小型・省電力・高効率・明るさHID以上

イマドキのLEDヘッドライト基礎知識

バイク用LED

煌びやかなドレスアップ派や夜間の視認性を高める実用派にも人気で、手軽にリプレイスできるLED系電装用品。ヘッドライトまわりからポジション灯など大小さまざまな種類のアイテムが出回っているが、ところで最近のLEDはどのように進化しているのだろうか? 従来からあるハロゲンヘッドライトとの比較テストを行うとともに、LEDヘッドライトバルブメーカー「サインハウス」に最新情報を聞いた。

まずはハロゲンとLEDの比較実験から

比較対象:LED RIBBON H4型ハイパー(サインハウス)vs ハロゲンバルブH4型

ロービームの場合

LEDヘッドライト
【LED/ロービーム】壁との距離は3m。下のハロゲンのロービームと比較すると、最も明るい帯状の部分はLEDの方が広く、明るさも断然にLEDが上。このライト自体はハロゲンバルブの発光位置に近づけた設計となっており、全体の見え方としては似ている。
ハロゲンヘッドライト
【ハロゲン/ロービーム】レンズやリフレクター、照射角度はまるっきり同じにして、単純にLEDとハロゲンバルブを入れ替えただけなのに発光点が数ミリ異なるだけで、写真のように光軸の高さや配光が変わっているのがわかる。下側の光はこちらの方が拡散している。

ハイビームの場合

LEDヘッドライト
【LED/ハイビーム】最も明るく照らしてほしい遠方の光量(一番明るい所) は、やはりLEDの方に軍配があがる形となった。
ハロゲンヘッドライト
【ハロゲン/ハイビーム】一番明るい部分の光量はLEDに及ばない。全体にボヤッと拡散した光が多いのはハロゲンの方だった。

「LEDはHID並み。ハロゲン比で3倍明るい」

LEDの花形はヘッドライトバルブということで、’13年の登場以来トップブランドとなった「LED RIBBON(エルリボン)」のサインハウスにLEDの基礎知識を聞いた。

サインハウス
サインハウス 三好史記さん:製品開発を担当する三好さんは根っからのバイク好き。プライベートではバンドマンとして十数年以上も精力的に活動している。

ーーハロゲンバルブとLEDバルブではどんな違いがあるのだろうか?

「ハロゲンはすでに何十年も使われてきた実績があり、安価なのが特徴です。一方のLEDは省電力が大きなポイント。一般的なH4型のハロゲンはハイビームで60w、ロービームなら55 wのところを、弊社LEDならハイ/ローともに37w以下で済みます」

ーーLEDは長寿命の印象もあるが?

「LEDチップの耐久性は約4万時間ですのでハロゲンのフィラメントよりも圧倒的に長寿命です。しかし発光部以外の部品はその域にはないので、保証期間に準じた耐久性が目安になるでしょう。とはいえその期間を超えたからすぐに不具合が起こるわけではありませんので、ご安心ください」

LEDヘッドライト
ヘッドライトの明るさはバルブだけでなくレンズと反射鏡などの灯具ユニットの特性によっても、明るさや配光などが大きく変わる。

ーーなるほど。チョイ古の車両にはバッテリーの負担を減らす意味でLEDの省電力化はありがたい。ところで最新のLEDバルブはどんな傾向が?

「弊社のエルリボンのなかでもH4型は、一昔人気だったHIDと同等以上の明るさを実現しました。一番明るい4500lm(37w)のタイプと小型でも明るい3000lm(25w)の2種類があり、同型ハロゲンが約1000lm、HIDだと3000lmと聞けば、どれだけ明るいか想像できますよね」

ーーあのHIDと同等で、ハロゲン比なら3倍……これは相当に明るい。

「ここで重要なのがレンズと反射鏡を含めた灯具ユニットとの組み合わせなんです。ハロゲン搭載車は灯具もハロゲンの特性で設計しており、そこから逸脱すると、性能を発揮できません」

ーー小さなLEDを軸の全周に多くつけた創成期のものは、車検に通りにくかったというがそういう理由だろうか。

「おそらく。発光点が多すぎて光が拡散しますから、明るさも配光も光軸もまとまりがなかったわけです。弊社のはハロゲンの発光部であるフィラメントの位置を研究して、極小でも高輝度なLEDチップを配置し、フィラメントの構成にできるだけ近づけました」

LEDヘッドライト
エルリボンは独自の大型ヒートシンクを搭載することで有名。熱伝導に優れた銅を基にすずメッキが施されていて、柔軟性もある。

ーーだからエルリボンに交換してもハロゲンに近い配光になるというわけか。

「その通りです。そしてもうひとつ重要なのが冷却です。ハロゲンよりもLE Dは消費電力が低いとはいえ、100℃ 以下に保たなければLEDが劣化しますので、冷却が必要です。そこで、大型ヒートシンクを独自に開発・搭載することで冷却問題を解決しました。ファン型にしないのは耐久性への配慮です。粉塵の混入やバイクの振動は、ファンの寿命を縮めますから」

LEDヘッドライト
一部車両を除き、防水ブーツを加工することなく装着できるのがエルリボンの強み。これでヘッドライトユニット内に粉塵や水蒸気の侵入が防げて、レンズ内側や反射鏡の劣化も防ぐことができる。

サインハウスは現在、H7とH9の新製品を開発中という。H7の試作品を見た限りではH4同様に明るい。いち早く販売されることを期待したい。

●撮影、文:飛澤 慎
※『ヤングマシン2018年10月号』掲載記事をベースに再構成