「意外と知らない」「なるほどわかる」水冷エンジンと空冷エンジンって何が違うの⁉︎ バイクの基本をおさえちゃおう!

●文:[クリエイターチャンネル] 88サイクルズ@てんちょー
バイクという乗り物の大きな魅力のひとつが多種多様な構成のエンジンです。みなさんもエンジンが気になって調べたことがあるんじゃないでしょうか。そこでよく出てくるのが「空冷」や「水冷」というワードです。これらはエンジンの冷やし方のタイプを表した言葉なんです。今回はエンジンの冷やし方、二大巨頭の違いを紐解いて行こう!
エンジンは熱との闘い
エンジンは空気とガソリンを混ぜた混合気を燃焼室で燃やすことで動力を取りだしています。当然、内部でガソリンが燃えているんだから、エンジン全体がだんだん熱くなってきますよね。あまりにも高温になるとオーバーヒートでエンジンが停止、最悪の場合はピストンやシリンダーが溶けて、くっついたり変形したりする、焼き付きという症状になってしまうこともあります。熱すぎるとエンジンだって壊れちゃいます。
そんなことにならないようにエンジンが動いている間は、常にエンジンを冷やす機構が働いているんです。その冷やし方に、違いがあるってことなんだね。
コスパよく、ゆるさが魅力の空冷エンジン
空冷は、空気でエンジン全体を冷やす方式です。エンジンがむき出しになっているバイクでは、走ることによってエンジンに風を当てて、冷やすことができるわけなんです。
冷却効率を上げるために、シリンダーやシリンダーヘッドには、「フィン」と呼ばれる薄い金属の板が備えつけられています。これは金属でできたエンジンの表面積を増やすことで、空気に触れる部分を増やし、放熱効果を高めるための機能部品なんです。この冷却フィンはデザインとしても美しいので、空冷エンジンに人気がある一因となっています。
空冷エンジンは走行風で冷やすという性質上、バイクが停車したら、どんどん熱がこもるというデメリットもあります。信号待ちでアイドリングしている時間が長いだけでも、エンジンの温度は上がってしまうというわけ。つまりエンジンの、とくにシリンダー付近の温度を一定に保つことが難しいんです。
そのままじゃ熱膨張でピストンとシリンダーがどんどん近づいていって、オーバーヒートまっしぐら。そこで対策として、熱による金属の膨張を見込んで、1番熱にさらされるピストンとシリンダーの間には少しの隙間、いわゆるクリアランスが設けられています。
そのため、エンジンが暖まって、このクリアランスが適正値になるまでは、性能が発揮しずらくなっています。始動直後に振動が大きかったり、回転上昇がぎこちなかったりするのも、このため。スロットルの操作に対して、じんわり加速していくという、空冷エンジン搭載車のゆるいフィーリングも、クリアランスの大きさが影響しているんです。
また、クリアランスが大きい分、本来排気されるはずの燃え終わった燃焼ガスや、燃え切っていない混合気の未燃焼ガス、エンジンオイルなどの、いわゆるブローバイガスがクランクケース内に漏れ出しやすくなっています。
ブローバイガスは、ブローバイホースを通じてエアクリーナーへ戻され、再び吸気されるため、ブローバイガスの分だけ、新しく吸気できる新鮮な混合気の割合が減少。空冷がパワーを発揮しにくいのは、ここにも理由があります。
デメリットも多いけれど、構造がシンプルな分、軽くてコストも抑えられるし、穏やかなフィーリングで扱いやすいのが空冷エンジンのいいところ。メンテナンスも容易なので、小排気量車や、実用車でよく採用されています。
現代では標準的な水冷エンジン
対する水冷は、シリンダー近くのウォータージャケットという専用の通路に、液体を循環させてエンジンを冷やす方法です。冷却用の液体には、凍結しにくくて防錆効果も持つ、クーラント液を使うことが多いですね。エンジンの熱を吸収したクーラント液は、ラジエターを通る際に走行風や冷却用ファンの生み出す風によって冷やされ、再びエンジンの冷却へと向かうという仕組みです。
水冷式のエンジンは、エンジンの温度を外気温や走行速度に関係なく、一定に管理することができます。つまり、ピストンとシリンダーの間のクリアランスを空冷より少なくできて、高出力化が可能ということ。さらに、エンジン全体を走行風に当てる必要がないため、スーパースポーツのようにエンジンをカウルで覆ってしまっても、エンジンの冷却に支障がありません。
水冷式はウォータージャケットの分、エンジン幅が大きくなり、ラジエターや冷却水循環用のウォーターポンプ、ホース類など部品点数が多くなりがち。構造も複雑化しやすくコストも高くなりがちなのが、ネックです。しかし、現代的な高出力エンジンを作るには、もはや必須条件となっている冷却方式なんですね。
さらに、今や水冷エンジンの新車が大半となっている大きな理由のひとつが、ユーロ5をはじめとした排出ガス規制の影響です。年々、厳しくなる基準をクリアするためには、排気ガスの温度を綿密にコントロールして、有害物質を浄化しないといけません。前述したとおり、空冷エンジンは温度管理が苦手。排気ガス中の有害物質を再燃焼させるといった制御だってできません。そのため、温度管理が容易な水冷エンジン搭載車でないと市販化が難しくなってきているのです。
エンジンの冷却方式でバイクの特性がだいたいわかる!
