250cc4気筒マシン。かつては、「速いのは音だけじゃないか」と揶揄された。でも、今こそ胸を張ろう。「音だけ速ければ十分だ!」と。30年を経て、時代がようやく追いついたのだ。カワサキ Ninja ZX-25Rは、これからのスポーツバイクの道標だ。
文:高橋 剛 ●写真:鶴身 健/真弓悟史 ●CG構成:白圡 学 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
まさか、こんなに人気だったのか…!?
’19東京モーターショーにカワサキ Ninja ZX-25Rが登場して以降、250cc4気筒人気が猛烈な勢いで再燃している。
再燃…? だがそもそも、かつてこのカテゴリーは”燃えて”いたのだろうか?
250ccスポーツバイクが熱かったあの時代、主役は2ストのレーサーレプリカだった。技術も注目も人気も、2ストレプリカに集まっていた。
そんな中で、4スト4気筒は明らかに脇役だった。「エンジンがヒュンヒュンと回るのはすごいけど…、だから何なの?」と、少し引いたところから、少し冷めた目で見られていた。
主立ったレースがなかったから? 世界グランプリに2スト250ccは走っていたけれど、4スト4気筒は走っていなかったから? 理由のひとつかもしれない。でも、それだけじゃない。
オレたちは、ガチだったのだ。正確に言えば、ガチ過ぎだった。ガチで速さを追い求めていた。「だから何なの?」の後には、言葉にせずとも「さほど速くはないんだし」と続いたはずだ。
ガチなことは、決して悪くない。本気の速さを追い求めるからこそ、技術が向上する。技術者が磨かれる。ユーザーであるオレたちにとっても、何らかのかたちで恩恵がある。
しかもあの時代は、ガチであることが当たり前だった。サーキットと公道は密につながっていて、良くも悪くも勢いがあり、熱かった。
意味も意義も考える必要などどこにもなかった。ただシンプルに、「速いことはエライこと」だった。
だから、さほど速くなかった250cc4スト4気筒は、主役にはなれなかった。2万回転に届こうとする超高回転を達成していながらも、それがガチの速さに結びついていない、と感じられていたのだ。
だが、時代は変わった。世界はすっかり賢くなって、物事を考えるようになった。
本当にガチが必要なのか?
ラップタイムがコンマ数秒、最高速が数km/h速いバイクが、果たして本当に「いいバイク」なのか…?
そこに再び250cc4気筒が登場し、炎を上げた。
これは”再燃”ではない。新しい炎だ。
30年の時を超えて
ようやく時代が追いついた。
ZX-25Rは、騒がしい自分の周辺をクールに眺めながら、ZXR250にそう語りかける。
ガチの速さが本当に必要なのかを考える時代。自分たちの身の丈にあった性能を求める時代。無理なく楽しめるバイクを望む時代。そして、本当の意味で「いいもの」を愛でる時代。
それが、今だ。250cc4気筒のZX-25Rが、今、すべてを叶える。
ガチの速さは、きっとこのバイクにはないだろう。規制やらコストやら、あるいは社会の目やら、現実的な制約がこのバイクにはのしかかっている。それが現代に生まれるバイクの宿命だ。
しかも、はっきり言えば、しょせんは250ccなのだ。ラップタイムなんて、たかが知れている。ガチで速いリッタースーパースポーツ勢とは比べるべくもないだろう。
けれど、それでいい。
いや、それがいい。
消去法じゃない。積極的に、250cc4気筒がいい。
ZX-25Rには、(おそらく)気持ちよく回るエンジンと、気持ちいいエキゾーストノートがある。(確実に)最新のエクイップメントがある。
そして、ラップタイムがガチのスーパースポーツには敵わないとしても、値段は(おそらく)半分以下だ。それなのに、楽しみは倍だ。
250ccのZX-25Rは、気兼ねなくアクセルを開けられるだろう。そして、爽快なエンジン音に包まれるだろう。待っているのは、おびえる必要のないスポーツライディングだ。走らせてナンボのバイクを、思いっ切り走らせられるという喜びだ。
ZX-25Rは、間違いなく高性能だ。でも、手のひらに収まる。手が届く今の時代を生きるオレたちの、本当の意味でのスポーツバイク。
バイクは、オレたちにとって趣味だ。命を懸けるものじゃなく、人生を豊かにする遊びのひとつだ。そして、本気の遊びは、ZX-25Rのように、洒落の効いた存在であるべきなのだ。
主役を張るだけの力。そして時代の後押し。燃え盛れ、新しい炎。
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