インドは高速道路も牛やラクダが散策する
試乗2日目は高速道路がメイン。市街地はそこそこに高速道路を走る。アベレージはぐんぐん上がるものの、路肩には人が歩き、牛やヤギ、ラクダも散策している。なんて自由な高速道路なんだろう。いたる所に生命力が溢れ、皆が共存している。先導がいるからそこそこのアベレージで走れるが、油断大敵な気がした。
世界は広いなぁと思うし、この果てしない道はどこまで続くのだろうとたまに不安になるほど景色が変わらないこともある。仕事や生活の中で感じる日常の慌ただしさを忘れ、ただバイクからの鼓動を身体に染み込ませていく。それがなんとも心地よく、これこそがクルーザーの本質なのかもしれないと思った。
足を前に投げ出し、シートに腰をドンと落ち着かせていると、スーパーメテオ650はとても大らかに僕を包んでくれる。こんな癒される感覚を知ると「やっぱりバイクっていいなぁ」と思うのだ。しかも何度も、何度も。乗るたびに思わせてくれる。
高速道路と街中を繰り返し走る。側道にいる子供たちはよく手を振ってくれる。中には敬礼してくれる子どももいた。フルフェイスヘルメットを被って大型バイクが走っていることはまだまだ珍しいのだろう。子供たちの姿はとても温かく、優しい。学校帰りの子も、働いている子もいるが、みんなの目は本当に奥まで澄んでいて、輝いていた。その純粋さがとても愛おしい。いつか彼ら彼女らがバイクに乗ってくれると良いなぁと思うと同時に、インドという国がどのように発展していくのか見てみたいと思った。
エンジンの声を聞き、バイクと対話する
648ccの空冷ツインエンジンは、市街地の低回転も高速道路の高回転時も、欲しい力強さを提供してくれる。しかも加速方向のトラクションだけでなく「減速する感じ=回転の落ち方」も理想的で、さらにクラッチやミッションのタッチも上質。わかりやすくいうと、きちんとコストをかけて作られているのだ。
砂漠の街では1本道を外れると、砂に埋まってしまうこともある。日本では関係のないシーンだが、そんな時もこのエンジンは砂を踏み固め前に進ませてくれる。スロットル微開時も理想的なトルクを発揮してくれるのだ。
ユーロ5時代、消えゆく空冷エンジンが多い中、味わいや本物の鼓動を持つ、数少ないエンジンであることを再認識する。
オーセンティックなバイク作りは意外と難しい
多くの動物たちはもちろん、様々な働くクルマやバイクと共存するインドの交通事情は特殊だ。ここで鍛えられたバイクは今後どのように発展していくのだろう。「もしこの先、水冷やEVになったとしてもオーセンティックなバイクづくりを変えないよ」そんな開発陣の言葉がとても心強い。
バイク業界だけに限ったことではないが、複雑な現代事情を加味しながらプロダクトを開発するのは難儀な時代だ。しかしこれまで僕が取材して現地で直接話を聞いて感じたのは、ロイヤルエンフィールドにはブレがないし、すべての開発陣の意志の疎通が取れていることだ。目指すべきビジョンが明確にあり、それをかなえるために取捨選択すべきことがクリアに共有されている。これがミドルクラスセグメントで世界一の生産規模を誇るロイヤルエンフィールドの強さだ。
この日のゴールが近づくに連れ、今日が終わらなければいいのにと思い、この道がどこまでも続けばいいのにと思い、日が落ちなければいいのにとも思った。それだけ僕はインドとスーパーメテオ650に魅了されていた。
前回インドに来た時もそうだが、今回も少しだけ人生観が変わった気がした。スーパーメテオ650が日本に導入されたら、今度は前だけでなく左右の景色も楽しみながら、淡々と走り続けてみよう。
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