水冷でも空冷でもない⁉ 油冷エンジンを搭載したスズキ ジクサー250/SF250と歴史的バイク達

  • 2024/05/08 6:00
  • [CREATOR POST]てんちょー

●文:[クリエイターチャンネル] 88サイクルズ@てんちょー

天ぷらにも負けない油冷ロマン ジクサー250/SF250

今日のお昼は天ぷら弁当~♪ 天ぷらを揚げる油たっぷりなお鍋ってスズキの油冷エンジンを連想しない? てんちょーだけ? 最新の油冷エンジンを搭載したライトウエイトスポーツ車であるジクサー250とジクサーSF250を見てごらんよ!

油冷エンジンという技術を活用したバイクは天ぷらに負けないぐらいぐらいロマンがあるんだよ! 今回は歴代のスズキの油冷エンジン搭載車を振り返りながら最新の油冷エンジン搭載車まで見ていこう!!

スズキ 油冷エンジンの始まり

市販車で初めて油冷エンジンを搭載したバイクは1985年登場のGSX-R750です。

このバイクに搭載された並列4気筒749ccのエンジンに採用された、SACS(スズキアドバンスドクーリングシステム)がその肝です。エンジン内部の潤滑に使うエンジンオイルを冷却にも活用するという油冷エンジンの基本的な設計思想を確立したことにより、油冷エンジンは空冷エンジンよりも冷却性能が優れている一方で水冷エンジンより軽くコンパクトに設計できるというメリットを実現できました。

GSX-R750の車体はアルミフレームの採用や車体全体の徹底的な軽量化により750ccクラスの他車が乾燥重量で200kgを超える中で、乾燥重量179kgという当時としては驚異的な軽量化を達成。それまでのナナハンスポーツの概念を大きく塗り替えました。このバイクを皮切りに油冷エンジンを搭載するバイクが続々登場します!!

続々登場する油冷エンジン搭載のバイク達

ロードスポーツからツアラーまで路線を拡大した油冷4気筒

続いて登場するのは、1986年のGSX-R1100(海外モデル)です。1052ccの油冷エンジンを搭載したフラッグシップモデルでした。

750ccモデルよりツアラー寄りの性格をしたバイクだったものの、130psの最高出力を持つエンジンは実測最高速度252km/hをたたき出すというモンスターマシンという面も併せ持っていたのです。

そしてこのエンジンを1127ccまで排気量を拡大させてメガスポーツツアラーとして仕上げたGSX1100F(海外モデル)が1988年に、翌1989年にはGSX-R750の油冷エンジンを中低速重視にセッティングしたスポーツツアラーとしてGSX750Fも登場しました。

油冷エンジンを使ったツアラー路線のモデルには、1991年登場のGSX1100Gという知る人ぞ知る海外モデルもありました。駆動方式にシャフトドライブを採用しているという独特なツアラー寄りネイキッドで、歌手の矢沢永吉さんが乗っていたことはファンの間では有名となっています!

アドベンチャーとして登場したスズキの油冷単気筒

さらに油冷の技術を使ったエンジンは4気筒モデルばかりではありません。そこで取り上げたいのが、インパクトの強い、1988年登場のDR750S(海外モデル)です。

なんとスズキのラリー用ファクトリーマシン「DR-ジータ」のレプリカマシン! いわば現在のVストロームシリーズのご先祖様だね。このバイクには727ccもある油冷の単気筒エンジンが搭載されていました。このエンジンは1990年に排気量を779ccまで拡大してDR800S(海外モデル)に搭載されました。

1990年には二代目DR250Sで250ccにも油冷単気筒エンジンが登場します。1992年にはこのエンジンを引き継いでDJEBEL250シリーズが登場しています!

