一時は撤退を考えたが残留を決定。最北端の地で初日の出を祝うイベントに参加のため出発するが天候は暴風雪でホワイトアウト。そして人生でもっとも長く過酷な一日になるとは予想すらしていませんでした。
●寄稿: 野間 恒毅(Tsunetake Noma) ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
今回初めての年越し宗谷岬チャレンジ。あまり欲張らず、リスクを抑えるためにバイク2台をトランポ(ステップワゴン)に積み大洗から苫小牧までフェリーを利用、雪のある富良野まで移動。そこからバイクを出して自走[…]
初日の出 in てっぺん
元旦の朝3:30起床。実は眠れなかったため徹夜である。遠足が楽しみすぎで寝れない子供のようだが、実際には真逆で不安で不安で仕方なかったからである。起きだして外をみると雪はおさまり、穏やかに見えた。しかしいざ外へ出てみると雪は舞い風は強かった。しかし今更後悔も、計画変更もない。ただ宗谷岬を目指すのみ。
前後合わせて550本のスパイクピンは健在だ、カリッカリのアイスバーンでもアクセルさえあければ引っ掻いてトラクションに変えてくれる。しかし風は強く、特に横風では不安定さは隠せない。この日の暴風は大陸からの東風。稚内からしばらくは追い風で吹きすさぶ雪とともに移動するため比較的走りやすい。しかし宗谷岬に近づくにつれ道路は北を向き、東からの風は左側から車体を押しまくる。路面は完全なミラーバーンで正直怖い。
初日の出イベントに向かう地元車も多く、ペースの遅い我々は後続車に道を譲る。しかしこれもまた一苦労である。道の端は路面状態がよくないため、かえって転びそうになるからだ。
そんな緊張の中、夏なら30分で着く30kmの距離を1時間半をかけてなんとか宗谷岬に到着。気温はマイナス10度、風速15mの強風の中にも関わらずバイク、自動車が駐車場にぎっしり詰まって多くの人で賑わっていた。
念願の記念キーホルダーをゲット
地元稚内市が主催するイベント「初日の出 in てっぺん」の参加者には1000本限定で記念キーホルダーが配布される。まさに初日の出の瞬間に日本最北端の地、宗谷岬にいた証である。この日、この場所に来たのはこのキーホルダーが欲しかったからといっても過言ではない。マイナス10度で吹きすさぶ風に吹かれながら長蛇の列に並び、なんとか手に入れることができたので喜びもひとしおだ。
しかし残念というか、当然のことながら、ときおりホワイトアウトになる強風の中で初日の出を拝むことは無理であった。そのため早々に撤収である。
行きも怖いが、帰りは地獄
帰るまでが遠足ですとはよく言ったもので、風速15mオーバー、マイナス10度の極寒の宗谷岬を脱出開始するが、凍結路面に降り積もった粉雪と吹きつける強風をおそれ、当初予定していた来た道を戻る稚内ルートからオホーツク側を経由する浜頓別ルートへ変更。
しかし地獄の一丁目はここから。
オホーツクルートも状況がいいわけではない。ホワイトアウトにアイスバーンに積もる粉雪でグリップがこころもとない、更にウインドファームが設置される強風の海岸線ではエンジン不調に見舞われバイクはエンスト寸前、横風にあおられて横滑りを起こし何度も足をつくことに。
低速ながらもなんとかホワイトアウト区間を抜け、いい天気になったと安心したらお腹が空いており朝から何も食べてないことを思い出す。
北海道のコンビニチェーン「セイコマ」を発見し、食料補給してると再び強い雪と風、ホワイトアウトに見舞われてしまった。そう、ホワイトアウトに追いつかれてしまったのだ。
再びホワイトアウトと降り積もる雪にまみれながら走ると、やはりエンジンが不調である。だましだまし走るが、マフラーから黒煙を吹いているという。
そこに先日宗谷岬に来るときに素通りしたパーキングシェルターが見えてきたので緊急ピットイン。
エンジン不調でDNFの危機
実はミュルサンヌ奥津氏は全日本ジムカーナ選手権(四輪)やGT選手権で活動したプロのメカニックでもある。その奥津氏のアドバイスでプラグの予備があるなら交換した方がいいとのことでプラグを外してみるとプラグは真っ黒。
新品に交換後、一時は好調と思われたが、アイドリング調整してるとエンストし、エンジンの再始動ができなくなってしまった。連続してセルモーター使っていると今度はバッテリーが弱くなりクランキングできなくなってしまったので、急遽携帯型バッテリーブースターをつなぎジャンプ。
なんとか再始動、アイドリングも安定したのでスノーシェルターを出発する。しかし800mほど行ってすぐにエンストしてしまった。ここでセルを回すも再始動出来ず。しかも天候は降雪、ホワイトアウトに見舞われそうなので、Uターン。再びパーキングシェルターに押して戻ることにする。
来るときは一瞬だったが、バイクを押して戻るにはきつい距離である。しかも軽い上り坂、雪はつもり、路肩に寄りすぎると足元が悪く、かといって後続車を考えると中央にも寄れない。
息も絶え絶えでなんとかパーキングシェルターまで戻ったが、疲労困憊に汗だく。しばらく座り込んで立ち上がれない。このままエンジンがかからない場合はロードサービスを呼ぶしかなく途中リタイア、DNF(Do Not Finish)が頭の中にちらつく。
