マイナス10度、風速15m、ホワイトアウト、凍結路。過酷な年越し宗谷岬体験記

日本最北端へ! アラフィフ親父の極寒バイク旅 第2回「今年一番の暴風雪予報に計画変更の連続」

直前まで慌ただしく準備を行いさあ出発、となった前日。天気予報は大晦日から元旦にかけてこの冬一番の大荒れ、暴風雪で風速は20mを越えるとのこと。果たして無事宗谷岬にたどり着けるのでしょうか?


●寄稿: 野間 恒毅(Tsunetake Noma) ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

大洗フェリーターミナルに着くと、そこには何台ものバイクが。そう彼らもこれから宗谷岬に向かう同志たちだ、自然と心が躍る。バイクが集まっているのはまるで夏の北海道にいくのと同じような光景、しかし大きく違うのはスパイクタイヤを装着している点だろう。

苫小牧につくとそこは黒の大地。路面にはまるで雪がない。今年は札幌で雪のないクリスマスを迎えたほどの暖冬で、まさか年末年始が大荒れの暴風雪になるとは思えないほど雪は皆無である。フェリーを降りて最初の宿泊地、富良野に向かうと途中から雪が舞ってきて、占冠から先は凍結路、そして富良野は完全に雪に覆われた白の大地。

占冠から富良野に向かうとそれまで乾燥路だったのが凍結路に変化。

当初の計画では31日大晦日に稚内に到着する予定だったが暴風雪予報のため1日前倒し、30日稚内に到着すべく富良野を出発、美瑛、旭川を経由し音威子府の手前の天塩川温泉に向かう。

人生初めてのバイクで雪道走行、初めてのスパイクタイヤ走行となる富良野。慎重にスタートする。路面はアイスバーンの上に昨晩降った雪が積もっておりグリップが安定しないものの、さすがは550本のスパイクピン。特に後輪はアクセルをあけるとトラクションがかかり、バイクが安定方向になる。しかし美瑛の丘を目指すと雪が深くなり、運転しにくく低速で走行せざるを得ない。

美瑛、北西の丘。美瑛周辺の積雪は多く、下が凍結路なのでとても滑りやすい。

その後旭川経由で士別に向かうと路面は半分乾燥路、そしてところどころ黒くなっているところがいわゆるブラックバーンでよくみると凍っている。雪が積もってない方がスパイクピンが効き、ブラックバーンでもむしろ走りやすいのは意外であった。そのため巡航速度も法定速度まで上がり、順調である。

おっかなびっくり、初めての雪道走行

天塩川温泉に宿泊し、翌朝宗谷岬に向かう。音威子府から浜頓別まではアイスバーンが続くも走りやすく、今回の旅程のなかで唯一太陽が出ていてとても気持ちがイイ。浜頓別からオホーツク海沿いの国道はほぼ乾燥路で、ペースも上向き、途中パーキングシェルターを通過、「ホワイトアウトの時はここに逃げ込めばいいのか」なんて呑気なことを言い合う。

パーキングシェルターとはスノーシェルターのようにトンネル状に屋根がついているパーキング施設でトイレと自販機が設置されている。これが設置してあるということは暴風雪が多くホワイトアウトしやすい場所ということでもあるから、天候に注意しなければならない区間だ。

宗谷岬までもうまもなく。路面は乾燥路からブラックバーンへ変化。

宗谷岬に近づくにつれ、いくつもの風力発電施設、ウインドファームが目に入る。すると当然のように風も吹き始め、路面も凍結路となり走りにくくなってくるがそこを抜け目的地である宗谷岬に無事に到着。これで第一目標である「無事に宗谷岬にたどりつくこと」はクリア。大学生のとき、ホンダAX-1で北海道ツーリングにきて以来32年ぶりの宗谷岬であった。

宗谷岬で唯一営業していたお土産屋さん。ここで「日本最北端到着証明書」を発行してもらえる。

北海道の昼は短い。特に冬は。

宗谷岬に到着し、その夜は稚内宿泊。ホテルには数十台のバイクがとまり、賑わいを見せている。こんなにも仲間がいるんだと心強い。しかしそこでは苦渋の決断に迫られていた。

稚内市内のホテル。バイクが20台以上集まり大賑わい。

年末年始の暴風雪予報は多少のずれはあるものの変わりがない。

撤退すべきか、留まるべきか?

露天風呂で一緒になった人は悪天候を見越し、翌日には旭川に移動するという。ツイッター上では行先を納沙布岬や大間に変更した人もみられた。同行するミュルサンヌ奥津氏とともに討議を重ねる。その結果、苦渋の決断として撤退を選択しFacebookにかいた。するとほどなく友人の三橋さんからDMが届いた。本物のダカールライダー・ドライバーの三橋淳さんである。

「こんな女子も宗谷目指してるのに(笑) 撤退するんだ(笑)」(原文ママ)

いやいやいや、その女子ってプロトライアルライダーの小玉絵里加さんじゃないですか。こっちはダートもろくすっぽ走ったことない、ヨチヨチ歩きの普通のおっさんですよ。とはいえここまでここまで言われて撤退するのも男がすたる。結論は次の日に持ち越し。

大晦日の朝。朝食会場にいるのは全員ライダー。みな撤退すべきか残留すべきか悩んでいる。撤退するなら天気が荒れていない今、遅くとも午前中しかない。天気予報、ホワイトアウト予報、ツイッターの現地情報などスマホを活用してありとあらゆる情報を集めるも、どれも暴風雪を示す。一縷の望みは雪は明日元旦にはやむとの情報だけだ。

大晦日の稚内駅。暴風雪とホワイトアウトで歩くのも大変。

その情報にかけて我々は残留を決定、ガソリン給油と宗谷岬の状況を下見するために軽くバイクを出す。しかし稚内周辺の路面は前日の季節外れの雨で溶けた雪が凍結してガタガタの轍となり、さらに予報通り暴風雪、ホワイトアウトがはじまりとてもじゃないが宗谷岬に下見にいける状況ではない。早々に宿に戻り明日の元旦に備えることにした。

夜も雪はしんしんと降り積もり、風は強いまま。

果たして元旦の朝、我々は宗谷岬にたどり着けるのだろうか?

(つづく)

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