東京都道路整備保全公社が2か所のバイク用駐車場に充電設備を備えた。家庭用と同じ100Vのコンセントがバイク用駐車場で使えるというだけのことだが、その背景には大きな課題が存在している。
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東京都は電動バイクの普及に力を入れている
今、東京都は電動バイクの普及促進事業を行っている。国(経済産業省)による購入補助金に加え、地方自治体としての購入助成制度を運用し、電動バイクの普及を目指しているのだ。これは、東京都が制定した環境基本都市計画(2016年3月)に基づく施策で、2030年までに都内の温室効果ガス排出量を2000年比で30%削減するというものだ。
ニュースキャスター時代には原付スクーター通勤をし、自民党時代にはオートバイ議員連盟にも所属していた小池百合子都知事が、クールジャパンよろしく〝ゼロエミバイク(ゼロエミッション・バイクの略)〞という一般受けしやすい呼称まで用意したのも、意気込みの現れと言えるだろう。今回、充電設備を実験的に設置したことも、この流れとともにある。
EVスクーターが抱える現状と課題
2018年7月に始まった普及促進事業だが、約1年半での申請件数はたったの32台(2019年末日まで)に留まっている。その要因はいくつもあるが、最たるものは、電動バイク(EVスクーター)という乗り物の使い方や価値(ベネフィット)が正しく認知されておらず、消費者マインドがまったく醸成されていないこと、さらには、本来はさしたる性能(ヤマハのE-ビーノで十分)やインフラ整備(100Vコンセントで十分)も必要ないはずなのに、やれ航続距離だ、動力性能だ、と要求性能ばかりを無駄に高められ、国産新車がほとんど出てこないことも要因。
しかも、某バラエティ番組では、E-ビーノが通常の使用では想定されないようなロングツーリングに使われ、「ヤバイよヤバイよ」とバッテリーが切れてから押して歩く様子を面白おかしく放送されてしまい、ネガティブな面ばかりが周知されているありさま。バイク乗りであればわかっているだろうが、どんなバイクにだって想定された使い方というものがあるのに、だ。
E-ビーノ(税抜21万9000円)は国(2.6万円)と東京都(8万円)の補助金を併用すれば、税抜11万3000円となり、ガソリンエンジンのビーノ(税抜18万5000円)よりも断然安く買える。自宅と駅の往復などラストワンマイルモビリティという本来の使い方であれば十分な価値があり、原付一種だから駅前の自転車等駐車場にも停められる(法律上は)。
EVスクーターの今後
さて、東京都道路整備保全公社がバイク駐車場に充電用100Vコンセントを設置したのは、ゼロエミバイクの普及うんぬんを抜きにしても、とても自然なことだ。EVスクーターの販売台数を見ても、しばらく利用者は増えないだろうが、それでも「安く買う」「停めている間に充電する」を実現している東京都には、普及への可能性が感じられる。
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