’20年、パニガーレ959が最新のフォルムをまとったLツイン「パニガーレV2」へと進化。前稿のスペック紹介に引き続き、本稿ではヤングマシンおなじみのテスター・丸山浩がさっそくスペイン・ヘレスサーキットへ飛び、試乗インプレッションをレポート。V4とV2、その違いはどこにあるのかをチェックした。
●試乗:丸山浩 ●まとめ:宮田健一 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最強の座はV4に譲っても、ドゥカティ定番のLツイン=90度Vツインのスーパーバイクは消えない! '20年、パニガーレ959が最新のフォルムをまとった「パニガーレV2」へと進化。新たなLツインフラッグシ[…]
扱いやすいアクセレーションと自由度の高いコーナリング
まずはライポジ確認から。試乗した車両はパフォーマンスキットが入っていたが、基本はノーマルと一緒。全体的にかなり戦闘的なポジションに仕上がりつつ、V4よりもそのスリムさが際立っていた。跨るとシートやステップがかなり後ろぎみなのが印象的。ただ、シートは前後の自由度が多めに取られており窮屈さはない。ハンドルバーに手を伸ばすと、959よりステアリング位置はアップしているというが、タレ角はそんなに付いていないもののキュッと絞り込まれたタイトな感じ。シートやステップと相まって、かなりの前傾姿勢となる。そして959パニガーレと同じだというタンクは、ヘリの部分にヒジを当てるとグリップを握る手よりも奥にキュッと絞り込むことができるのに加えて、タンク下のフレームやアンダーカウルがLツインになったぶん非常にスリムに。ライダーは身体を極限までコンパクトにまとめることができてレーシーだ。シート高は先代よりも10mm高くなった840mm。足着きとしては、両足指のつけ根が届くか届かないかといった感じになっている。
走り出してみると、第一印象は「軽い!」。パニガーレV2の車重は乾燥で176kg。片やV4は175kgと実はV2の方が1kg重い。それでもV2の方が軽く感じられる。なぜなら、パニガーレV4のものすごいパワー感とは対照的に、V2は安心してアクセルを開けていくことができるからだ。そしてハンドリングの素直さ。コース状況を見ながら、力まずともマシンを右に左に倒していけるコーナリングの楽しさがある。
パワーの塊のように思えるV4だが、従来は低速域に限って言えばツインの方が爆発トルクが荒々しく扱いにくい面があった。だが、それは排気量の大きかった1299パニガーレと比べての話。最高出力が214psのV4に対し、155psと控えめなV2ではあるが、穏やかなアクセレーションの中にもしっかりトルク感があり、各部の操作が敏感になりすぎず走ることができる。これが絶妙なバランスとなって下から上まで全域での扱いやすさを生み出しているのだ。
様子見だった最初の走行の後、2本目、3本目とコースに慣れてタイムを上げていくに連れて、V2とV4のキャラクターの違いはより浮き彫りになっていった。V2で最も感服させられたのは、思い通りに走行ラインを変えられる自由度の高さ。速さを求めるならパワーに勝るV4はたしかに有利だ。だが、そのパワーを使い切るに至るまで、ライダーにはそれなりの苦労を乗り越えるストイックさが求められる。V4ではブレーキングからコーナーへの進入、そして立ち上がりまで、狙えるラインは1本だけ。目を三角にしながらコースを何度も走ってきっちりと覚え、寸分違わずバシッと決められたときにようやくその真価を発揮できる。だから、初めて走るサーキットでタイムを出すのはなかなかに難しいはずだ。
一方のV2は、スロットルを開けていても閉じていてもラインの修正が利く。コーナーリング中に失速気味でラインを外しそうだなと感じてスロットルを開けても、マシンが起き上がるのではなく寝たままできれいにススーっと回復。初めてのコースでも楽しく覚えながら、タイムが上がっていくのを実感できる感じだ。
V2で上達していった先にV4が待っている
走り終え、改めてパニガーレV2を評価すると、パニガーレV4が技術的にもパフォーマンス的にもスーパーバイクの頂点を目指した存在であるのに対し、V2はLツインの持つファンライドな部分をサーキットに合わせ込んだマシンだと言えるだろう。どこのサーキット走行会に出かけても、朝のウォームアップから楽しみながらコースを攻略していくことができ、いい汗を流した充実感とともに一日が終わる。そんな体験を与えてくれる。V4のカッコよさには憧れていても、あそこまでのパフォーマンスは持て余しそうと考えていた人にもピッタリだろう。V2で上達していって、もっとパワーが欲しくなってくる、そんな段階に到達したら、ちゃんとV4が待っているのだから。
サーキット以外はどうかというと、さすがにロングツーリングをするにはちょっと厳しいライディングポジションだ。だが、サスペンションを柔らかめに調整すれば、デイパックひとつで近場の見晴らしのいいワインディングにちょっと走りに行くといった楽しみ方には応えてくれるだろう。そもそもドゥカティには、その名も「スーパースポーツ」というLツイン937㏄のマシンがあって、そちらは110psとパニガーレV2よりさらに控えめな馬力ながら、気持ちよく峠のワインディングを走るには最適で、私もお気に入りだった。ただ、ドゥカティとしてはこれだけでは飽き足らなかったのだろう。パニガーレV2は、Lツインのスポーツ性をサーキットという場でとことんまで堪能させてくれる魅力的な1台と言えるだろう。
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