現役引退後もツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる世界GPチャンピオン・原田哲也さんが、かねてから念願だったトライアルにチャレンジ。トライアル選手として実績のある本多元治さんのプライベートレッスンを受け、しっかりと基本を学んだ。
●文:高橋剛 ●写真:長谷川徹 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
スタンディングスティル:まずはトライアルの基本テクニックから
【スタンディングスティルとは?】バイクに乗ったまま静止するワザ。ハンドルでバランスを取りたくなってしまうが、それよりも実はステップワークが重要。ステップ上で自由に足を動かせるかどうかが成否の分かれ目。
「ん〜、できないと思うけどな〜」
そう言いながら、ホンダのトライアルマシンRTL300Rにまたがった原田哲也さんは、ひょいっとスタンディングスティルを決めてしまった。バイクに乗ったまま完全に静止するという、トライアルの基本テクニックだ。
基本とはいえ、まったくもって簡単ではない。トライアルマシンはタイヤの空気圧が極端に低いなど、独特なセッティングになっているが、2輪しかない乗り物を支えなしで静止させるのは難しいことだ。
それを、あっさりとこなしてしまった原田さん。
「…す、すごい!!」
先生である本多元治さんが、本気で驚いている。数多くのトライアルレッスンをこなし、多くの生徒たちに教えている本多さんからしても、「こんなにあっさりとスタンディングスティルができる人は見たことがない」とのことだった。
ずっと「トライアルをやってみたい」という思いを持っていた原田さん。今や親友のロリス・カピロッシに連れられてイタリアの山中を走ったことはあるが、競技としてのトライアルは未経験だった。
今回、トライアル選手として実績のある本多さんにようやくプライベートレッスンをつけてもらえることになった。「トラクションや荷重のかけ方を教えてほしい。トライアル選手は抜群に上手いから」と積極的な原田さんに対して、「世界チャンピオンに教えるだなんて、そんな…」と、本多さんはタジタジだった。
そこへきて、いきなりのスタンディングスティル。国際A級クラスで全日本チャンピオンになったこともある本多さんも、「ホントに信じられないですよ……」と言葉を失う。
「原田さんのスタンディングスティルを見ていてすぐに気付くのは、左右ステップの上ですごく上手に足を動かせていること。普通、最初のうちはデーンとステップに足を乗せるだけ。そう簡単に動かせるものじゃないんです。
それができるのも、体の軸がぶれないから。バランス感覚が優れていることはもちろんですが、体幹もスゴイ。そしてバイクのどこにどう乗ればいいのかを分かっているんです。当たり前ですが、世界チャンピオンってやっぱりハンパないんですね…(笑)」
当の原田さんは、「うーん、そうかなぁ」と言いつつ、黙々とスタンディングスティルを続けている。
「去年、ツインリンクもてぎでトライアル世界選手権を観戦したけど、トライアル選手ってバイクのコントロールが一番上手だと改めて思ったよ。
全身を使って、自分からトラクションや荷重を作り出して行くのがトライアル選手。スピードが出ない分ごまかしが効かないんだよね」
トライアルと言うと、とんでもない高さでそそり立つ岩を登ったり、あり得ないようなアクションで難セクションをクリアしていくイメージがある。それらのベースになっているのが原田さんの言うトラクションや荷重だ。
後輪の駆動力を最大限に生かし、前進する力に変えるトラクション。サスペンションの動きを有効活用して荷重をかけ、タイヤのグリップを引き出す。これらを組み合わせることで、ハデなアクションが可能になるのだ。
これがトライアルマシンだ!
さすがは世界GPチャンピオンの原田さん。初めてのトライアル挑戦にもかかわらず、いともあっさりと基本のスタンディングスティルをキメてしまった。次ページでは、これまた基本型の「後輪8の字」と「フロントアップ」に挑戦する。
繊細な操作と体の使い方はロードにも確実に役立つ (前ページより続く) レッスンの舞台となった埼玉里山トライアルエリアには、岩やタイヤなど、「ザ・トライアル」とでも呼びたくなるようなセクションも用意され[…]
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