
乗らなくなってから長年放置されたバイク。そのメンテナンスを実践する際は、エンジンケアの第一歩となるオイル交換と、バイクを止めるのに重要なブレーキパーツの作動性確認を先行して行いたい。本記事では、車検が切れてから30年以上ガレージ内で保管されていたモトグッツィ ルマンIIIを対象に、エンジンオイル添加剤「スーパーゾイル」を使ってオイル交換を行った。
●文/写真:モトメカニック編集部 ●外部リンク:パパコーポレーション
30年以上乗っていないバイクのエンジンオイル交換
「しばらく乗っていなかった」という表現もじつにさまざま。露天放置で長年放置されていた個体と、環境が良いガレージ内で保管されていた個体とを比較すると、そこには雲泥の違い=コンディション差がある。
今回取り扱ったモトグッツィ ルマンIIIは、車検が切れてから30年以上、ガレージ内で保管されていた。走り終えてからガレージへ格納し、そのまま乗らなくなった様子で、タンク内やキャブ内のガソリンは完全に腐って最悪の状態だった。
では、エンジンはどうか? オイルパンを外してオイルフィルター交換(カートリッジ式フィルターがエンジンオイルに浸った状態でエンジン内部にマウントされる設計)した際に、リフター上のバイクをエンジン下から覗き込んでみた。
モトグッツィのエンジンは、オイルパンを取り外すとクランクシャフトやピストンの裏側まで、隅々を覗き見することができる。エンジン内部はアルミの地肌に薄褐色のエンジンオイル膜が付着している感じに見える。部分的にウエスで拭き取ると、アルミ地肌の銀色が美しく輝いた。低走行距離だったことも幸いし、長期間経過しているにもかかわらず、内部コンディションは良い印象だ。
カートリッジ式オイルフィルターを交換してオイルパンを復元。10W-30のエンジンオイルを注入してエンジン始動し、車検取得後に数百キロ走行した。“覗き見”メンテナンスの際に、仮にエンジン内部が汚れていたら、迷うことなくフラッシングゾイルを注入して低回転維持で走りながら、エンジン内をフラッシング処理していたと思う。しかし、エンジン内に目立った汚れがなかったので、10W-30のエンジンオイルを注入して走り、今回のオイル交換に至っている。
このオイル交換時には、ゴールドラベルの4サイクルエンジン用スーパーゾイルを添加利用した。10W-40の鉱物油に10%添加。常用回転域が4〜6000rpmと圧倒的に低く、なおかつピストンクリアランスも現代のエンジンと比べて広い設定なので、強い油膜のアメリカ製鉱物油を利用し、スーパーゾイルを添加した。
エンジン稼働中の摺動抵抗が起こす摩擦熱に反応し、部品の表面に金属化合物を形成するのがスーパーゾイルの特徴だ。この金属化合物が摺動面の凸凹を埋めて平滑にすることで、摺動抵抗を減らす効果を発揮する。目視では、ツルツルピカピカに輝いて見える金属部品の摺動面も、顕微鏡レベルで凝視するとじつは想像以上に凸凹で、キズだらけであることがわかる。そんな金属表面を滑らかにして摺動抵抗を減らし、その効果でメカニカルノイズも軽減してくれるのが、スーパーゾイルの働きなのだ。
【スーパーゾイル for 4cycle 4サイクルエンジン用】各種ブランドオイルやメーカー純正指定のエンジンオイルと併用することで、想像以上の好効果を得られると評判の高性能添加剤スーパーゾイル。数多くの信頼を得つつ、リピートユーザーが増えていることでも話題のケミカルだ。4サイクル用スーパーゾイルには、10%の添加で利用する通称ゴールドラベルの商品と、同じ効果を5%の添加でも得られるスーパーゾイルエコの2タイプがある。今回は、海外製品の鉱物油にゴールドラベルのスーパーゾイルを10%添加して利用した。長年乗っていなかったバイクなので、早め早めの積極的オイル交換を実践することにした。●価格:100ml 2860円/250ml 6380円/320ml 7480円/450ml 1万780円
放置されていた度合いや以前の稼働時のケア具合にもよるが、まずはオイル粘度が低い商品をチョイスしエンジン始動を試み、数百キロ走ってからオイル交換を実施した。
ドレンボルトのネジ潰れやダメージを確認しながら、ウエスに包んだドレンボルトをパーツクリーナーで洗浄した。ボルトにセットされているマグネットに鉄粉付着はなかった。
