
我々の身のまわりにあるさまざまな汚れ。汚れの特徴に応じた洗剤を使用すれば洗浄効率がアップする半面、相性が悪ければ効果が得られないこともある。塗料開発製造メーカー・BAN-ZIから発売間近の「MUD MAX(マッドマックス)」は、泥汚れに特化したアルカリ洗浄剤だ。
●文/写真:栗田晃(モトメカニック編集部) ●外部リンク:株式会社BAN-ZI
汚れに応じて希釈倍率を調整。アルミやメッキも傷めず使用できる
「強力洗浄剤」を謳う洗剤やケミカルは数多く存在するが、ポテンシャルを引き出すには“汚れの種類”を明確にすることが大切だ。
あらゆる物質には酸性やアルカリ性といった性質があり、汚れにもまた性質がある。一例を挙げれば、油汚れ/汗/皮脂の汚れは酸性で、水あか/石けんかす/カルキはアルカリ性の汚れである。
洗剤選びの基本は、“どちらかに偏った性質を中和させる”という考え方。汚れが酸性ならアルカリ性の洗浄剤を、アルカリ性の汚れは酸性の洗浄剤で中性に近づければ、汚れは落ちやすくなる。
BAN-ZIの強力洗浄剤「MUD MAX(マッドマックス)」は、強アルカリ性であることが大きな特徴。成分中に含まれる水酸化カリウムは、水酸化ナトリウムと並び強力なアルカリ性を示す。物質の性質を表すpH値は、7を中性として0〜6が酸性、8〜14がアルカリ性となるが、MUDMAXのpH値は13というから強烈だ。
アルカリ性が強ければ、油分や土や泥汚れにも強い。土や泥汚れの性質を意識する機会は少ないかもしれないが、日本の土壌は酸性傾向が強いというのが農業分野の共通認識だ。今回、モトクロス場で泥だらけになったレーサーでテストしたところ、マッドマックスの希釈割合によって泥汚れの落ちが変化し、劇的な効果を確認できた。
アルカリ性が強いと皮膚や金属にダメージを与えるリスクがあるが、BAN-ZIでは試作を繰り返すことでアルミやメッキなど影響を受けやすい金属にも使えるように仕上げたそうだ。湿気を含む酸性の泥汚れをそのままにしておけばサビの原因にもなるだけに、スッキリきれいに洗浄できるマッドマックスをおすすめしたい。
泥や油汚れに効果のあるアルカリ洗浄成分を2〜100倍に希釈して使用
【BAN-ZI MUD MAX 業務用 濃縮タイプ1000ml】油汚れや泥汚れに強いのはもちろん、BAN-ZIの主力製品である錆転換塗料のサビキラープロや、錆除去剤のサビトルキラーやサビタンキラーの使用前に、表面の酸性汚れを落とす洗浄剤としても有効。希釈倍率は重度の汚れは2〜5倍、泥汚れは6〜20倍、軽度の汚れや外装パーツ洗浄は50〜100倍が目安となる。●価格:6116円(原液タイプ1L)
ぬかるんだモトクロスコースを走れば、ヤラセなしでBefore程度の泥だらけになるのは当たり前。粘土質の泥はしつこく、通常の洗車用シャンプーではまったくと言って良いほど歯が立たない。マッドマックスも10倍程度の希釈ではいまひとつ感動できなかったが、2倍希釈まで濃度アップすると効果てきめん、シート表皮のシボに染みついた汚れも完璧に落とすことができた。
高圧洗浄機やブラシを併用してMX場の泥汚れを徹底洗浄
汚れに応じて希釈倍率を変えて使えるのがマッドマックスの特徴。強アルカリなら薄めて使えるが、マイルドな洗浄剤を濃くすることはできないからだ。最初は10倍に希釈した。写真のスプレーボトルは個人で用意したものだが、BAN-ZIから高品質で使いやすいスプレーボトルに10倍希釈したものが近日発売される予定だ。●価格:6116円(0倍希釈1Lスプレーボトル入り)
汚れがこってり積み上がった状態でマッドマックスを使うのはもったいないので、あらかじめ高圧洗浄機で吹き飛ばしておく。表面部分はある程度落ちるが、しっかり食いついている。
高圧洗浄機で落ちない汚れも、ブラシを併用することで効果的に除去できる。洗車ブラシ1本だけですべて済ませるのではなく、小型ブラシや歯ブラシなどを併用する。
フォームノズル付き高圧洗浄機なら、マッドマックスを泡状に噴射できる。開発時に金属へのダメージが出ないことを確認済みだが、細かい部分に行き渡るぶん、入念なすすぎが重要。
