生まれた目的の違いががそのまま走りの違いに

カワサキ400タイムスリップバトル〈中編〉’18ニンジャ400 vs ’94ZXR400

  • 2019/2/17
KAWASAKI ZXR400[1994] vs Ninja400[2018]

日本国内の’18年400cc市場において上半期トップセールスとなったNinja400は海外でも大好評。その実力は最強と謳われた往年の400レプリカと比べるとどうなのか。そんな疑問に答えるためドイツのモトラッド誌が直接対決でインプレを敢行。その模様をお伝えしよう。中編はライディングインプレッションから両車の違いを探る。

↓【前編〈スペック比較〉を読む】↓

ZXRは欧州で希少な正規販売の400レプリカ

’76年の後半にマン島TTがGPの世界選手権から外れたとき、代わりに導入されたのがTTフォーミュラクラスだった。この中で特に4スト400&2スト250で争われるF3クラスには、やがて全盛期に日本のメーカーが精巧な小型スーパースポーツを次々と輩出するようになる。そのうちのいくつかは我々ヨーロッパにもやって来たが、正式に輸入されたのはホンダVFR400R(高価で希少だった)、スズキRGV250Γ、そしてカワサキのZXR400のみだった。このZXR が現代のニンジャ400と比べてどんな違いがあるのか、あらためて検証してみたい。スーパーバイクZX‐10Rを強く連想させながらオールラウンドに使えるニンジャ400とはまったく違うはずだ。ニンジャは丸いパイプフレームや正立フォークにシングルディスク。片やZXRは24年以上前のマシンとは言え、アルミのツインスパーフレームに倒立フォーク&ダブルディスク、本格的なスイングアームと非常にレーサーチックだ。

KAWASAKI ZXR400[1994]

KAWASAKI ZXR400[1994]欧州仕様

だがやはり、特別な注意を払うべきはカウルの下に隠れているそのエンジンだろう。ZXRの4気筒は57mmのボアに39mmの非常に短いストロークを持っている。さすがに現在では600ccスーパースポーツのボア×ストローク比の方がさらに極端だが、いずれにせよショートストロークは小さなZXRに14500rpmを超えるピストンスピードを可能にした。また、そのような領域での効率的な混合気供給を保証するバルブも精巧で小さなバレルオルガンのようで、最高性能を印象づけることは間違いない。現代でもその測定値は常に65〜68ps。1000㏄に換算すると、これは162.5〜172psに相当する。’90年代初めには、この性能を持つエンジンは他になかった。それだけではない。有能なチューナーはこのエンジンから80psを簡単に引き出すほどだったのだ。

一方、ニンジャ400のエンジンは全く異なるアプローチで作られている。最大48psまでのライセンスクラス用に設計されており、高いピークパフォーマンスを目指すことはない。したがって生産コストを節約してユーザーの手に届きやすくするためにもシリンダーは2つとなった。流行りの270度位相クランクではなく、180度クランクを採用。パワーを確保しながら偶力振動を抑えるためのバランサーを持つ。もっとも実際に乗ると、オーソドックスなテクノロジーとは異なり、非常に扱いやすい低中速域とパワフルに回る高回転域と走行シーンでキャラクターが異なるような設定が上手く両立されているのが、いかにも現代的。始動も速やかでアイドリング時は静かにシェイク。クラッチは非常に軽く、低回転でつないで簡単に発進できる。これがZXRだと、発進ではキャブということもあり発火するまで正確なチョークサポートなどいくつかの儀式が必要だった。さらにニンジャより重いクラッチを握って、しっかり出ようとするなら高めに回して慎重につなぐ必要があった。

KAWASAKI Ninja400[2018]

KAWASAKI Ninja400[2018]欧州仕様

2気筒のニンジャはZXRの4気筒ほどピーク性能を提供はしないが、排気量の点で最適化された比較的強力な中間域を備えており、ほとんどそこで賄うことができる。車重はZXRより16kgも軽く、タイヤサイズもひと回り細身と軽快。ライポジは直立姿勢でハンドリングも扱いやすく、柔らかいクッション性能と相まって、快適で心地よい運転経験を保証してくれた。ニンジャはコーナーをクリアしていくのに、いちいち進入方法やパワーバンドなどを気にする必要もない。その点、ZXRはライダーがそのようにすることを強制していた。さらに山間ルートでは6000〜10000rpmあたりで高所におけるキャブレター特有のカブり症状も軽く出る。しかしながら、スロットルを開けると熱狂的な雄たけびを上げて14000rpm以上まですぐに到達。フリーウェイでは200km/h以上まで達し、ニンジャを一気に引き離してしまった。サーキットだけでなく路面の厳しいワインディングでも車体の限界領域は高く、ZXRのステアリング精度とフロントホイールの感触は、今日でもなお印象的だった。

ZXRが今日の基準を満たしていない唯一のポイントは着座位置だった。シートが低すぎる。フットペグはバンク角を稼ぐために高い位置にあるのだが、シートが低いために痛いほど膝の角度が狭くなってドライバーの移動性が低下してしまっている。本気で走るためには4㎝厚ほどのシートパッドを張ってしまうのがいいかもしれない。

●取材・文:Ralf Schneider(MOTORRAD)

MOTORRAD

【MOTORRAD誌】ドイツのナンバー1バイク雑誌で月2回発行。新車のガチンコテストからツーリング、用品、それに今回のような往年モデルの紹介まで総合的な内容を扱っている。

ヤングマシン版インプレッション by 丸山 浩

Ninja400(本誌’18年4月号)

KAWASAKI Ninja400[2018]

基本的に、あくまでストリートユースを前提に置いたマシンだ。そのハンドリングもフロントに荷重をかけてグイグイ旋回させていくSSタイプではなく、あらゆる走り方に対応するニュートラルなもの。共通車体の250とはパワー数値以外にフィーリングも異なっていおり、250は高回転で回し続けて速さを出すのに対し、レッドゾーンが250より1500rpm低い400は回転馬力よりもトルクで速さを出しやすく、サーキットでの走り方もちょっと違ってくる。高速道路を走っていても250ほど回さず済むのでかなり楽だ。街中優先で柔らかめのミッションタッチは、高回転域だとシフトミスを誘発しがちかも。(※欧州仕様2018モデル)

ZXR400(本誌’93年6月号)

KAWASAKI ZXR400[1993]

SPレース常勝マシンのZXR400と上級版のR。アクセルワークをシビアにしてでも高回転でのピークパワーを求めたエンジンで、2000rpm以下に落としたところからアクセルをガバっと開けると息つき、常に4000rpm以上キープする必要がある。しかし、高回転域を使うと180km/hへの到達加速も速くレブ特性もいい。Rではさらにスムーズに回ってくれる。サーキット指向が強くサスペンション設定はハード。Rともなると前後ダンパーは街中では最弱でいいくらいだから、ワインディングでも多少柔らかめのほうが走りやすいはず。とにかく速く走ることのみ追求して作られたという感じのマシンだ。(※日本仕様1993モデル)

↓【後編〈数値データ比較〉に続く】↓

●まとめ:宮田 健一
※ヤングマシン2019年2月号掲載記事をベースに再構成

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カサ

カサ いわゆる"Web担"的黒子

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研二くんのゼッツーに憧れるも手が届かずZ400GPで卒輪(そつりん)した"自二車は中型二輪に限る"世代。あれから30余年を経てまさか再び二輪の世界に触れることになろうとは人生何が起こるかわからんもんだ(笑)