世界初&国産初のエポック車を一挙掲載 #08

はじまりはツアラーだった「世界初水冷V4マシンほか」~時代を切り拓いた革新のマシンたち~[1965-1984]

時代を切り拓いた革新のマシンたち

暗闇に遠くから幾多の光芒が射す。あるものは一際強い光を放って過ぎ去り、あるものは留まり今も輝き続ける。――過去半世紀に及ぶ二輪史において、数々の革新的な技術と機構が生み出された。定着せず消えていった技術もあれば、以降の時代を一変させ、現代にまで残る技術もある。しかし、その全てが、エンジニアのひらめきと情熱と努力の結晶であることに疑いはない。二輪車の「初」を切り拓き、偉大なる足跡を残した車両を年代順に紐解いていく。

※本稿で取り挙げる「初」は、“公道走行可能な量産二輪市販車”としての「初」を意味します。また、「初」の定義には諸説ある場合があります。

世界初水冷V4「まずは高級ツアラーで発進」HONDA VF750Sabre/VF750Magna[1982]

2スト全盛の’79年、ホンダはWGPに4ストV4のNR500を投入。この技術を活かし、市販車初の水冷V4マシン=VF750セイバーと同マグナが同時リリースされた。90度Vは低振動で車幅をスリムにでき、高回転化に有利などのメリットを持つが、スポーツ車ではなく、まずは高級ツアラーとして送り出された。なお油圧クラッチも世界初採用だった。

時代を切り拓いた革新のマシンたち
【HONDA VF750Sabre[1982]■車重224kg(乾) 水冷4ストV型4気筒DOHC4バルブ 748cc 72ps/9500rpm 6.1kg-m/7500rpm F=110/90-18 R=130/90-17■当時価格:69万5000円
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ともに駆動方式はシャフト。リヤにセイバーはプロリンクサス、クルーザーのマグナは2本サスを備えた。
【HONDA VF750 Magna [1982]】 ■車重219kg(乾) 水冷4ストV型4気筒DOHC4バルブ
748cc 72ps 6.1kg-m■当時価格:67万円

「Vブースト炸裂、鬼加速&145psの魔神」YAMAHA V-MAX[1985]

ホンダのV4から3年後、ヤマハは北米市場を徹底的に研究し、ドラッグレーサー風のコンセプトを持つV-MAXを世に送り出した。ベンチャーロイヤル譲りの水冷V4は、驚異の145psを叩き出し、最高速240㎞/h、ゼロヨン10.3秒(ヤマハ社内データ)を記録。この加速力を実現したのがVブースト機構だ。高回転域で1気筒あたりツインキャブレターとし、大馬力を引き出した。

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YAMAHA V-MAX[1985]】■車重254kg(乾) 水冷4ストV型4気筒DOHC4バルブ 1198cc 145ps/9000rpm 12.4kg-m/7500rpm F=110/90-18 R=150/90-15■輸出車
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6000rpm以降で前後キャブのマニホールド間に設けたバルブが開き、8500rpmで全開。吸気効率が高まり、怒濤のパワーを生む。

国内初フルカウル「未来的なメカ&デザインの高級GT」YAMAHA XJ750D[1982]

前ページのインテグラが国内仕様初のハーフカウルなのに対し、エンジンサイドまで覆うフルカウルは本作が初となる。XJ750EをベースにエンジンをFI化し、回転計を含めてフル液晶メーターを採用。風洞実験で開発したFRP製カウルと相まって、未来感を押し出した。車名のDはDEVELOPの意だ。

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【YAMAHA XJ750D[1982]】■車重231kg(乾) 空冷4スト並列4気筒DOHC2バルブ 748cc 70ps/9000rpm 6.2kg-m/7000rpm F=3.25-19 R=120/90-18■当時価格:85万円

世界初ラジアルタイヤ「革命アイテムはツアラーから」YAMAHA XJ750D-II[1984]

バイアスより高い剛性と路面追従性を発揮するラジアル構造のタイヤは、高性能化に大きく貢献したアイテム。4輪やレースで使用されていたが、2輪への導入は遅く、XJ750DのⅡ型が初となる。フロントに採用されたダンロップ製ラジアルはグリップ感良好ながら、既存のタイヤサイズのため、偏平率はまだ高かった。

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【YAMAHA XJ750D-II[1984]】■車重231kg(乾) 空冷4スト並列4気筒DOHC2バルブ 748cc 75ps/9500rpm 6.3kg-m/7500rpm F=100/90R19 R=120/90-18■当時価格:90万円

世界初250cc水冷90°Vツイン「WGP譲りの高回転化で打倒2スト」HONDA VT250F[1982]

’80年、ヤマハからハイスペックな2スト車、RZ250が登場し、爆発的ヒットを記録。翌々年、ホンダは4ストのVT250FでRZに挑んだ。4ストV4GPマシン=NR500の技術を注入したクラス初の水冷90度Vツインは、4バルブによりRZと同じ35psを1万1000rpmの高回転で発生。同じくクラス初のフロント16インチやインボードベンチレーテッドディスク、リンク式モノサスの豪華メカに加え、車体も軽快スリムとあって大ブームになった。

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【HONDA VT250F 1982年6月】250ccクラス世界初の水冷90度V型エンジンを搭載した高性能ロードスポーツ車。奥のマシンは全日本で木山賢悟が駆ったNR500で、ここで培ったノウハウがVTに活かされている。
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【HONDA VT250F[1982]■車重149kg(乾) 水冷4ストV型2気筒DOHC4バルブ 248cc 35ps/10000rpm 2.2kg-m/10000rpm F=100/90-16 R=100/80-18■当時価格:39万9000円
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90度Vツインは、リッター140psのパワーと広いトルクバンドを実現。冷却水の通路を兼ねるパイプフレームでスリム化を促進した。
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レッドゾーンは1万2500rpm以降。250における超高回転化の先駆けとなり、大人気に。’85年には累計生産10万台を突破した。

「2スト250ブームの火付け役」YAMAHA RZ250[1980]

環境規制で2ストに逆風が吹く’80年、2ストに精通するヤマハの集大成として製作。レーサーTZ250を基にしたパラツインに、量産ロード初のモノサスを搭載。車重も軽く、抜群の速さを見せた。翌年、45psのRZ350も登場。

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【YAMAHA RZ250[1980]】■車重139kg(乾) 水冷2スト並列2気筒ピストンリードバルブ 247cc 35ps/8500rpm 3.0kg-m/80000rpm F=3.00-18 R=3.50-18■当時価格:35万4000円

「MAX1万8000回転に到達」YAMAHA FZ250PHAZER[1985]

VTに対抗して今度はヤマハが4スト250で逆襲。ヤマハ初の250㏄水冷直4は、独自の設計思想GENESISに基づいて45度前傾し、マスの集中化と吸気効率をアップ。1万8000rpmまでストレスなく吹ける超高回転型で45psのハイパワーを発生した。甲高いサウンドと近未来的なスタイルも特徴だ。

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【YAMAHA FZ250PHAZER[1985]】■車重138kg(乾) 水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ 249cc 45ps/14500rpm 2.5kg-m/11500rpm F=100/80-16 R=120/80-16■当時価格:49万9000円
時代を切り拓いた革新のマシンたち
レッドゾーンは1万6000rpm以降。フロントWディスクも魅力だった。VTに迫る人気を獲得したが、’86を最後に後継のFZR250にバトンタッチ。
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