2020年2月14日の発売も目前に控え、メディア向け試乗会の模様もお届けしたが、読者も我々も気になっているのはADV150が軽二輪のみの単一ラインナップという点だ。兄弟車のPCXは原付二種と軽二輪の両方を揃えているのだが……。これについて、試乗会場で関係者に聞いてみた。
昨秋の東京モーターショーで国内初登場したADV150は、その少し前の夏にインドネシアで先行発表され、今までにないジャストサイズの冒険スクーターとして話題に。日本でも動向が注視されるなか東京でお披露目さ[…]
すでにとても充実しているホンダ原付二種のラインナップ
まずADV150の情報について整理しておこう。2019年夏、最初に発表されたのはインドネシア仕様で、これは製造もインドネシア。そして同年10月の東京モーターショーで発表されたのはタイ生産モデルで、日本での“市販予定車”として展示された。
車両のベースとなっているのはホンダの大人気スクーター・PCXで、これの150cc版を大胆にモディファイしてつくり上げられている。とはいうものの、構成パーツの大部分は新作であり、実際に乗ってみても全く別のバイクだと感じられたものだった。
では、なぜ(少なくとも現時点では)150cc版のみの発売となったのか。これについては我々編集部でも少し気になっていたほか、Webを中心に「125ccだったら買うのに」という声もあったので、ぜひホンダに聞いてみたかったのだ。
答えは明快だった。まず、ADV150の主要マーケットと位置付けられているインドネシアやタイをはじめとしたアジア圏では、制度の関係上125ccがそれほど重要ではなく、現在人気のカテゴリーが150ccクラスなのだ。インドではPCX150ハイブリッドという日本にはない仕様が販売され、タイではヤマハXSR155が発売されて日本でも大きな話題となった。
ただし、150cc版のみの登場となったのは、アジア人気だけが理由ではないようである。日本においても、たしかにこのところ原付二種マーケットは飛躍的な伸びを見せており、国内出荷台数ではついに原付一種を上回っていることも確か。しかしADV125(仮)の投入は現時点でさほど重要ではなく、ADV150で軽二輪カテゴリーを盛り上げることが先決という判断だったのだ。
その理由についてホンダ関係者は「日本におけるホンダの原付二種スクーターのラインナップはディオ110、リード125、PCX(125)、さらにはPCX、同ハイブリッドと、価格帯別に車両が揃っているので、ここにADVを125cc化して投入することがマストとは言えなかった」と語る。確かにスクーターでいえば、もっともリーズナブルなディオ110は23万5400円、PCXハイブリッドは44万円となっているほか、マニュアルミッション車やビジネスバイクまで含めれば23万5400円~45万6500円の幅で、なんと13機種ものラインナップとなっている(法人向けやレーサー除く)。さらには、2020年6月にもCT125ハンターカブが発売されることが確実視されている。ここにADV125(仮)をリリースしたとしても、確かにやや多すぎる取り揃えという感じは否めないだろう。
また一方で、日本の軽二輪クラスでは“リーズナブルかつ趣味性の高いスクーター”というポジションが手薄になっていることも理由のひとつ。現状でホンダがラインナップしているのはPCX150(38万600円~)とフォルツァ(65万8900円)の2車のみ。ADV150の発売によって軽二輪スクーターカテゴリーを活性化させたい狙いがあるわけだ。
ホンダが「ADV125(仮)」をつくる可能性はある?
ただし当然ではあるが、今後も永久にADV125(仮)が発売されないと決まったわけではない。ADV150が大人気となり、欧州や日本で登場を望む声が高まっていけば、125cc版が登場する可能性も十分に考えられるだろう。
イタリアでは現在、長年にわたってトップセラーだったTMAXよりも、ADV150の兄貴分にあたるX-ADVのほうが売れている。また、イタルジェットの「ドラッグスター125/200」のように125ccと軽二輪クラスが2本立てになっているスクーターも人気に火が点きそう。こうした実用一辺倒ではないスクーターが市場を活性化すれば、ADV125(仮)の登場も近づいてくるはずだ。
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