10倍希釈でも汚れは落ちるが、水洗い後の表面が乾燥すると茶色くカサついた部分も残っている。このような場合、希釈倍率を下げて濃度アップできるのがマッドマックスの強みだ。
濃度を上げればひどい汚れに効果あり
10倍希釈ではタイヤに付着した泥はブラシで擦っても落ちなかったので、2倍希釈の“濃い”溶液をスプレーした。すると、泥自体は不溶性の汚れなので溶けるわけではないが、タイヤ表面から浮き上がってきた。
ブラシを併用すると、10倍希釈時には落ちない泥がどんどん剥がれて、泡がまっ茶色になった。一般的な泥汚れの希釈倍率は6〜10倍だが、2倍希釈で効果が現れた今回の汚れは、相当重度だったと判断できる。
モトクロスパンツで擦れてシボの奥まで染み込んだ泥は、ブラシでどれだけ擦っても10倍希釈ではここまでが限界だった。「やっぱりこの程度か…」と判断するのは早とちり。
右のタイヤと同じく2倍希釈のMUDMAXをスプレーしてブラシで擦ると、白い泡が茶色に変色してきた。濃度によって洗浄力に強弱をつけられるのは、濃縮タイプならでは。
BAN-ZIの推奨値を参考にしつつ、希釈倍率は実際に試して判断するのが良さそうだ。10倍でイマイチでも2倍でバッチリなのだから、MUDMAXのポテンシャルは素晴らしい。
ブーツやウェアにも使える
バイクと同様に重度の汚れと判断したブーツも、高圧洗浄機で下洗いした後に2倍希釈のマッドマックスをスプレー。シワの奥に入り込んだ泥に苦労するのが常だが、ブラシを併用してきれいに洗浄できた。ウェアやブーツに対しては、素材へのダメージを考慮すれば濃くしない方がベターだが、開発時は原液でも影響が出ないことを確認しているそうだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
モトメカニックの最新記事
クロームメッキパーツのケアには専用ケミカルが有効 重厚な金属光沢が魅力的な装飾クロームメッキ。その被膜は0.02〜0.5㎛と極めて薄く、肉眼では見えない孔やクラックから浸入する水分によってクロム層の奥[…]
素材を痛めない万能クリーナーは、長期放置車&レストアの徹底洗車に最適 最近は、1970年代のカワサキZ系やホンダCB系に加えて、ホンダNSR250RやヤマハTZR250Rといったレーサーレプリカモデル[…]
まめなオイル管理が、良コンディションを維持できる秘訣 新型スーパーカブが発表されて以降、新型のシリーズモデルは、週末に限らず、毎日のように街中で見かけるようになった。軽く気ままに走ることができるモデル[…]
必要なのはキャブ本体とパーツリスト! 燃調キット開発プロセスとは 日本製自動車の性能は優秀で、日本国内で役目を終えた後も中古車として世界各地に輸出され、何十年という時を経ても現役で活躍していることが多[…]
“思い出の1台”に乗りたい バイクメーカーがニューモデルを開発する際は、ユーザーがそれを受容できるか、あるいは新たなマーケットを作り出せるかが重要。レーサーレプリカもネイキッドも、それがウケると分かっ[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
クロームメッキパーツのケアには専用ケミカルが有効 重厚な金属光沢が魅力的な装飾クロームメッキ。その被膜は0.02〜0.5㎛と極めて薄く、肉眼では見えない孔やクラックから浸入する水分によってクロム層の奥[…]
論より証拠! 試して実感その効果!! クルマのボディケア用品の名門として語られることが多いシュアラスターですが、同社の本質は“洗車関係”にとどまりません。じつは、燃料がどう燃え、エンジンがどんな性格を[…]
スクリーンの透明感を取り戻す「ゼロリバイブ」 フルカウルのスポーツバイクやロングツーリング向きのアドベンチャーバイクなどに装着されているスクリーン。長く乗っていると、風雨にさらされて汚れたり、バイクカ[…]
自分だけのパーツ作成に役立つ彫刻機 愛車やガレージのカスタムにはワンポイントでも世界にひとつだけのパーツやあしらいがほしいもの。とはいえ、こだわればこだわるほどプロ級のツールが必要不可欠となる。 そこ[…]