高性能かつ車体設計の自由度が高い水冷式と、エンジンの美しさや独特のフィーリングを持つ空冷式。それぞれの特性がわかると、自分のバイクの特徴がわかりやすくなって、さらに愛着が湧きやすいかも。これから愛車を選ぶという人は、エンジンの冷却方式から選んでみるのもいいと思うぜ!
88サイクルズ Youtube本店では、バイクを広めるためにてんちょーが動画でバイクを語ったり、配信でツーリングに行ったりしています。Youtubeにも遊びに来てね!
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(てんちょー)
細身のジャケットにワイシャツとネクタイ…ブリティッシュトラッドなコーデって、パリッとした王道スタイルだよね! そういえばバイクでも英国風なトラディショナルバイク、ホンダGB350シリーズが、人気になっ[…]
ホンダの英国車風シリーズ「GB」 ミドルクラスで大人気のバイクのひとつといえば、ホンダのGB350だよね! じつは、このGBという名前、かつてのホンダ、英国風カフェレーサーシリーズから引き継がれている[…]
BIGなCBとBIGな企画 ビッグマック! ビッグサンダー! ビッグカツ!! てんちょーもBIGになってバイクをもっと布教したい! そう、目標はホンダのBIG-1ぐらい大きくなきゃね。え、BIG-1っ[…]
1分でわかる記事ダイジェスト ハンターカブという通り名 ホンダのスーパーカブシリーズの一員「ハンターカブ」。オフロード性能を高めたアドベンチャーなカブで、アウトドアテイスト溢れている。その歴史と由来を[…]
「コスプレとバイク」本編 今回のバイク:Vストローム250とNIKEN Vストローム250はスズキの250㏄クラスのアドベンチャースタイルのバイクです。ガソリンが17L入るタンクやフロントのスクリーン[…]
最新の関連記事(ビギナー/初心者)
日本語表記では「前部霧灯」。本来、濃霧の際に視界を確保するための装備 四輪車ではクロスオーバーSUVのブーム、二輪車においてもアドベンチャー系モデルが増えていることで、「フォグランプ」の装着率が高まっ[…]
シリーズ第9回は『クイーンスターズ』と一緒に「引き起こし」だ! 白バイと言えばヤングマシン! 長きにわたって白バイを取材し、現役白バイ隊員による安全ライテク連載や白バイ全国大会密着取材など、公道安全運[…]
シリーズ第7回は「パイロンスラローム」。リズミカルな連係操作を身に付けよう! 白バイと言えばヤングマシン! 長きにわたって白バイを取材し、現役白バイ隊員による安全ライテク連載や白バイ全国大会密着取材な[…]
シリーズ第6回は「小回り&Uターン」。ボテゴケ体質を改善だ! 白バイと言えばヤングマシン! 長きにわたって白バイを取材し、現役白バイ隊員による安全ライテク連載や白バイ全国大会密着取材など、公道安全運転[…]
雨の日の滑るポイント「滑るMAXな四天王+1」 バイクが雨の日に滑る場所って、だいたい決まってます。もうわかりますよね? ライダーならみんな一度はヒヤっとしたことある、あの“定番トラップ”たちです。滑[…]
最新の関連記事(ニュース&トピックス)
ニッポン旧車烈伝 昭和のジャパン・ビンテージ・バイク 323選 1960年代から1990年代に発表された数々の銘車たち……そのうち300台以上を厳選、年式変遷や派生モデルを含め紹介。 大型やマルチはも[…]