大型ドレンボルトなので、エンジンオイルは想像以上にスムーズに抜き取ることができる。新しいアルミガスケットが手元になかったので、オイルストンで面出し&再利用した。
エンジンオイル量は約3L弱。10%の添加で4サイクル用スーパーゾイルを混ぜた。実際には3L程度の添加済みオイルを作り、まずは2.5L程度注入した。
利用したオイルジョッキは2Lサイズなので、2回に分けてレベル中間に調整する。最初からオーバーレベルにしてしまうと抜き取りが大変なので、継ぎ足し調整しよう。
エンジン始動し、限りなく低回転でエンストしない程度にスロットルを維持する。オイルプレッシャースイッチがある車両は、スイッチ作動まで2000rpm程度を維持しよう。
オイル量の確認時は、直立車体が基本。センタースタンドがあれば利用しよう。ディップスティックをウエスで拭き取り、フィラー孔にゆっくり差し込み(ネジ込まない)、ボルト部がエンジンに当たったら引き上げる。上限ラインを超えないこと。
ブレーキキャリパーのもみ出しクリーニングも
また、しばらく走らせていなかったバイクの多くは、ブレーキキャリパーが固着して作動状況が悪いケースが多い。もちろん車検前には分解メンテナンスを実践していたが、ブレーキキャリパーも定期的なメンテナンスによって、ブレーキレバーを握った時のタッチ感やコントロール性が向上し、そんな効果によってブレーキが良く効くかのような印象も受ける。
2年に1度の車検メンテナンス時とは言わず、雨天走行後や、砂利道を長距離走ったような直後には、キャリパーピストンの通称「もみ出しクリーニング」を実践するのが良い。シール性を求めるオイルシールは、作動性が低下すると摩耗しやすく、スラッジが溜まりやすい特徴もある。
そんなキャリパーピストン外周を適時クリーンナップし、スーパーゾイルラバーグリスを塗布することで、想像以上に作動性が高まり、ブレーキレバーを操作する指先でその違いを体感できるようになるはずだ。
ブレーキレバーの操作はスムーズかつ気持ち良く動いてほしいのがライダーの願いでもある。そんなブレーキ性能のハイレベルな維持に、スーパーゾイルラバーグリースは効果的だ。
【スーパーゾイル ラバーグリース 金属表面再生剤配合 消音グリース】金属対ゴムの接触摺動面に潤滑効果を発揮するラバーグリースに、スーパーゾイル成分を配合。組み立て時のゴム部品保護はもちろん、作動初期のゴム部品の摺動性を高めてくれる。グリース基油にはブレーキフルードと同系統の特殊合成潤滑油を使用し、ブレーキフルードとの相溶性が適している。化学的安定性も高く、高温領域においても酸化しにくく、残留スラッジの発生に対しても安心だ。ブレーキマスターやキャリパーピストン周辺のゴムラバー部品の組み付け時に、適量塗布するのが良い。エンジン部品でもオイルシールリップ部などへの塗布によって摺動性が向上する。●価格:100g 2420円
ブレーキピストン戻しツールは、パッド面や対向ピストンを広げて、キャリパーボディ内へピストンを押し込むけではなく、大きく広げて「タガ」のように挟む利用法もある。
タガ状態で片側のピストンを押さえながら反対側ピストンを露出させ、ダストシールを外してピストン周辺の汚れをクリーンナップ。ブレーキクリーナーを併用しても良い。
ピストン周辺の汚れをクリーンナップできたら、綿棒にラバーグリースを取ってキャリパーピストンの周辺に擦りつける。決してタップリ塗る必要はない。塗りすぎは汚れの原因だ。
プレーキピストン位置を回すローテーションツールを利用しながら綿棒に適量塗布したラバーグリースを塗っていく。作業終了後は対向側を同じような手順でケアしよう。
対向ピストン双方のクリーニングとラバーグリースの塗布を行ったら、ツール爪幅を閉じてピストンをボディ双方へ押し込もう。何度か出し入れして作動確認しても良い。
パッド復元後にキャリパーブラケットへ固定したら、忘れてはいけないのが、ブレーキペダルをポンピングして「ブレーキパッドをローターへ当てること」。忘れてしまうと大変危険!! 走る前に実施しよう。
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