Amazonランキング1位! カエディア USBチャージャー「KDR-M3C」を選択 携帯電話所有者のスマートフォン比率が2024年現在で97%というデータがあるなど、もはや日常生活に切っても切り離せ[…]
最新の関連記事(洗車用品)
スクリーンの透明感を取り戻す「ゼロリバイブ」 フルカウルのスポーツバイクやロングツーリング向きのアドベンチャーバイクなどに装着されているスクリーン。長く乗っていると、風雨にさらされて汚れたり、バイクカ[…]
操作革命!レバーひとつで純水と水道水を即座に切り替え 販売元であるVectoraneは、プロのコーティングショップ、カーディーラー、大手ガソリンスタンドなど、全国1,000店舗以上に純水器を導入してき[…]
エアで簡単、新!お掃除スタイル 洗車や掃除、水滴やホコリは「拭くから吹く」へ オートバイ用インカム「B+COM」でお馴染みのサイン・ハウスが、新たなライフスタイルブランド「SPICERR(スパイサー)[…]
バイクが違えば洗い方も変わる! 車種別の洗車情報をお届けするシュアラスターの「バイク洗車図鑑」 今回はHarley-Davidson(ハーレーダビッドソン)「LOW RIDER(ローライダー)ST」を[…]
バイクが違えば洗い方も変わる! 車種別の洗車情報をお届けするシュアラスターの「バイク洗車図鑑」。今回はヤマハの「MT-09」を洗車します! スポーツネイキッドシリーズMTファミリーの代表作とも言えるM[…]
人気記事ランキング(全体)
EICMAで発表された電サス&快適装備の快速ランナー ホンダが年1回のペースで実施している『編集長ミーティング』は、バイクメディアの編集長のみが参加するもので、ホンダの開発者らと一緒にツーリングをしな[…]
前バンクはクランクリードバルブ、後バンクにピストンリードバルブの異なるエンジンを連結! ヤマハは1984年、2ストロークのレプリカの頂点、RZシリーズのフラッグシップとしてRZV500Rをリリースした[…]
「マスダンパー」って知ってる? バイクに乗っていると、エンジンや路面から細かい振動がハンドルやステップに伝わってきます。その振動を“重り”の力で抑え込むパーツが、いわゆるマスダンパー(mass dam[…]
GSX-S1000GT 2026年モデルは新色投入、より鮮やかに! スズキはスポーツツアラー「GSX-S1000GT」の2026年モデルを発表した。新色としてブリリアントホワイト(ブロンズホイール)と[…]
[プレミアム度No.1] エボリューション集大成モデル。スプリンガースタイルがたまらない!! ストック度の高さはピカイチ!! 取材時に年式が最も古かったのが1998年式ヘリテイジスプリンガー。この車両[…]
最新の投稿記事(全体)
「天然のエアコン」が汗冷えを防ぐ 厚着をしてバイクで走り出し、休憩がてら道の駅やコンビニに入った瞬間、暖房の熱気で生じる汗の不快感。そして再び走り出した直後、その汗が冷えて体温を奪っていく不安。ライダ[…]
ウインカーと統合したDRLがイカス! X-ADVは2017年モデルとして初登場し、アドベンチャーモデルとスクーターのハイブリッドという新しいコンセプトで瞬く間に人気モデルになった、ホンダ独自の大型バイ[…]
上旬発売:アライ アストロGXオルロイ アライヘルメットからは、ツーリングユースに特化したフルフェイス「アストロGX」のニューグラフィック「ORLOJ(オルロイ)」が12月上旬に登場する。この独特なネ[…]
最強のコスパ防寒着か? 進化した「GIGA PUFF」 まず注目したいのが、「GIGA PUFF フュージョンダウンフーディ」だ。価格は驚異の4900円。このフーディの肝は、中わたの量にある。従来製品[…]
フランスヤマハのチームカラーが全世界で人気に! ヤマハファンならご存じ、フランスの煙草ブランドであるゴロワーズのブルーにペイントしたレーシングマシンやスポーツバイクたち。 その源流はワークスマシンのY[…]
- 1
- 2

























































