マイナス10度、風速15m、ホワイトアウト、凍結路。過酷な年越し宗谷岬体験記

日本最北端へ! アラフィフ親父の極寒バイク旅 第2回「今年一番の暴風雪予報に計画変更の連続」

  • 2020/3/1
過酷な年越し宗谷岬体験記

直前まで慌ただしく準備を行いさあ出発、となった前日。天気予報は大晦日から元旦にかけてこの冬一番の大荒れ、暴風雪で風速は20mを越えるとのこと。果たして無事宗谷岬にたどり着けるのでしょうか?

●寄稿: 野間 恒毅(Tsunetake Noma)

今年最大の大荒れ予報でDNSか?

今回初めての年越し宗谷岬チャレンジ。あまり欲張らず、リスクを抑えるためにバイク2台をトランポ(ステップワゴン)に積み大洗から苫小牧までフェリーを利用、雪のある富良野まで移動。そこからバイクを出して自走する計画とした。また宿泊も基本はホテル泊とし、1日の移動距離も150km前後に抑えた。というのも事前情報でガソリンスタンドが三が日休業となるところが多く、ガソリンタンクが7Lと小さなFTR、トリッカーは長距離移動は難しいからだ。もちろん想定外のガス欠に備えて携行缶も持参。

ここまで準備したが、直前の天気予報では大晦日から元旦にかけてこの冬一番の大荒れ。風速20メートル以上の暴風雪予報である。これではフェリー代をかけていったとしてもすごすごと戻ることになりかねない。どうする? 今年はDNS(Do Not Start)で来年再チャレンジするか? 

ここまで1年弱かけて準備したわけなので、さすがに口惜しい、東京を出発直前1時間ほどミュルサンヌ奥津氏と討論し、出した結論。

「とりあえず宿泊予定は全部キャンセル、北海道にいって様子をみよう」

綿密に計画した行程はこの時点で白紙に戻った。

おっかなびっくり、初めての雪道走行

大洗フェリーターミナルに着くと、そこには何台ものバイクが。そう彼らもこれから宗谷岬に向かう同志たちだ、自然と心が躍る。バイクが集まっているのはまるで夏の北海道にいくのと同じような光景、しかし大きく違うのはスパイクタイヤを装着している点だろう。

苫小牧につくとそこは黒の大地。路面にはまるで雪がない。今年は札幌で雪のないクリスマスを迎えたほどの暖冬で、まさか年末年始が大荒れの暴風雪になるとは思えないほど雪は皆無である。フェリーを降りて最初の宿泊地、富良野に向かうと途中から雪が舞ってきて、占冠から先は凍結路、そして富良野は完全に雪に覆われた白の大地。

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占冠から富良野に向かうとそれまで乾燥路だったのが凍結路に変化。

当初の計画では31日大晦日に稚内に到着する予定だったが暴風雪予報のため1日前倒し、30日稚内に到着すべく富良野を出発、美瑛、旭川を経由し音威子府の手前の天塩川温泉に向かう。

人生初めてのバイクで雪道走行、初めてのスパイクタイヤ走行となる富良野。慎重にスタートする。路面はアイスバーンの上に昨晩降った雪が積もっておりグリップが安定しないものの、さすがは550本のスパイクピン。特に後輪はアクセルをあけるとトラクションがかかり、バイクが安定方向になる。しかし美瑛の丘を目指すと雪が深くなり、運転しにくく低速で走行せざるを得ない。

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美瑛、北西の丘。美瑛周辺の積雪は多く、下が凍結路なのでとても滑りやすい。

その後旭川経由で士別に向かうと路面は半分乾燥路、そしてところどころ黒くなっているところがいわゆるブラックバーンでよくみると凍っている。雪が積もってない方がスパイクピンが効き、ブラックバーンでもむしろ走りやすいのは意外であった。そのため巡航速度も法定速度まで上がり、順調である。

北海道の昼は短い。特に冬は。

冬至から1週間しか経っていない年末は1年でもっとも昼間が短い時期でもある。そのため日出は午前7時前後、そして日没は午後4時と9時間ほどしか日照がない。

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塩狩峠パーキングで休憩。マイナス気温の中で食べるカップヌードルは旨い。

安全を考えて日が出ている時間だけ移動する予定が、道の駅でカップラーメンを作って食べたり、地元の人と交流したり、カブの人と情報交換したりしていたら自然と時間が経ってしまい、日没を迎えてしまった。

夜間の雪道走行は昼間以上に気を遣う。

街灯がない北海道はまさに自分のライトの光頼み。夜になり再び降り始めた雪はライトの光を乱反射し、路面がよく見えない。なるほど、多くの挑戦者がバッテリーやジェネレーターの負担を気にしつつも補助灯をつける理由が理解できる。気温は冷え込みマイナス12度をマークし、一層寒さは厳しくなる。しかし電熱インナージャケットのスイッチを「強」にすればむしろ暖かく、耐えられないわけではなかった。

