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ハンドリングは、どちらも軽いが軽さの質が異なる
ワインディングで印象的だったのはZ900RSがどこまでも応えてくれるスポーツ性の高さを持っていることだった。タイヤ、サスペンション、ブレーキなど、足まわりの機能パーツ達がライダーの操作に応える。正確な操作をすると正確な反応を見せ、そのレスポンスはネイキッドというよりスポーツバイクに近く、高い運動性とわかりやすいタイヤのグリップを提供してくれる。
メリハリのある操作をせずにバイクなりに走らせることも可能だが、キャリアのあるライダーの操作にはきちんと応えてくれる運動性の高さが魅力だ。
一方でZ650RSは、やはり装着されている足まわりのグレードの差からそこまでは応えてくれない。しかし、そこはスリムさと軽さ、さらにツインエンジン特有のトラクションのわかりやすさでカバー。
これまでグレードの高い足まわりのバイクに乗ってきたキャリアのあるライダーには物足りなくなるシチュエーションがあるかもしれないが、そこまで求めないライダーには十分。250ccや400ccからのステップアップならビッグバイク特有の刺激を約束してくれるはずだ。
Z900RSはライダーの操作によってはどこまでも軽く鋭く曲がれるし、タイヤのグリップも引き出せる。Z650RSはツインエンジンと排気量のメリットを活かして軽く曲がれる。どちらも軽いが、その質が根本的に異なるのである。
Z900RSの4気筒は180度→180度→180度→180度(クランク2回転)の等間隔爆発で、Z650RSの180度クランクの2気筒は180度→540度(クランク2回転)の不等間隔爆発。エンジンを始動した瞬間からフィーリングが異なるため、ショップで音を聞いてみよう!
ハンドル幅は広いがコンパクトなポジションを実現したZ900RS。これまでのZRX1200シリーズやゼファーシリーズよりはかなりコンパクト。Z650RSはハンドル幅が狭く、上半身はコンパクト。ただし座っている場所は高いため、視界は広い(身長165cm)。
マフラーはZ900RSがメガホンタイプなのに対し、Z650RSは車体の真下で完結。カスタムの際Z900RSはスリップオンでも楽しめるが、Z650RSはフルエキゾーストでの交換になりそう。
『全域で余裕のある4気筒』と『高周波ビートが気持ちいい2気筒』
エンジンは4気筒で948ccの排気量を持つZ900RSはさすがに余裕がある。111psのパワーは当然ワインディングで発揮できるはずがなく、常用するのは3000〜5000rpm。それ以上回す必要はない。高いギヤの3000rpmあたりからトルクの立ち上がるところを使ってトラクションを作り出す。スロットルを開けると後輪が路面を掴みそれがグリップ感へと変わっていく。
スロットル開け始めに少しツキすぎる領域があるため、慣れるまでスロットルワークは丁寧に行いたい。この回転でも明確なグリップを生み出せるのは948ccの余裕だ。今回トラクションコントロールが介入することはなかったが、保険という意味でも電子制御があれば安心だ。
Z650RSの並列2気筒エンジンは、低中速を使っても回しても面白く、いろいろな走りの組み立てができるキャラクターだった。高いギヤ低い回転から開けると「タッタッタッ」とリヤタイヤが路面を蹴り、回すと小刻みなビートがライダーに伝わってくる。様々な領域をワインディングで楽しめるのはミドルクラスの特権である。スロットル開けはじめはよく調教されていて、スロットルを開ける楽しさを味わいやすい。
Z900RSとZ650RSはZ1をオマージュした1台だが、似ているのはデザインだけで、中身は別物。性能でいえば圧倒的にZ900RSが有利だが、サスペンションやブレーキの機能や速さを求めない方も多いはず。そんなユーザーにはZ650RSがフィットする。往年のZをもっとリラックスして楽しむのもアリだし、ここからカワサキの奥深さにはまっていくのも面白いはず。
カワサキが提案する様々なZ-RSライフ。自分にフィットするZを見つけていただきたい。
搭載されるエンジン形式が変わるとキャクターがまったく異なってくる。Z650RSはエンジン内の重量物であり常に高速で回っているクランクなどがZ900RSより短いためジャイロ効果の影響を受けにくくハンドリングが軽快になる。
Z650RSのベースにもなったZ650にも試乗したが、これも秀逸。シート高も790mmと低く、ポジションは猛烈にコンパクト。身長165cmの僕でも腰をズラしたりして身体を動かすと窮屈に感じるほど。しかし、エンジンとライダーの距離が近くマスが集中しているためバイクとの一体感はとても高い。軽さとその一体感を武器にどこまでもコーナリングスピードを上げていけそうなフィーリングを持っている。
選択肢が増えたZ-RSシリーズ
最後にネオレトロな雰囲気で大人気となっているZ-RSシリーズを見てみよう。Z900RSは4種類、Z650RSは2種類、そのラインナップと価格はご覧の通り。
Z-RSシリーズの勢いと人気はまだまだ続きそうだが、どの車種も入手困難なのが目下の悩みである。
Z900RS 138万6000円
スタンダードのZ900RS。火の玉、タイガー、イエローボールときたらやっぱり青玉虫(試乗車が青玉虫で、この写真は黒)。このあたりのカワサキの上手さといったらない。今後も様々なカラー展開をしていくに違いない。2018年のデビューから気がつけば5年。各部をマイナーチェンジしながら進化を続けているが、その勢いは衰えそうにない。
Z900RS SE160万6000円
イエローボールの専用色で、オーリンズ製のリヤサスとブレンボ製のフロントキャリパーとディスクを装備。Z-RSシリーズの中ではもっとも高価だが、装着されている部品も見ればお買い得。キャリアがないから高性能パーツは必要ない……というのは間違いで、上質な乗り味はキャリアを問わず様々なシーンで恩恵をくれる。
Z900RS 50thアニバーサリー 149万6000円
ついにZ1の登場から半世紀。それを記念した専用の火の玉カラーは、キャンディー感が強く光の当たり具合で表情を変え、タンク上面には『Z50th』のロゴが入る。左右エンジンカバーやサイドカバーには専用エンブレムを採用。さらにホイールはゴールドで、メッキのグラブバーや上質感を高めたシートも専用品。
Z900RS カフェ 141万9000円
往年のスタイルを現代風にアレンジ。基本的な骨格はZ900RSと共通だが、ビキニカウルに低いハンドルをセットした戦闘的なポジションはまさにカフェレーサー。シングルシート風のシートや、専用のグラフィックなど細部のディテールにもこだわっている。メーカーオフィシャルのカスタム感も強い。
Z650RS 101万2000円
復活したザッパー。何といってもスタンダードのZ900RSより37万4000円も買いやすい価格設定が魅力。憧れのZがグッと身近になった。エンジンは並列2気筒で、速さと軽さを両立。復活したザッパーのスタンダード仕様は、ご覧のキャンディエメラルドグリーンとメタリックスパークブラックを用意する。
Z650RS 50thアニバーサリー 110万円
Z誕生50周年の節目に登場したZ650RSは、デビューイヤーに記念カラーをラインナップ。Z900RSの50thアニバーサリーと同様に専用のキャンディ火の玉カラーを纏い、タンク上面には『Z50th』のロゴが入る。上質なシボ入りの専用シートやサイドカバーのエンブレム、そしてメッキグラブバーを装備する。
動画【カワサキ Z650RS】蘇るザッパー!兄貴分Z900RSとも徹底比較だっ!〈丸山浩×小川勤 対談も〉
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