ここでミュルサンヌ奥津氏がプロのメカニックの本領を発揮。手際よくキャブ、エアクリーナーを分解、燃料系統をチェックしていく。エンジンがかかってもなかなか吹け上がらず、マフラーからは黒煙が出ている。排気音もおかしい。
最終的に燃料がキャブにきてないと診断、燃料コックをリザーブに回して再始動することができた。つまりこの時点での原因はいわゆる「ガス欠」だが、それに至った経緯はこうだ。
前々日からその兆候はあったが、低気温での連続走行ですっかり冷却されたキャブが「アイシング現象」を発生、エンジン不調になってエンスト。プラグ交換で一時は治ったようにみえたが、アイドリング調整で停止している間にガス欠、ガソリンがこないためにエンストしたという経緯である。
リザーブに切り替えるときはだいたい4L消費しているが、この時の走行距離はたったの
75km。通常30km/L以上走り、前日は37km/Lも走ったFTRだったがこの日の燃費は20km/L以下と通常の2/3以下、前日の約半分まで落ちていたのだった。この日は路面状況が悪く、低速高回転を多用しての走行を続けた結果、燃費が大幅に悪化したようだ。
見つからないガソリンスタンド、ガス欠でDNFの危機
携行缶からガソリンを3L補充し再スタート、まずは浜頓別のガソリンスタンドに向かう。しかし本日は元旦で浜頓別のガソリンスタンドはすべて休業。Twitter情報では本日の宿泊地、名寄まで営業しているガソリンスタンドはない、という。
そして降り続ける雪、強い風とホワイトアウトに怯えながら休む間もなく先を急ぐ。エンジンは再びアイシングで不調、ポコポコして吹け上がらない。
アイシングとはキャブのガソリンに混じった水分が凍結し詰まる現象で走行中に付着した雪とキャブが冷やされて起きる。この対策に事前にキャブヒーターをつけたのだが、なんらかの原因で動作していないようだ。急遽キャブにカイロや断熱材を巻きつけエンジンを騙し騙し走り続ける。
ミュルサンヌ奥津氏の燃費のいいトリッカーもついにガソリン警告灯が点滅、道の駅にて携行缶1Lを給油した。同じタイミングでFTRにも追加で1Lを補給。目的地名寄まではまだ距離があるが、これで果たしてたどり着けるのだろうか?
ますます強まる雪、豪雪警報もでて、道の駅でトイレに行って帰ってくるだけで消えるタイヤの跡。先を急がないと積雪でスタック、先に進めなくなる恐れもある。
孤独と闇とガタガタアイスバーン、転倒DNFの危機
急いで残る峠を越えるも深く積もる雪で足元は重くペースは上がらない。途中ガス欠ストップを恐れて最後の区間、自動車専用道路を避けて一般道を行ったが、結果的には裏目に出てさらに路面状態は悪化。というのも一般道のこの区間は交通量が少ないために除雪はあまりされておらず、これまでにないくらいガタガタの轍のまま凍結した上に新雪が積もった最も走りにくい路面なのだ。スパイクピンがアイスバーンに届かないため前後タイヤがバラバラで滑り出し、轍の凸凹でハンドルがとられて何度も転倒寸前の状況が20kmも続いた。
途中闇の中にハザードを出してとまっているレッカー車を発見。その荷台の上には宗谷岬でも圧倒的シェアを誇り信頼と安定のカブが回収されており明日は我が身か、いや今日か。
真っ暗な闇夜、そしてヘッドライトに照らされる白い路面。新雪を苦手とするデュアルパーパスタイヤをはくミュルサンヌ奥津氏のトリッカーのペースがあがらず距離が離れる。
そしてインカムの電池は切れ会話不能。それもそのはず、朝4:30から使っており、もうかれこれ12時間は使っているのだからそりゃ電池も切れるというものだが、もちろんBluetoothも切れたのでスマホの音楽もナビの音声ガイドもなくなって聞こえるのは不調なエンジン音と風切り音だけ。孤独感は最高潮。
徹夜で寝不足のため、電熱インナージャケットのほんわかした温かみで夢の中へ逝きそうになる。
寝ちゃダメだ、寝ちゃダメだ。
ヘルメットの中で一人アニソンヒットメドレーを歌い上げ、眠気を覚ます。
行けばゆくほど路面は悪くなり、転倒DNFが頭の中をよぎる。ペースは落ちざるを得ないがそうするとさらに燃費は悪化していく。
最後の峠を越えてようやく名寄市街に入ろうというホテル迄残り3kmのところでついにエンジンストップ、無念のガス欠である。しかし残していた最後の携行缶1Lを最後の気力と体力をふり絞って補給し、なんとか無事ホテルに辿り着くことができた。
寝不足と疲労困憊、緊張の糸が切れたため夕食のジンギスカンを食べたあとはまさに「バタンキュー」。二人して落ちてしまったほどだった。
まさにエクストラハードな一日、これまでの人生の中でもっとも過酷な元旦だったといっていいだろう。
(つづく)
バイクでの走行最終日は名寄からベースキャンプ富良野への移動のみ。すでに一回通った道のりなのでラクかと思いきやさにあらず。ここ数日の降雪で凍結路面のうえにたっぷりと雪が降り積もって滑りやすく、ペースはな[…]
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