1960~70年代を象徴する2つのCB 1974年に登場したホンダCB400FOUR、通称「ヨンフォア」は、日本のバイク史において今なお特別な輝きを放つ一台である。その流れるように美しいスタイルと当時[…]
スズキは、同社の直営店「スズキワールド」が提供するレンタルバイクサービスを、スズキワールド葛飾店に続きスズキワールド多摩店でも開始したことを発表した。このサービスは、話題のスズキのオートバイを試したい[…]
18時間耐久の優勝で「ヨシムラ」は全国区に 加えて、ホンダから市販車ベースのレース車両の開発依頼もあったものですから、ヨシムラは1965年に東京の福生に移転しました。私は高校1年生でしたので、卒業まで[…]
簡単取り付けで、強い日差しから愛車を強力ガード 「MotoBrella」の最大の特徴は、保護カバーとしての機能性と、気軽に持ち歩くことができる携帯性のバランスが優れていること。 シートの生地は、UVカ[…]
人気記事ランキング(全体)
最新モデルはペルチェデバイスが3個から5個へ 電極の入れ替えによって冷却と温熱の両機能を有するペルチェ素子。これを利用した冷暖房アイテムが人気を博している。ワークマンは2023年に初代となる「ウィンド[…]
アウトローなムードが人気を呼んだフルフェイスがついに復活! 6月3日付けでお伝えしたSHOEIの新製品『WYVERN(ワイバーン)』の詳細と発売日が正式に発表された。 1997年に登場したワイバーンは[…]
バイクツーリングにおすすめの都道府県ティア表 バイクツーリングの魅力は、ただ目的地に行くだけでなく、そこへ至る道中のすべてを楽しめる点にある。雄大な自然が織りなす絶景、心地よいカーブが続くワインディン[…]
水冷Vツイン・ベルトドライブの385ccクルーザー! 自社製エンジンを製造し、ベネリなどのブランドを傘下に収める中国のバイクメーカー・QJMOTOR。その輸入元であるQJMOTORジャパンが、新種のオ[…]
東洋の文化を西洋風にアレンジした“オリガミ”のグラフィック第2弾登場 このたびZ-8に加わるグラフィックモデル『ORIGAMI 2』は、2023年1月に発売された『ORIGAMI』の第2世代だ。前作同[…]
最新の投稿記事(全体)
日本語表記では「前部霧灯」。本来、濃霧の際に視界を確保するための装備 四輪車ではクロスオーバーSUVのブーム、二輪車においてもアドベンチャー系モデルが増えていることで、「フォグランプ」の装着率が高まっ[…]
ニッポン旧車烈伝 昭和のジャパン・ビンテージ・バイク 323選 1960年代から1990年代に発表された数々の銘車たち……そのうち300台以上を厳選、年式変遷や派生モデルを含め紹介。 大型やマルチはも[…]
新型トレーサーでACCとY-AMTが融合! 今回のビッグチェンジで色々機能が追加されたり改変を受けているトレーサー9 GT+ Y-AMTではあるが、何はともあれ書くべきは前走車追従型のクルーズコントロ[…]
1960~70年代を象徴する2つのCB 1974年に登場したホンダCB400FOUR、通称「ヨンフォア」は、日本のバイク史において今なお特別な輝きを放つ一台である。その流れるように美しいスタイルと当時[…]
乱流の抑制効果をプラスすることで、高い空力性能を発揮 カローラクロスは、5月に実施した一部改良でエクステリアとインテリアのデザインが刷新。従来のファミリーカー的な大人しいイメージが薄れ、より現代的で洗[…]