
●文:ライドハイ編集部(根本健)
1960年代前半に火がついた国内90cc人気
かつてホンダは、乗用車の排気ガス対策(CVCC)エンジン開発により、スポーツバイク開発から手を引いていた時期があった。その後に復活を果たした1979年のCB750Fを皮切りに、最大のライバルだったヤマハとの“HY戦争”は10年続いた。しかし、じつはその20年も前に、この壮絶な闘いは火ぶたを切っていたのだ。
1960年代初頭、世界進出を狙い世界GP挑戦を開始したホンダに続き、ヤマハも参戦。タイトル争いで一騎討ちを繰り返すこととなった。それに伴い、国内のスポーツバイクマーケットでも熾烈な戦いとなり、海外ではヤマハが主力の250ccで後塵を拝していたが、まだ小排気量が主流だった国内では、GPレースと逆にヤマハが先行してホンダが巻き返す、そんなHY戦争が1960年代前半から始まっていたのだ。
1963年、ヤマハは「YG-1」というユニークなデザインの75ccスポーツバイクを発表した。それは50ccの原付を2人乗りできるように55ccに拡大した黄色ナンバー・原付二種の概念を打ち破り、新たなカテゴリーとして世に問うスポーツマシンだった。
ホンダも負けじとスポーツカブを65ccまで拡大し、OHVをOHCにグレードアップしたが、世界GPマシンと同じ2ストロークでロータリーディスクバルブという、吸気に切り欠きを入れた円盤が回転してキャブレターをエンジン横に配した、ヤマハ先鋭のメカニズムに圧倒されていた。
ヤマハはその後に分離給油(それまで2ストロークはGSでオイルをガソリンへ混ぜた混合燃料を給油していた)という画期的な方式を採用して、需要が爆発的に伸びたこのクラスで独走したのだった。
ホンダは、海外で主力の250ccスーパースポーツ・CB72がヤマハYDS1〜2に圧勝していたが、指をくわえて見てはいられないと、国内の主力となりつつあった90ccクラスに誰も想像していなかったファイナルウェポンを投入した……
※本記事は2023年2月28日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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