがなく、力んでいた体からすっと力が抜け、リラックスして操れるのだった。

そして、1000回転半ばでもノンビリ気持ちよく走ることができるから驚く。大太鼓を打ち鳴らすかのような鼓動が心地よく、ゆったり走るだけでもう満足しそうになってしまう。

しかし真骨頂を見せるのは、高速道路のランプを駆け上がってからだった。圧倒的に力強いトルクで一気に加速していく。パワーバンドは3000〜7000rpmと広く、アクセルをワイドオープンすれば、3速まではフロントが浮くほどのパワフルさで、猛然とダッシュしていくから痛快きまわりない。

前後シリンダーにひとつずつセットされるサンダンス/FCR41mmキャブレター。エレメントをむき出しにしたエアクリーナーは、停車時に右足を地面に伸ばすと太ももの内側に触れるが、ライディング中はまったく体と干渉しないことも乗ってわかった。不快な微振動もまったくなく、本当にこれがリジッドスポーツなのかと、疑いたくなるほど乗り心地がいいことも報告しておきたい。

Sundance-Keihin FCR41mmキャブレターは、コンパクトで小さな口径ながらもバタフライキャブ52mmを超える空気を吸い込むエアフロー性能を持ち、可変ベンチュリーゆえの超低速から高速までの安定性を持ち合わせている。むき出し状態のワイヤードラム周辺もSundance製FCRキャブレタードラムガードでスタイリッシュに。カーボンチェーンガードも軽量化に役立っているのは言うまでもない。

エレメントをむき出しにしたエアクリーナー。

フロント19/リア18インチの足まわりが強化されたエンジンに負けないようモディファイされ、路面追従性に優れるトラックテックの前後サスペンションは、市街地を流すときはしなやかに動き、負荷がかかったときは頼もしく平然と踏ん張りが効く。

キャストホイールはフロント19/リア18インチ。前後サスペンションは乗り心地と高性能を両立するSUNDANCE TRAKTEK。

ブレーキもタッチコントロールに申し分なく、たとえサーキットでも不満は感じないレベルにあり、スーパーXRはエンジンだけでなくトータルバランスに優れたマシンであることがよくわかる。四半世紀も前に、この基本構成が完成されていたなんて信じられない。

また車体全体、フリクションが徹底的に低減されているからだろう、試しにクラッチを切って駆動力をゼロにしても軽やかに前へ進み、この感覚は以前乗ったトランザムにも通じるものがある。

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