助走区間の勢いがクリアの秘訣

プロライダーから学ぶ、急なヒルクライムをクリアする方法【渡辺学のスキルアップラボ】

オフロード総合誌『オフロードマシン ゴー・ライド』(偶数月6日発売)から、世界的ライダー渡辺学選手のオフロードライディング指南をお届けする。今回はオフロードの醍醐味のひとつといえるヒルクライム。エンデューロレースでは名物になるケースも多く、登れるか否かでリザルトにも影響してくる。坂のスケールによってもテクニックは異なってくるが、登りきるスキルを身に付けよう。


●写真:長谷川徹 ●まとめ:山田晃生 ●取材協力:ヒーローズ ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

渡辺学選手
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【ツイスターレーシング 渡辺学】初参戦のISDEポルトガル大会にて、DAY6ファイナルクロスで1位。最終的にはクラス24位で無事完走を果たした当ラボ院長。2020年も同じく、JNCC参戦はライダーとして、全日本モトクロス選手権には監督として参戦予定。本業の餃子も随時ご注文承り中!

【軽井沢モーターパークの名所「ステップヒル」にてレクチャー】
初心者向けレース「ヒーローズえんでゅーろ」では登りor下りセクションとして使用される、通称「ステップヒル」。コンディション次第ではクリアできないライダーも続出する難所になる。この日は水を多く含み難易度は高め。登り始め部分には段差と数本のワダチができ上がっていた。

軽井沢モーターパーク】モトクロスとエンデューロレースの両方を開催する避暑地のバイクパーク。草津をはじめ近隣には温泉施設が多数あり。毎年4月頃にオープン予定。

登りきれたら爽快感すらあるヒルクライム。レース派に限らず、トレールライダーでも身に付けておきたいスキルのひとつといえるだろう。アクセル全開で行けばいいというワケではなく、むしろ逆効果。このセクションでもっとも大事なのは助走、と渡辺学先生は言う。

「ある程度、斜度がキツめのヒルクライムを登りきるには、助走区間でいかに勢いをつけるかがカギです。斜面の途中でアクセルを開けても路面を引っかくだけで手遅れ。平地と斜面の境界になる部分でしっかりトラクションさせて勢いをつけることに集中してください。

そのためにはラインどりも大事で、登り始めがなるべく荒れてない路面を狙います。頂上にかけても起伏がなるべく少ないラインが理想です」

【ヒルクライムは助走が肝心】ヒルクライムの成功のカギとなるのが、連続写真の[2]と[3]。ここでいかにトラクションさせられるかで斜面の勢い・加速につながってくる。止まりそうになって斜面の途中でアクセルを開けても手遅れなのだ。普段練習する場合も、この[2]と[3]でのトラクションを意識してチャレンジしてみてほしい。

[1] 2スト車は、アタック前にあらかじめカブりをとっておくこと。進入からポジションはずっとスタンディングで、斜面で使用するギヤでアプローチする。車種や路面コンディションにもよるが、ほとんどのヒルクライムでは2速が多いだろう。シフトチェンジ時にニュートラルに入るミスのリスクがあるため、斜面の途中でギヤチェンジはNGだ。

[2] いちばんGをかける平地と斜面の境界部分。ここでは後輪にトラクションをかけるフォームをとる。

[3] 登りはじめたらニュートラルポジションに移行していく。後方に引いた体がバイクから遅れないように注意。

[4] 今回はYZ250FXに乗っているが、トラクションに優れる4スト車は前輪が浮きすぎないよう注意。スタンディングならヒザを使ってのマシンコントロールがしやすい。シッティングでトライすると前輪がまくれて転倒、の恐れがある。スタンディングでも万が一に備えてクラッチレバーに指をかけ、まくれそうになったら一瞬半クラッチを使う準備をしておく。

[5] 斜面の途中にギャップがあっても、助走で十分に勢いがついていればクリアしやすくなってくる。

[6] 前輪が頂上に到達すればクリアは容易。この手前で失速しそうになったら、左右どちらかのハンドルを土に刺すようにバイクを倒し、断念することも大事。平地までバイクを降ろし、しっかり勢いをつけて再アタックしよう。危ないのは斜面の途中でピタっと停止した場合。ブレーキをかけても坂下に転がり落ちるリスクが出てくる。

加速しやすいラインを見つける

トラクションさせられるアクションにプラスして、加速しやすく、登坂中にバイクが暴れにくいラインを見つけるのも大事。また[A]〜[C]のすべてのラインで登り始めから登頂するまで一直線で走ること。斜面の途中で曲げようとすると失速し、失敗の原因になりがちだ。

[A] 頂上付近に段差があるが中盤までは登りやすい人気ライン。しかし荒れてきたら加速しにくくなるため、ラインを変える必要もある。

[B] 比較的進入付近にギャップ・段差が少なく、加速させやすい第2プラン。

[C] 斜めに走るラインは一見難しそうだが、ギャップをなるべく回避している。

「レースでけっこうよく見るのが、2スト車でアタックする時、アクセルを開けた際にカブってしまい、ボボボとバイク数台分失速させてしまう人。ほんの数メートルであっても、助走区間のこのロスで成否が決まってしまうことが多いのです。回避するには、平地部分で下見をする時に、しっかりレーシング(アクセルを空ぶかしする)して、カブりをとってからアタックしてください。

それとケガをしないためには、勢いやスピードが足りず、ダメだと思ったらバイクを倒して逃げること。無理にこらえるとライダーもろとも引っくり返るなど、大ケガのリスクが高くなります。前輪が頂上に届きそうなら粘ってもイイと思いますが、諦めるタイミングも大事です。

このヒルクライムの練習は、普段走っているコースでもできなくはありません。軽井沢モーターパークのステップヒルより斜度が緩く距離が短く、惰性で登れてしまうようなセクションでも、助走区間を短くするだけでも難易度は上がります。バイク1台分の助走でクリアできたら、次はゼロ助走、といった具合に難易度を高めることができます。トラクションをしっかりかけて勢いをつける、このことを意識してチャレンジしてみてください」

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