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天塩川温泉到着。気温はマイナス12度で、路面は積雪路。冷え切った身体は温泉で癒す。

待望の宗谷岬到着

天塩川温泉に宿泊し、翌朝宗谷岬に向かう。音威子府から浜頓別まではアイスバーンが続くも走りやすく、今回の旅程のなかで唯一太陽が出ていてとても気持ちがイイ。浜頓別からオホーツク海沿いの国道はほぼ乾燥路で、ペースも上向き、途中パーキングシェルターを通過、「ホワイトアウトの時はここに逃げ込めばいいのか」なんて呑気なことを言い合う。

パーキングシェルターとはスノーシェルターのようにトンネル状に屋根がついているパーキング施設でトイレと自販機が設置されている。これが設置してあるということは暴風雪が多くホワイトアウトしやすい場所ということでもあるから、天候に注意しなければならない区間だ。

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宗谷岬までもうまもなく。路面は乾燥路からブラックバーンへ変化。

宗谷岬に近づくにつれ、いくつもの風力発電施設、ウインドファームが目に入る。すると当然のように風も吹き始め、路面も凍結路となり走りにくくなってくるがそこを抜け目的地である宗谷岬に無事に到着。これで第一目標である「無事に宗谷岬にたどりつくこと」はクリア。大学生のとき、ホンダAX-1で北海道ツーリングにきて以来32年ぶりの宗谷岬であった。

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宗谷岬で唯一営業していたお土産屋さん。ここで「日本最北端到着証明書」を発行してもらえる。

年越し宗谷岬はオレたちのパリダカだ!

この年越し宗谷岬に旅立つ直前、ミュルサンヌ奥津氏に「カップヌードル」の差し入れがあった。漫画「ゆるキャン△」でもカレーカップヌードルを美味しそうに食べる描写があったが、我々世代としては「ハンガリアン民族」である。

このCMの舞台はパリダカールラリー。一人のライダーが「負けるもんか」と心の中でつぶやきながら無表情でカップラーメンをすするものである。

そう、ラーメン食べながら気づいた。年越し宗谷岬はオレたちのパリダカだったのだ。

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宗谷岬でも棒ラーメンをゆでる我々。オホーツク海を見ながら暖かい麺を食べるのは最高に美味しい。

普通ラリーは速さを競うけど、年越し宗谷岬はゴールと時間が決まっているだけで、スタート時間、スタート場所は自由。

砂漠の砂の代わりに雪が舞い、砂嵐はブリザードでホワイトアウトとしてやってくる。公道だけどちょっとした冒険。参加者はみんな仲間、競う相手は己自身と大自然。

しかしこの時はまだ大自然の本当の脅威を知らなかった。

撤退か残留か?

宗谷岬に到着し、その夜は稚内宿泊。ホテルには数十台のバイクがとまり、賑わいを見せている。こんなにも仲間がいるんだと心強い。しかしそこでは苦渋の決断に迫られていた。

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稚内市内のホテル。バイクが20台以上集まり大賑わい。

年末年始の暴風雪予報は多少のずれはあるものの変わりがない。

撤退すべきか、留まるべきか?

露天風呂で一緒になった人は悪天候を見越し、翌日には旭川に移動するという。ツイッター上では行先を納沙布岬や大間に変更した人もみられた。同行するミュルサンヌ奥津氏とともに討議を重ねる。その結果、苦渋の決断として撤退を選択しFacebookにかいた。するとほどなく友人の三橋さんからDMが届いた。本物のダカールライダー・ドライバーの三橋淳さんである。

「こんな女子も宗谷目指してるのに(笑) 撤退するんだ(笑)」(原文ママ)

いやいやいや、その女子ってプロトライアルライダーの小玉絵里加さんじゃないですか。こっちはダートもろくすっぽ走ったことない、ヨチヨチ歩きの普通のおっさんですよ。とはいえここまでここまで言われて撤退するのも男がすたる。結論は次の日に持ち越し。

大晦日の朝。朝食会場にいるのは全員ライダー。みな撤退すべきか残留すべきか悩んでいる。撤退するなら天気が荒れていない今、遅くとも午前中しかない。天気予報、ホワイトアウト予報、ツイッターの現地情報などスマホを活用してありとあらゆる情報を集めるも、どれも暴風雪を示す。一縷の望みは雪は明日元旦にはやむとの情報だけだ。

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大晦日の稚内駅。暴風雪とホワイトアウトで歩くのも大変。

その情報にかけて我々は残留を決定、ガソリン給油と宗谷岬の状況を下見するために軽くバイクを出す。しかし稚内周辺の路面は前日の季節外れの雨で溶けた雪が凍結してガタガタの轍となり、さらに予報通り暴風雪、ホワイトアウトがはじまりとてもじゃないが宗谷岬に下見にいける状況ではない。早々に宿に戻り明日の元旦に備えることにした。

夜も雪はしんしんと降り積もり、風は強いまま。

果たして元旦の朝、我々は宗谷岬にたどり着けるのだろうか?

(つづく)

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