
レストアファンの増加とともに、益々注目されている特殊塗料のひとつに「ガンコート」がある。高機能ペイントのガンコートは、高い放熱効果を持ち、何より「耐ブレーキフルード性」が素晴らしい!! ブレーキマスターシリンダー/ブレーキキャリパーの塗装におすすめのペイントだ。
●文/写真:モトメカニック編集部 ●外部リンク:カーベック
通常ペイントは“耐ブレーキフルード性”が低い。高温焼き付け塗料のガンコートなら安心
バイクいじり経験が豊富なベテランサンデーメカニックなら、焼付ペイントが容易に施工できるようになった現代は、当時(たとえば1990年代以前)と比べて、ある意味パラダイスのように感じているのではないか?
焼付設備がなかった時代は、ダルマストーブの上に金属容器(一斗缶の積み重ねなど)を置いて焼いたこともあった。アイデアと努力でサンメカライフを充実させてきたものだ。
我々『モトメカニック』編集スタッフもサンデーメカニックのひとり。そんな苦労はよく理解しているつもりだ。そんな我々向けに登場したカーベック製「CVジュニア」は、さまざまな方面で新たなユーザーを生むきっかけにもなったエポックメイクな商品である。なにしろ小物部品なら気楽に焼き付け塗装を楽しむことができる機器でもある。
高性能かつ高機能塗料として知られるガンコートが購入できたとしても、乾燥機器などのインフラが整わなければ、ある意味、宝の持ち腐れだろう。
しかし現在では、大きなものから小さなものまで、さまざまなサイズの高温乾燥機器が充実している。そんな環境整備を推し進めてきたのがカーベックなのだ。塗装関連設備の充実によって、我々サンメカはもちろん専門業者にも新たなる風が吹き込まれているようだ。
ここでは、ブレーキ関連パーツのリペイントをガンコートのサテンブラックで実践した。作業手順は従来の1液型塗料の施工と同じだが、ガンコートには「耐熱性の高さ」「耐薬品性の高さ(耐ブレーキフルード性含む)」そして「表面硬度の高さ」といった圧倒的な特徴があるため、その応用次第でさまざまな場面で利用することができる。
カーベックのホームページでは、さらに詳しく商品解説や塗料の性能解説が記されているので、作業前にHPを一読することで、DIYの仕上がりは、間違いなく良くなるはずだ。
◆ブレーキマスターシリンダーとキャリパーの要所はしっかりマスキング。サンドブラストで塗膜を剥がしアルミ地肌を出す。キャリパーはピストン周辺とオイル通路。マスターはリザーブタンクとシリンダー通路をマスキング。
◆どんな部品をブラスト処理する際にも、大敵なのが部品の汚れや湿気だ。ブレーキパーツの場合は水道水と中性洗剤でジャブジャブ洗浄してからCVジュニアで空焼きするのがベスト。ペイント前は完全乾燥が基本だ。
◆改造に次ぐ改造、その繰り返して30数年近く使っているブラストキャビネット。塗装剥離の場合は作業中に粉塵が舞ってしまい、作業スペースが見えなくなってしまう。粉塵ブロアの強化は効率の良い作業の要になる。
◆サンドブラストで旧ペイントを剥がし、アルミ地肌を露出できたブレーキ関連パーツ一式。ここでは、これらの部品をすべてガンコートの「サテンブラック」でペイントする。完全エアブロー後に水洗と水研ぎ。
◆ブラスト処理を終えたら、いきなりペイントではなく、中性洗剤を混ぜたバケツの水にブラスト処理後の部品を沈めて、600番の耐水ペーパーで仕上げ部分を耐水研磨。指先が入らないところはブラッシングで表面を擦ろう。その後、しっかり水洗してから完全乾燥させて冷えるのを待つ。ペイント前のマスキング作業も徹底的かつ手際良く行い、ピストン内壁などはコピー紙をカットして丸めて自己保持マスキングにするのが良い。
◆ガンコートも容器をしっかり振ってしっかり攪拌するのが成功への道だろう。1液のガン吹きだが、ガンのカップへ塗料を入れる際にもフィルターを必ず使おう。以前は気にせず施工していたが、フィルターを通すことでゴミの付着は圧倒的に少なくなった。ペイントブースは樹脂製ドラム缶で作ったDIY品で、使い勝手は良好!! ブレーキ部品は小物が多いので、CVジュニアが威力を発揮する。ガンコートは180℃設定で1時間の乾燥が目安なので、槽内温度を簡易温度計で確認し、180℃に達したらタイマーをセットするようにしている。冬場はCVジュニアをタイガーボードで囲って利用。
◆耐ブレーキフルード性が良好な上に、放熱効果を得られる高機能ペイントがガンコート。とくに、サテンブラックが放熱性ナンバー1 だそう。
◆ガンコートは使用量で500cc/1000cc/1ガロンと3容量から選ぶことができる。サンデーメカニックがブレーキパーツをメインに使うなら、500ccで何台分も塗ることができる。4気筒エンジンでも1台なら500ccで間に合う。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
モトメカニックの最新記事
