音(だけ)速(い)伝説

250cc4気筒の実力再検証【ZXR250テスト総括対談・丸山浩×伊丹孝裕】

往年のZXR250(’90)と最新のNinja400(’20)を比較した今回のテスト、千葉県から栃木県にかけてたっぷりと走り回りながら、250cc4気筒のパフォーマンスに触れることができた。街中や高速道路も走った印象もふまえ、テスターの丸山浩氏と伊丹孝裕氏にその魅力と未来を語ってもらった。


まとめ:伊丹孝裕 写真:真弓悟史 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

本誌メインテスター・丸山浩氏(左)とジャーナリスト・伊丹孝裕氏(右)が実走を担当。今回のZXR250はこの日のために丸山氏自らが用意してきた程度極上車である。

丸山:’92年型ホンダCBR250RRの時も強く感じたけれど(YM2019年8月号)、やっぱりこの頃のニーゴー4気筒はお金をかけているよね。エンジンはもちろん、サスペンションのフィーリングもすごくいい。30年近く前のモデルなのに、ストロークのしなやかさやダンピングの効き具合は最新モデルよりも上質な感じがするほど。

伊丹:そうですね。ディメンションが今どきじゃないだけで、パーツひとつひとつの作りは手が込んでいて、安っぽい部分がほとんど見られません。

【KAWASAKI ZXR250】

丸山:ZXR250の場合、リヤの車高とバネレートを上げて、フロントに荷重が掛かるようにするだけで旋回力は格段に向上すると思う。そうなるともっとコーナリングスピードを稼げるようになるから、Ninja400に対するタイム差はどんどんなくなっていくはず。エンジンも当時の自主規制の影響でパワーが絞られているけれど、本当はまだまだイケるはずだからね。

伊丹:400や2気筒と比べるからトルクは細く感じられますが、これ単体で評価すると十分ですね。街中のストップ&ゴーでも特に気を使う必要はなく、スムーズそのもの。3000回転も回っていれば力強くレスポンスしてくれますし、アイドリングでクラッチをつないでも普通に走れます。

丸山:だからといって、決してイージーなわけじゃなく、速さを引き出そうとするとちょっとしたコツや技が必要になってくるでしょ? そこがこのクラスの楽しいところで、乗せられているんじゃなくて、自分でパワーを引き出している感覚が強い。

伊丹:がんばってチャレンジしても、とてつもないスピード域には簡単に達しないのもいいですね。1万回転以上をキープしながら走れるバイクなんてなかなかないですし、なによりその領域での音が最高に心地いい。

【KAWASAKI ZXR250×KAWASAKI Ninja400】

丸山:今にして思えば、すごくバランスの取れたカテゴリーだった。ただ、当時はどうしても400の方がエラいっていうヒエラルキーがあって、差をつけなきゃいけない、でもレースにも対応しなきゃいけない、そうこうしているうちに規制も入って……と、色々なことが重なった結果、ちょっとイビツなマシンになったことが衰退の要因のひとつになったんじゃないかな。

伊丹:そういう意味では、今は排気量による上下関係はないですね。

丸山:そうなんだけど、少なからず「250はこれくらいでいいでしょ?」っていう雰囲気があるのがもったいない。特に今回のZXR250のように、しっかりコストが掛けられていた時代のマシンに乗ると、現行の2気筒勢は突き抜け感が少ないと感じてしまう。250という入りやすいクラスだからこそ、デザインも機能も本気のものを作ってほしい。パッと見て「カッコイイ」とか「スゴそう」っていう思える存在感があって、でもそれが手頃な車重やサイズであることが大事。リッタースーパースポーツやビッグアドベンチャーももちろんいいんだけど、250の中にもフラッグシップがあれば、もっともっとバイクに乗りたいって人が増えると思う。

伊丹:新型ZX-25Rは、まさにその可能性を秘めていますね。デザインはスポーティで、音は刺激的で、所有感をくすぐる電子デバイスも満載。欲しいモノが250の中に詰まっていることの意味は大きいですね。

【KAWASAKI ZXR250】

丸山:ZXR250を今の技術で作るわけだから、エンジンの下はもっとフレキシブルで、上もきれいに回るはず。電子制御で街中やサーキットによってキャラクターを変えることも可能だろうし、すごく楽しみが広がる。Ninja250でフルカウル&セパハンのスポーツバイクが復活してから、ちょうど時代がひと回りしたわけで、今回の4気筒の登場は、次の段階へ進む上で絶好のタイミングになると思う。

伊丹:カワサキが作ったバイク文化やブームは多いですが、ZX-25Rもそのひとつになりそうですね。個人的には、そのエンジンを搭載したビモータも見てみたいです。

丸山:いずれにしても楽しみしかないので、正式発表に期待しよう‼

着々と近づく新ニーゴー4気筒の正式発表。これまで幾度となく歴史を動かしてきたカワサキが、またまた新たなムーブメントを巻き起こす⁉

NSR専門誌プロスペック編集長の全開インプレ「内燃機関のお祭り騒ぎだ!」

とにかく、1万6000rpmから上で炸裂するエンジン音がスゲエ。股下から発せられるギャイィーン!という高周波サウンドは、もう絶叫というか悲鳴というか(笑)。しかもZXR250はそれ以外の回転域でもエンジンが賑やかで、例えば6速80km/h(≒8000rpm)からスロットルを開けると、キューンというメカノイズにホワァーンと吸気音が重なり、スロットルを戻すとヒュオーッ。回転数やアクセル開度で七変化するこれらの音は、排気音というよりはエンジン本体から爆散されまくるノイズ、といった印象で、昨今のサラッと静かな車両に馴染んでいると、その野蛮さにニヤニヤしてしまう。 1速は1万rpmで約40km/h、レッドゾーンまで引っ張っても約70km/hと速さは大したことないので、街中でもキビキビ走るには1万rpm以上をキープしたいが、それをやるとまぁ騒々しい。1速で丁寧にクラッチを繋げばアクセルを開けずに発進できるし、6速20km/hからジワ~ッと加速できる柔軟性もあるけど、実用性ならNinja250の方がはるかに上。でも、そこを割り切れる人には……最高のオモチャです!

カワサキ ZXR250

【松田大樹】NSR250R好きをこじらせた挙げ句、「プロスペック」というNSR専門誌(←2冊出てます)まで立ち上げた本誌編集部員44歳。当時のレプリカは何でも好きです。

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