約30年ぶりに復活する250cc4気筒マシン・カワサキ Ninja ZX-25R。本特集では往年のZXR250(’90)の実力を再検証してきたが、その当時このカテゴリーで覇を競い合ったライバル車たちの存在も忘れてはならない。本ページでは、世界で初めて250cc直4マシンを量産したスズキの歴史的展開について解説する。
●文:沼尾宏明/宮田健一 ●写真:真弓悟史 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
世界初の量産250cc直4。VC機構で完熟へ
250ccクラス世界初の直4エンジンを実現したのは、’59年のホンダRC160。しかし、RCはあくまでワークスレーサー。そのコストは計り知れないものだった。そんな遠い存在だったエンジンを、’83に世界で初めて市販車クラスにもたらしてくれたのがスズキ。しかも、水冷というのは空冷だったホンダRCから20年以上を数えるにふさわしい当時の最新トレンドだった。
’83スズキGS250FWに搭載された世界初の水冷250直4は、DOHC2バルブと、車体幅を詰めるために2バレルとした2連装キャブレターを採用し、最高出力36psを発揮。これは当時の250クラスを席巻していたヤマハRZやホンダVTを1ps上回るものだった。
ただ、排ガス規制が今ほど厳しくなかった当時では、パワー競争においても技術面や生産コスト面においても2ストの方が4ストより圧倒的に有利だった。スズキ自らクラスの頂上対決は2ストのRG250Γに任せ、250cc直4が表舞台に立つのはGSX-R250が登場する’87年まで少々遅れることとなった。
4バルブ化で高回転性能が飛躍的に伸びたGSX-R250のエンジンは、その後にバンディットやカタナ、アクロスといったマシンにも転用され熟成を重ねていく。そして、よく回る代わりに低中速トルクが細くなってしまいがちという250直4の弱点も、可変バルブタイミングのVC機構で克服してみせたのだ。
世界初の量産250cc直4は’83スズキから
’83 GS250FW:スズキ250直4の始まりはいきなり水冷で実現
高まるクラス人気に、250にも高性能の直4を求める声が急増。それに応えたのがスズキだった。世界初の水冷250cc直4は、RZやVTより1ps多い36psを発揮。角断面のスチールフレームやアンチノーズダイブ機構、それにフロント16インチタイヤなど、当時先端のセールスポイントも併せ持っていた。’84年型で2psアップの38psとなったが、ライバルたちの進化ぶりがそれをはるかに上回っていたため、250にもGSX-Rの登場が待ち望まれることとなった。
当時のライバルはVT250F&RZ250他
GS250FWが出た当時は、VT250FやRZ250Rが2大巨頭として250の頂点をめぐりシノギを削っていた。これらに勝つためにメカニック的にも格上となる直4エンジンの採用は必然的なものだった。が、スズキは超過激2ストRG250Γの開発も並行し、GSの2か月前に発売。GSはΓ人気に食われてしまった感があった。
GS250FWの直4は、その後パワーアップしてGF250シリーズに採用されていった。軽量化も行われたが、せっかくの「世界初250直4」という肩書きも、ネイキッドやツアラー然としたスタイルから、当時のレプリカブームの中で主流となることはなかった。
’83年のGS250FWで幕を開けたスズキ250cc直4マシンの歴史は、次ページのGSX-R250シリーズ、バンディットシリーズへと継承される。
'87年は4スト250にも波及したレプリカブームが一気に花開いた年だった。ホンダはCBR250Rを、ヤマハはFZR250を投入。GS250FWは2バルブだったが、スズキも満を持して4バルブのGSX-R[…]
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