大技ナシ&疲れナシ! 30年間公道無転倒・丸山浩がレクチャー

絶対に転ばない!?ライテク講座・極低速編#6〈取り回し〉

  • 2019/5/7
丸山浩の絶対転ばないライテク

『ヤングマシン』のテスターとして、30年以上にわたりさまざまなバイクに試乗しまくってきた丸山 浩氏は、「30年間公道無転倒」という実績を持つ。その奇跡のヒミツを明かす本講座の第6回。止まっているバイクを人が押し引きする「取り回し」は、その不安定さゆえにかなり難易度の高い課目。バイクの特性を把握したうえで慎重かつ丁寧な操作を!

↓〈先に#5 停止〉を読む↓
絶対に転ばないライテク

講師:丸山 浩(まるやま・ひろし)年齢を重ねるごとにどんどん元気になっていく本誌メインテスター。普段はレースやスポーツライテクで”カッコよさ”を魅せているが、今回はあえて封印。極低速で転ばないために必要とされる泥臭くて実直なテクニックを徹底披露する。

曲芸でも競技でもない。難易度を自ら上げるな!

危なげなく乗り降りができた。発進停止も落ち着いてこなせた。…が、そうやってうまく行ったことによる油断が、取り回しをザツにする原因になったりする。

バイクから降りて押し引きする「取り回し」は、もっとも基本的な事柄のようでいて、実はかなりレベルが高い。

着座していないから片側からしか車体を支えることができず、エンジンパワーがあまり使えないから人力頼りで、しかも転がってしまった場合にはそれなりのダメージを負うのだ。

これは実話だが、バイクの左側に立って押し歩きしていたライダー。ふとした弾みでバイクが右側に傾き始めたら、もう抑えが効かない。どうにかしようとハンドルから握ったまま粘ったが、車体が右側に倒れる勢いで巴投げのように静止ハイサイド..。恐ろしい..。押し引きとはいえ、決して油断はできないぞ!

取り回しの際に重要なのは”バイクの特性をよく理解しておく”ということだ。例えばバイクは基本的に傾けた方向に曲がろうとする、駆動力がかかっていないと不安定になるなど、状況によってバイクがどう動こうとするのか、あるいは動かないようにするにはどうしたらいいかなど、バイクについてできるだけ多く、できるだけ深く知っておく。

そしてもちろん、自分の取り回し操作がバイクにどんな影響を及ぼすかも理解しておこう。こればかりは経験を重ねるしかないが、慎重に、少しずつ探りを入れつつトライすれば大丈夫だ。

Uターンの項目でも繰り返しお伝えしたが、”颯爽とカッコよく”なんてスッパリ諦めること。取り回しは曲芸でも競技でもない。バイクを押し引きして希望する場所に移動するだけのことだ。

バイクの特性を理解し、ごくベーシックなことを高い精度で淡々とこなす。なんとも地味なようだが、これが取り回し上達の極意なのだ!

丸山浩の絶対転ばないライテク

【押し歩きあるある:立て過ぎて臨界点突破】押し歩きでは車体の角度を意識。垂直状態がもっともラクに押し引き可能だが、逆側に傾くと抑えられない。自分が片側に立つ分、垂直がどうか認識しづらいのが難易度の高い理由。調子に乗らず、自分側に傾けるベシ。

ポイントは 車体角度管理。右手で押し、左手で操作

バイクは直立している時にもっとも軽く押し引きできる。「じゃあ…」と直立させればよいかというと、ちょっと不安だ。軽く取り回せる領域は臨界点と隣り合わせで、いったん自分と逆側に傾き始めるとどうにも抑えられなくなってしまうからだ。かと言って、自分側に傾けすぎると重くて体力を消耗する。ほどよい安全域を探せ!

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自分のバイクにとってほどよい安全域を探そう

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【軽い場合は離す。重い時は腰でも押す】(上)バイクが軽ければ、少し体から離した方が自由度が高く、コントロールしやすい。くれぐれも自分と反対側に傾かないように。(下)ズッシリ重いバイクなら、シートサイドに腰を当てて。腰そのもので押し出すようにしてやれば、腕や足に力を入れずに済む。

基本は支え合う人字バランス

見よ、この美しいシルエットを。人とバイクが支え合いながら「人」という字を書き、しかもどっしりと安定している。両手を離しても安定感は変わらない。これぐらいの角度を安全域として、押し引き時の目安にしてほしい。あとはバイクの車重や体格に応じて微調整すれば万全だ。

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人とバイクが支え合ってバランスを取るのが基本

回転半径は左右で約1m違う。なるべく安全で楽な内回りに持ち込む

バイクに左側に立ったとして、内回り(左回り)と外回り(右回り)では回転半径が約1mも違う。内回りは自分側に傾けられるが、外回りはそれができないからだ。当然、外回りの方が自分と逆側に傾くリスクも高い。やむを得ない場合を除いて、できるだけ内回りで取り回した方が、ラクだし安全だ。

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外回りの方が取り回しが難しい

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なるべく安全でラクな内回りに持ち込もう。

丸山流は重心に近い所を押す場合も

押し引きする時、無意識に普通にハンドルを持っていることと思うが、ハンドルの中央に近い位置を押した方がラクな場合もある。特に幅広ハンドル車では、手が伸び切ってしまったり、わずかな操作が大きな影響を及ぼすことも。中央に近い位置を押すと、力は加わりやすいが大きく動きにくいので、ラクだ。

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ときにはハンドルの中央に近い位置を押した方がラクな場合も

切り返しは進みながら済ませるべし

押す・止める・ハンドルを切る・引く。切り返しでそんな動作をしていないだろうか? それ、重くて疲れる。バイクは少しでも動いていた方がハンドル操作が軽い。押す・止める前にハンドルを切る・止める・引く。これがベスト。

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切り返しの際は押す/止める前にハンドルを切るべし

後退は振り向き押しが有効

バイクの支え方が前進時と異なるため、不安も高まる後退。コツは片手をハンドルに、逆手はシートに添え、体ごと大きく後ろを振り返りって押すことだ。右側に立った時には前ブレーキを、左側に立った時はギアを入れクラッチをブレーキ代わりに使えばバイクを止められる。

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右サイドに立つ場合はフロントブレーキを使う

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左サイドに立つ場合はクラッチをブレーキ代わりに

本当はエンジンパワーを使いたい

ここまでの取り回しは、人力ベースでのやり方をお伝えしてきたが、本音を言えばエンジンの力を借りた方がラク。半クラをうまく使いこなせるなら、押す動作はアイドリング+半クラでこなしたいところではある。

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写真は極端な例だが、半クラ操作を使いこなせるのであればリカバリーもラク。

…というわけで、次回は「引き起こし」操作についてレクチャーしよう。

●撮影:長谷川 徹
※ヤングマシン2018年7月号掲載記事をベースに再構成

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高橋 剛

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カート上がりのバイク野郎。心震わす原稿が得意で、あのスポーツ名門誌・Sports Graphic Numberにも寄稿したりしなかったり。セッティングさえ出れば怖いものなしの隠れ文豪。