水冷バイクと空冷バイクを比べてみよう!
そもそも高性能化や環境性能(規制)に対応するため水冷化が進んだので、まったく同じジャンルや方向性、同じエンジン型式や排気量で空冷と水冷のバイクがあるわけではないので、同条件で比較すること自体が困難。とはいえ参考になる数値も少なくない。
空冷の方が軽い?
水冷エンジンはウォーターポンプやラジエター、冷却ファンなど冷却水を冷やすための部品が必要。対する空冷は冷却フィンだけとシンプルなので(オイルクーラーを装備する場合が多いが)、理屈の上では軽量なハズ……。
そこでホンダのCB1300SFと、残念ながら生産終了になるCB1100を比較。CB1100は排気量こそ少ないが、エンジンのクランクケースから下はCB1300がベースなので車体サイズが近く、CB1100RSならタイヤサイズも同じ。燃料タンク容量がCB1100RSの方が5L少ないとはいえ、車両重量で11kgも軽量なので、やはり空冷は軽いかも……!?
排気量が少なくても水冷はパワフル!
ドゥカティのモンスターの937ccエンジンは、排気量的には近年の基準だとミドルとビッグの中間くらいだが、2気筒ながら111psと非常にパワフル。対するスクランブラー1100は、ドゥカティ伝統の空冷L型2気筒で86psを発揮。両車のエンジンはまったく別モノに見えるかもしれないが、ルーツは同じ1979年の500SLパンタで、水冷・空冷を別にすればエンジンのレイアウトも変わらない。それでも、この排気量差で水冷が勝っている。
流行の原付二種は、どう違う?
こちらはカテゴリーも車体構成もかなり異なり、共通点は排気量と前後のタイヤ径くらい。しかもCB125Rは水冷というだけでなくDOHC4バルブで、スーパーカブC125は空冷でSOHC2バルブ。そのためパワーの差は歴然だが、トルクはそんなに大差ない。ちなみに燃費はWMTCモード値でCB125Rの46.8km/Lに対してスーパーカブC125は68.8km/Lと圧勝。両車とも平成32年排出ガス規制適合なので、環境性能ではホンダ伝統の横型空冷エンジンはさすが!
忘れちゃいけないスズキの油冷
バイクのエンジンの冷却方法は水冷と空冷の2種類……だけではない。スポーツバイクのエンジンが空冷から水冷へシフトしていった1985年、スズキは油冷エンジンを搭載したGSX-R750を発売した。
当時の水冷エンジンは構造的に重量がかさみ、エンジンのコンパクト化も難しかったため、スズキは水冷エンジンのライバルとの差別化もあり、油冷エンジンを考案。そもそもエンジンオイルは(水冷・空冷問わず)潤滑だけでなく冷却の役目も持つが、スズキのSACS(スズキ・アドバンスド・クーリング・システム)は、オイルを噴射して吹き付けることで熱境界層を破壊して積極的にエンジンを冷却する機構。
これにより水冷エンジンよりオイル温度を20~25℃も下げ、エンジン重量も水冷より約10%も軽減。アルミフレームも相まって、車体重量は179kg(乾燥重量)と、750ccクラスのライバル車より約40kgも軽量だった。
しかし技術進化によって水冷エンジンの軽量・コンパクト化が進み、GSX-R750も1992年型で水冷化。スズキの他の油冷エンジン車も2008年頃には生産を終了し、もはや油冷は過去の冷却方式……と思いきや、2020年に油冷単気筒250ccエンジンを搭載したジクサー250/SF250が登場。かつての油冷と構造的に異なる部分もあるが、エンジンオイルを利用して積極的にエンジンを冷やす発想はスズキならでは。250クラスで派生モデルも登場している。
それでも空冷は無くならない
厳しい排ガス規制への対応の難しさや、同クラスの水冷と比較してスペック的に劣る空冷エンジン。乗り味やフィーリングのメリットもあるが数値で表しにくいだけに、既存の空冷モデルが徐々に姿を消していくのは寂しさもあるが否めない部分もある。
レースやサーキット走行など動力性能を優先するモデルはもちろん、他のジャンルのバイクも機械としての効率を考えると、水冷エンジンが圧倒的に有利なのは事実だ。とはいえバイクは趣味の乗り物であり、その魅力は動力性能だけにあるわけではない。
ホンダが空冷エンジン搭載のGB350をリリースしたのは記憶に新しいし、ドゥカティやBMWも空冷モデルを揃え、インドのロイヤルエンフィールドはライナップすべてが空冷モデルだ。これは空冷ファンが存在するという事実をバイクメーカーが理解している証……と信じたい。
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