
●文:モーサイ編集部(石橋寛)
ヘルメットをどう持ち運ぶ? 購入時に付属の“保存袋”はお出かけ向きじゃないような…
ライダーにとって、ヘルメットは身に着けて移動するものと相場は決まっていますが、ときおり電車での移動や自転車でもって教習所に通うなどという場面も。はたまた、タンデムツーリングに出かける際、後席に座る方(いわゆるパッセンジャー)を迎えに行くなどというシーンでも、ヘルメットを持参する必要が生じるかもしれません。そんな場合は、たいていはヘルメットを買った際に付属してきた保存袋を使ったりするのがデフォルトでしょう。
しかしながら、あの保存袋とやらは、名前の通り保存しておくには適しているのでしょうが、持ち運びにはやや不便。なんとなれば、ヒモでぶら下げることになり「スイカじゃないんだから」と自らに突っ込みを入れる方すらチラホラと。
「ヘルメットバッグ」と検索すると、ナゾのトートバッグが大量にヒット!?
そこで、ヘルメットが入るバッグを買ってもいいかなと、「ヘルメットバッグ」と検索してみると、出るわ出るわ、“俺が探してるのはこれじゃない”感マシマシなバッグ。大きなトートバッグのようなカタチです。
たしかにオシャレだし大ぶりな袋モノだから、形状によってはヘルメットも入ることもあるかもしれませんが、スクエアなスタイルや、担げそうもないちょっとした手提げハンドルなど、およそライダー向けには見えません。
一体、どうしてこれが「ヘルメットバッグ」と呼ばれているのか、不思議に思う方も少なくないでしょう。
トートバッグ風「ヘルメットバッグ」の誕生は、1950年代のアメリカ空軍
じつは、このトートバッグ風ヘルメットバッグはアメリカのミリタリーグッズに端を発しているもの。その来歴をちょっとだけご紹介しましょう。
1950年代、朝鮮戦争時にアメリカ空軍(US AIR FORCE)が正式に組織された際、パイロットがハードヘルメットを装着するようになりました。ハードヘルメットには強い日差しをカットしてくれるサンバイザーや、高高度向け酸素マスクといった装備があったため、空軍の装備課が「やっぱ、なんかバッグにいれたほうが良さげ」と考えたとしても妥当でしょう。
ちなみに、ハードヘルメット以前は、レザーでイヤーマッフルがついた“飛行帽”でしたから、バッグやケースの必要性はそれほど高くなかったのでしょう。
で、最初に支給されたヘルメットバッグは、いわゆる普通のトートバッグ。ナイロン製で、当時の写真を見ればわかりますが、いかにもミリタリーなテイストで少々安っぽい。これでヘルメット大丈夫か? と思わず心配になってくるほど。それでもシンプルで丈夫そうな印象で「これはこれでアリ」と思わせてくれる仕上がりです。
その後、空軍で好評だったのか、陸/海軍でも「ヘルメットバッグ」が正式備品となりました。朝鮮戦争が終結し、アメリカがベトナム戦争に介入したころですから、1960年代ということですね。
そして1970年代、現代に生き残るあのカタチに
で、トートバッグだったスタイルが、今度はちょっと大きめのきんちゃく袋に変わりました。現代のいわゆる「ヘルメット保存袋」とさして変わらないスタイルですが、当時は陸海空軍とも兵士向けバッグが充実していたらしく、このきんちゃく袋はバッグインバッグとして活用されていたようです。そして、カラーもいわゆるアーミーグリーン(セージグリーン)へと変更。ミリタリー感が上がってきました。
そして1970年代、ベトナム戦争が終わってからのヘルメットバッグこそ、検索するとたくさん出てくる“あのカタチ”へとモデルチェンジ。おおむねトートバッグに近いものですが、バッグの身頃には大きなポケットが装備され、支給される日用品がどっさり入る仕様です。また、容量も上がっているようで、朝鮮戦争後も進化を続けているパイロットヘルメットの大型化にも対応しているとのこと。それにしても、シンプルというか無骨なスタイルなのに、ファッションシーンでこれほどウケて、後にスタンダード化するとは、最初の備品課担当者は夢にも思わなかったことでしょうね……
※本記事は2022年8月24日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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