過激さで魅了した2ストマシン

時代を切り拓いた革新のエポックマシン:スズキRGV250Γ/RGV-Γ250SP


●文:沼尾宏明、中村友彦 ※本記事で取り上げる「初」は、公道走行可能な量産二輪市販車としての”初”を意味します。なお、その定義には諸説ある場合があります。 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

’88 RGV250Γ:全てを一新、過激さで魅了したVガンマ

並列ツインのRG250Γから決別し、’88年3月、パワフルなV型を積んだ後継機・RGV250Γがデビューした。車体は日の字断面のDC-ALBOXフレーム、φ41mmフォークにラジアルタイヤで武装。ジャジャ馬ぶりが評判だった。

【’88 SUZUKI RGV250Γ】■車重128kg(乾) 水冷2ストV型2気筒ケースリードバルブ 249cc 45ps 3.8kg-m ■当時価格:56万9000円

’90 RGV250Γ〈国産初・湾曲スイングアーム〉GPマシン直系の後脚

’88年のデビュー以来、過激な走りで人気を高めていたVガンマが、早くも2年後にビッグチェンジを敢行した。2スト90度V型ユニットは、より高度に電子制御を行うSAPCやスリングショットキャブレターを採用し、排気バルブのAETCがIIに進化。最大トルクは0.1㎏-m増の3.8㎏-mとなった。さらに国産車初となる湾曲スイングアームによってチャンバーの容積を稼ぐことができ、右2本出しサイレンサーが実現。これらはWGP500マシン=RGV-Γ直系のメカで、後にも先にも右2本出しは国産レプリカ唯一となる。車体面でも2スト勢初の倒立フォークや、ピボット部の肉厚を増したフレームで強化。優れたバランスとルックスで玄人から人気を集めた。

【’90 SUZUKI RGV250Γ】■車重139kg(乾) 水冷2ストV型2気筒ケースリードバルブ 249㏄ 45ps 3.9㎏-m ■当時価格:60万9000円

【最高峰レーサーとソックリに進化】GPの参戦を休止していたスズキが’88年から5年ぶりにフル参戦を再開。V4のRGV-Γがイメージリーダーとなり、Vガンマ(VJ22A)にも同様の機構が多く与えられた。湾曲アームによってチャンバーは真円に近い断面形状となり、ストレートに配置できるため、出力向上も望める。

当時スズキの絶対的エース、#34ケビン・シュワンツ。当初RGV-Γはパワーで劣ったが、豪快なブレーキングと旋回速度で、ガードナー、レイニー、ローソンらと渡り合った。’93年、ついに年間王者に輝く。

’90シーズンからスズキワークスのメインスポンサーがペプシからラッキーストライクに。’91年にレプリカが登場し、大人気になった。

’93年型でスイングアームをトラス式に変更。単体重量は不変ながら、剛性を10%高め、リンクも改良された。

’96 RGV-Γ250SP:2ストレプリカのラストを飾ったのもガンマ

最後にして究極の2ストレーサーレプリカと呼ばれているRGV-Γ250SPは(車名のΓの位置がレーサーと同じになり、SP仕様のみを販売)、すでにレプリカブームが終焉を迎えた’96年にデビュー。開発ベースは’95年の全日本選手権GP250クラスを制したXR95で、70度Vツインやアルミツインスパーフレームを筆頭とする、ほとんどのパーツが新規開発だった。吸気系はラム圧過給を考慮した設計。

【’96 SUZUKI RGV-Γ250SP】■車重134kg(乾) 水冷2ストV型2気筒ケースリードバルブ249cc 40ps 3.5kg-m ■当時価格:77万7000円

’80年代以降の2ストスポーツバイクはキック始動が当たり前だったのだが、RGV-Γ250SPの始動方式はなんとセルのみ! もちろんセルモーターは専用設計の超小型&軽量品である。クラッチは乾式が標準。

STDから約2ヶ月遅れの’96年4月に登場したラッキーストライクカラー車は、当時の世界GPや全日本選手権で数々の栄冠を獲得した、ワークスレーサーの雰囲気を再現。

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