暗闇に遠くから幾多の光芒が射す。あるものは一際強い光を放って過ぎ去り、あるものは留まり今も輝き続ける。――過去半世紀に及ぶ二輪史において、数々の革新的な技術と機構が生み出された。定着せず消えていった技術もあれば、以降の時代を一変させ、現代にまで残る技術もある。しかし、その全てが、エンジニアのひらめきと情熱と努力の結晶であることに疑いはない。二輪車の「初」を切り拓き、偉大なる足跡を残した車両を年代順に紐解いていく。
※本稿で取り挙げる「初」は、“公道走行可能な量産二輪市販車”としての「初」を意味します。また、「初」の定義には諸説ある場合があります。
- 1 世界初スーパースポーツ&BTL「伝説の始祖となる、真打ちV4登場」HONDA VF750F[1983]
- 2 「発展形はカムギアトレーン搭載」HONDA VFR750F[1988]
- 3 バリエーション
- 4 世界初可変バルブ機構「レースを視野に入れた“R”」HONDA CBR400F[1983]
- 5 世界初アルミフレーム/国内初セパハン「レプリカ戦国時代の幕を開けた」SUZUKI RG250Γ[1983]
- 6 世界初250cc水冷直4「4ストでクラス最高の36馬力を達成」SUZUKI GS250FW[1983]
- 7 「空冷は’70年代に登場」Benelli 250Quatro[1975]
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世界初スーパースポーツ&BTL「伝説の始祖となる、真打ちV4登場」HONDA VF750F[1983]
スポーツ車へのV4採用を望む声は多く、ついに’83年、V4初のスーパースポーツ「F」が発売される。スラント型VDキャブの採用によりエンジン搭載角を起こしてコンパクト化を実現。上下分割ラジエターやチェーン駆動、ビキニカウルも投入した。さらに急激なエンブレを緩和して後輪のホッピングを防ぐBTLと、スチール角断面フレームも世界初採用だ。後に耐久レーサーRVF750Rのベースとなり、世界で猛威を奮うことになる。
「発展形はカムギアトレーン搭載」HONDA VFR750F[1988]
第2世代は、VF1000Rが初採用したカムギアトレーンを獲得。ヘッドを小型化すると同時にストレートポート化し、海外仕様で100psを発生した。アルミフレームも導入し、上質ツアラー路線を歩んだ。
バリエーション
400仕様のV4も初登場。クラストップの最高出力を発揮し、750と異なる丸断面パイプフレームに搭載した。’84〜’85鈴鹿4耐も連覇。
海外では1000が最高峰モデル。750より大型のハーフカウルを備え、フロントに16インチを履く。BTLは非採用。ホンダはV4大攻勢を始め、VF-Fには500や700もラインナップする。
フルカウルを備えたツアラーで、ペットネームは伝統のボルドール。1枚レンズのデュアルヘッドライトが特徴だ。
世界初可変バルブ機構「レースを視野に入れた“R”」HONDA CBR400F[1983]
’80年代に入ると、TT-F3など市販車レースの人気が出てきた。そこでCBX400Fを上回る高性能マシンとして本作を開発。CBXベースの空冷直4は低回転で2バルブ、高回転で4バルブに変化する可変バルブ機構=REVを2輪初導入し、当時ダントツの58psを発生。角パイプ鉄フレームやライト下オイルクーラーも独特だ。最初にCBRの名を冠したモデルでもある。
ノーマル登場の半年後、2灯式ハロゲンヘッドライトにハーフ&アンダーカウル付きが追加。その名の通り耐久マシンのイメージだ。
エンデュランスにフルカウルを装備した1代限りの特別仕様。’85では集合管を採用。シングルシートが標準のフォーミュラ3も追加した。
世界初アルミフレーム/国内初セパハン「レプリカ戦国時代の幕を開けた」SUZUKI RG250Γ[1983]
憧れのレーシングマシンに酷似し、公道走行まで可能なレーサーレプリカ。その本格第1号がRG250Γだ。レース、市販車の両面で活躍する開発責任者、横内悦夫氏が指揮を執り、軽量&高剛性なアルミフレームを市販車初採用。フレームマウントの大型カウルや、ついに国内で認可が降りたセパレートハンドルを与え、流行のF16インチ、サイレンサー別体チャンバーも投入。’81〜’82WGPのライダー&メーカー部門を連覇したRG-Γの名を受け継ぐ通り、レーサーそのままのスタイルとメカは前代未聞だった。こうしてΓはわずか1年で3万台の大ヒットを記録する。
2スト水冷パラツインも新作で、クラス最強の45psをマーク。車体はRZより軽い131㎏で抜群に戦闘力が高かった。RZが火を点けたレプリカ人気は、Γ以降、空前の大ブームとなっていく。
世界初250cc水冷直4「4ストでクラス最高の36馬力を達成」SUZUKI GS250FW[1983]
VツインのVT250Fを打倒するため、250㏄で世界初の水冷直4を搭載。VTや2ストのRZ250を1ps上回る36psをマークした。車体は、角型の鉄フレームやアンチノーズ機構付きのF16インチが特徴。’84年に2psアップしたが、ライバルに押され、殿堂入りした。
「空冷は’70年代に登場」Benelli 250Quatro[1975]
世界初の250㏄直4は空冷で、モトグッチ傘下のベネリが発売。軽量なボディと独特な味わいで好事家に愛された。モトグッチから姉妹車も併売。
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