油冷単気筒にはロードスポーツもあり

単気筒の油冷エンジンにはオンロードバイクもありました。有名なのが1991年登場のグース350だね。

単気筒の油冷エンジンをトラスフレームに搭載したシングルロードスポーツです。「グース」という名前はマン島ツーリストトロフィーのあるコーナーについた名前「グースネック」に由来します。ロマンあふれるバイクだね~。翌年には250cc版のグース250も登場しています。遡ること1986年にはご先祖といえるNZ250もありましたが、ちょっとこちらはマニアックかも。

1990年代後半からはネイキッドブームの流れとともに

そして時代は空前のレトロネイキッドブームとなると油冷エンジンを搭載した王道ネイキッドモデルたちも登場します。まずは1995年登場のGSF1200です。

並列4気筒1156ccの油冷エンジンを軽量でショートホイールベースな車体に搭載したお洒落じゃじゃ馬ネイキッドです。1996年にはシリーズ車として750cc版のGSF750もGSX-R750譲りの油冷エンジンを搭載して登場しています。海外ではGSF600シリーズも展開されました。GSF1200は2000年にバンディット1200/バンディット1200Sへモデルチェンジしますが引き続き油冷エンジンを採用していました。

そして油冷エンジンはミドルクラスにも登場します。それが1997年登場のイナズマです。

400cc初の油冷エンジン搭載ネイキッドとなったこのバイク。翌1998年には400とほぼ同じサイズの車体に並列4気筒1156ccの油冷エンジンを搭載するイナズマ1200も登場しています!

油冷エンジン搭載車には印象的なモデルも現れます。それが2001年登場のGS1200SSです。80年代初頭のスズキ耐久レーサー「GS1000R」風のスタイリングにまとめあげられたお洒落ロードスポーツです。今なら売れそうなネオレトロ感がある1台です。

そして初期油冷エンジンの集大成といえるモデル、GSX1400が2001年に登場します。

新開発の並列4気筒1401ccエンジンを搭載した迫力のビッグネイキッドモデルです。圧倒的な存在感を誇ったバイクでしたが、2008年には生産終了。それとともに、スズキの油冷エンジンはしばしの眠りにつきます。

新世代油冷エンジンの誕生

最後の油冷エンジンGSX1400から7年後の2015年、スズキは東京モーターサイクルショーにてコンセプトモデル「フィール フリー ゴー !」を参考出品します。これは自転車感覚の原付クロスバイクというコンセプトで50ccのエンジンを搭載していたんですが、なんとこのエンジン、油冷を採用していました! 今思えばこれはスズキによる最新技術のチラ見せだったのかもしれかもしれないね。

そんな前振りから5年、2020年に満を持して登場するのがジクサー250とジクサーSF250です!

名前の「ジクサー」はGSX-Rシリーズのユーザー側でのニックネームだったんだけど、 ジクサー150からスズキが車名に採用したというユニークな経緯があります。

注目はやっぱりGSX1400以来となる油冷エンジンを搭載していた事です! 新開発の油冷4ストロークSOHC単気筒249ccのエンジンにはSOCS(スズキオイルクーリングシステム)という新時代の油冷システムが採用されています。

一見すると水冷エンジンに見えるエンジン外観は冷却フィンがなくなくてもいいほどに高い冷却効率を持っているという証拠です。令和の油冷エンジンは見た目もスマートなんだね! エンジンのコンパクトさは、ジクサー250が154kg、ジクサー SF250が158kgというワンクラス下に近い車両重量の実現にも貢献しています。

この新しい油冷エンジンは2023年にアドベンチャースタイルのVストローム250SXにも搭載されているし、今後いろいろいろいろなモデルにも採用されて行きそうだね!

まとめ:新時代の油冷コンパクトスポーツ ジクサー250/SF250

GSX-R750から始まったスズキの油冷システムSACSはGSX1400に至るまでにさまざまさまざまなモデルに搭載され、世界中に油冷エンジンファンを増やしていきました。そして令和になり登場したジクサー250/SF250では、最新の技術によって効率のいい冷却性能と軽量コンパクトさをSOCSとして再構築し、新たな油冷エンジンの可能性を示したのです!!

こういった独自技術のバイクに触れるとバイクの奥深さにハマって病みつきになる事間違いなし! 最新の油冷エンジンが気になる人はジクサー250、ジクサー SF250を要チェックだぜ!!

88サイクルズ Youtube本店では、今回の記事で取り上げたバイクをてんちょーが自由気ままに語り散らかした動画版「バイク小噺」を公開中です。Youtubeにも遊びに来てね!!

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