構成要素のすべてに技術的な裏付けがあるSP2シリーズ そもそも山口県のバイクショップからスタートしたASウオタニ。SP2フルパワーキット/SP2パワーコイルキット/SP2ハイパワーコイルセットといった[…]
エンジンと同時進行で開発されるオイルの重要性を再確認 シリンダーとピストンやクランクシャフトのジャーナル部分、クリアランスが狭い部分など、エンジンの隅々にまで行き渡って潤滑や冷却などの役割を果たしてい[…]
メッキのプロが開発したクロームメッキ専用品!! 鉄素材のさまざまな表面処理の中で光沢や質感、高級感のいずれにおいても秀でているのがクロームメッキだ。しかしながら近年では、メッキ工程で使用される六価クロ[…]
“機械遺産”のコンディションをどう維持するか 電気自動車や電動バイクの普及が進めば進むほど、旧車や絶版車ムーブメントは一段と熱くなりそうだ。内燃機関に対する注目度が高まるのと同時に、ユーザー自身は“機[…]
擦らず拭くだけでOK。デリケートな素材も傷つけることなく赤サビを除去できる バイクや自動車の部品はもちろん、橋梁/建築物/工具/アウトドア用品の材料として当たり前のように使われている鉄素材。豊富な埋蔵[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
ある日チョークが折れてた エンジン始動でチョークを引っ張ったらいきなり「スポッ」と抜けた。何事かと思ったら・・・折れてたんですよ、チョークケーブルのアウターが。 アクセルやクラッチ、スロットルやチョー[…]
構成要素のすべてに技術的な裏付けがあるSP2シリーズ そもそも山口県のバイクショップからスタートしたASウオタニ。SP2フルパワーキット/SP2パワーコイルキット/SP2ハイパワーコイルセットといった[…]
レストアでのつまづきはそこかしこに 古いバイクをレストアしていると意外なところでつまずいたりするものですが、今回引っかかったのが8インチのチューブタイヤの「リムバンド」。 こちらのホイール、別にリムバ[…]
ガソリン添加剤の役割 ガソリン添加剤といってもその用途はさまざまですが、大まかなカテゴリーとしては 洗浄効果 性能向上 の2つに分けられます。 洗浄効果について 現在主流になっているPEA(ポリエーテ[…]
ヤフオクで入手したバイクのフレーム。ネジ穴に折れたボルトが詰まってた!? ヤフーオークションでとあるバイクのフレームを買ったところから話が始まります。 フレーム曲がりや大きな傷もなく、塗装面も小傷があ[…]
人気記事ランキング(全体)
脇を冷やすことで全身を効率的にクールダウン 「THERMO-GEAR BELT」の最大の魅力は、なんといっても「冷暖対応デュアルペルチェ搭載」という点だ。一台で夏場の猛暑対策はもちろんのこと、冬場の厳[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
新作GSX-8T/8TTに足並みを揃えて2026年モデルに スズキ独自のクロスバランサーを採用した最新776cc並列2気筒エンジンを搭載するモデルのうち、フルカウルスポーツとスポーツネイキッドとしてシ[…]
脇を冷やすことで全身を効率的にクールダウン 年々暑さが増している夏。冷感シャツやメッシュジャケットなど様々な冷却アイテムが普及して久しいが、半端な対策ではツーリングが快適とはいかなくなってきた。 そこ[…]
原付スクーターは16歳から取得可能な“AT小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があ[…]
最新の投稿記事(全体)
零戦と同じサムライ魂が成し遂げた「究極」の直4 時代を決定的に「それ以前」と「以降」に画してしまうエポックメイキングなモデルはいくつか存在する。中でもZ1は紛れもない革命児である。 量産車として世界初[…]
ある日チョークが折れてた エンジン始動でチョークを引っ張ったらいきなり「スポッ」と抜けた。何事かと思ったら・・・折れてたんですよ、チョークケーブルのアウターが。 アクセルやクラッチ、スロットルやチョー[…]
パフォーマンスマシン:レース環境から生まれた究極の操作性 ハイパフォーマンスを追求するのが、ハーレーの最新トレンド。優れた機能性とカスタムルックを高い次元で両立するアルミニウムビレット製のラジアルハン[…]
嬉しい、楽しい、大好きダックス! ちょっとHondaのバイクに詳しい人なら知っていることかもしれませんが、じつは「ダックス」のペットネームを持ったバイクがはじめて誕生したのは、半世紀以上も前の1969[…]
BSAにニッチな2ストロークマシンがあったとは…… BSAモーターサイクルは7月16日(日本時間同日19時過ぎ)にSNSを更新し、『We’re going back to the future on […]