HONDA“模刻”PROJECT①

1/8の名車列伝

小さなポケットバイクをベースに往年の名車を再現する。ホンダ社内で行われる若手モデラー育成プロジェクト「模刻」のデキがあまりにも見事なのでWEBでもご紹介しよう。

造形のキモを解釈してまったく違う寸尺で再現

模刻によって小さな車体が光り輝く宝石へと昇華する。「模刻?」とはなにやら普段聞き慣れない言葉。ウィキペディアによると、僧侶が修行の一環として仏像の複製を制作することなどとある。造語ではなく昔からある言葉らしい。このホンダの模刻というプロジェクトで制作されたマシン達は、まさに小さな宝石のような輝きを放つ。

右がRC143(1961)が、左はRCB1000(1976)がモチーフ。もちろん車体は小さいが、とてもポケットバイクがベースとは思えない本物感が漂う。

ホンダの模刻プロジェクトは、入社5年以内のモデラー達の勉強として、自分が好きなデザインのマシンを選択し、ポケバイの74 ダイジロウをベースにひとりで作り上げる一種の研修作業。もちろん日常業務をしっかりこなしつつ、時間をやりくりしてコツコツと作り上げていく。なるほど、イメージとしては仏像を複製していく僧侶の修行に相通じるものがある。

このポケットバイクが、すべての模刻のベース車両となっている74Daijiroだ。かつて故加藤大治郎選手のマネージメントをしていたデルタ・エンタープライズ製で、レースを志すキッズライダーの入門マシンとなる。■税込価格:24万5160円■問い合わせ:デルタ・エンタープライズ

デザインを知らない人なら、「ただ現車を縮小するだけで簡単じゃん」と思うかもしれないが、デザインとはそんな甘いものではない。まずポケバイのホイールベースやタイヤ、しかも乗車できなければならないという、かなり厳しい制約がある。だから単純にデザインを縮小すればいいというものじゃなく、この制約の中にベースマシンの持つデザインを破綻させないようなデフォルメ。つまり小さくても完結したデザインを作る必要があるのだ。

だからひと目で、どんなマシンなのかがわかる。へたをすると原寸車と見間違えてしまうほどの特徴が、小さな車体サイズに集約され光り輝いているのだ。

 

クレイに約2カ月・制作に約2カ月。すべての工程を1人行う

マシンの選択からクレイモデルの制作、さらに各種パーツ類の制作や塗装に至るまで全てを、モデラー1人が1台を担当し作り上げる。

盛ったクレイを成形していくためのクレイツール群。市販品だけではなく、本人による手作り品も数多く揃え、微妙な面を作り上げる。

 

模刻プロジェクトリーダー

柳沼幸二さん 二輪R&Dセンター デザイン開発室 第3ブロック 主任研究員

元々、面白いことに挑戦するという社風がホンダにはあります。その中で教育という観点から生まれたのが模刻プロジェクトなのです。これは「目指すは世界一のクリエーター集団」を掲げて始まりました。ベースマシンにポケバイを選択したのは、一人で作るためのお手頃サイズだったため。まず自分でやりたい機種を選択し、造形から仕上げまでを自分ひとりで担当して仕上げたわけです。

(ヤングマシン紙面版Vol.521・2016年4月号掲載記事より 文:牧田哲朗/撮影:長谷川徹/撮影協力:本田技術研究所 二輪R&Dセンター)

牧田哲朗

牧田哲朗

記事一覧を見る

大学生時代からヤングマシンの制作に携わっているこの道40年の大ベテラン。メカニズムやメンテナンスの造詣に深く、ヤングマシンでは「おまかせ牧田」としてお馴染み。

この著者の最新の記事

関連記事