【2スト】排気量上げてもパワーダウン? 激安ボアアップキットの罠

安かろう悪かろう?? バイクを手っ取り早くパワーアップさせるなら排気量を上げる「ボアアップ」が一番手っ取り早い方法です。だけど、安く買えるボアアップキットを取り付けたら、かえってピークパワーが下がることもあるよ?というお話です。
●文/まとめ:ヤングマシン編集部(DIY道楽テツ)
「ボアアップ」・・・
排気量を上げてエンジンパワーを増大させる、なんとも甘美な言葉ではないでしょうか(ウットリ)。
本来、ボアアップキットはとても高価なアイテムですが、近年ネット通販の普及もあって、あらゆるメーカーのものというだけでなく、激安のボアアップキットすら買えるようになりました。
だけど、注意しなくてはならないことがあるのです。排気量が上がったのに、最高出力が下がるなんてことがあるかもよ? そんな可能性があることを皆様にお伝えしたいのです。
ここから全て筆者の経験談
ヤマハDT50用のボアアップキット買いました。
KN企画シリンダーキット46mm(65cc)/DT50・RZ50
税込販売価格:23,100円
お値段なんと2万円ちょい!!
かつて存在していたボアアップキットは5万円超えもザラだったので非常にリーズナブル。思わずポチっちゃったわけですよ、はい。
で、届いたのがこちらのキット。
ノーマルと比べるとボアの大きさの違いは一目瞭然。排気量が50ccから65ccへアップします。たかが15ccと思うことなかれ。数値は小さくとも実に30%の排気量アップだし、仮に1000ccだとしたら1300ccになっちゃうんだからその変化は期待したいところ。
スリーブ、薄!!
加工バリが残っていることもあるという口コミだったので、シリンダー内壁をチェックしてみました。裏を見てびっくり。ぎりぎりまでボーリング加工されたスリーブが薄いったらありゃしない。
ノーマルのシリンダーに近いものをベースにボーリング加工したのでしょうか? 元々の排気量の設計ではないので スリーブが薄くなってしまうのは当然のこと。
…うん?
ボーリング加工??
あっ、違和感!
シリンダーを上から見たら強い違和感を感じました。
すかさず、排気ポートの高さを測ってみると…
ノーマルに比べて約2ミリも違う!!
排気量を上げるとポート高さが変わっちゃうカラクリ
どうして排気ポートの高さが下がってしまったかというと、理由は簡単です。
シリンダーを横から見ると、排気ポートはご覧の通り斜めに走っています。
なので、ボーリング加工で単純にボアを拡大してしまうと…
ポートの位置が下がるのです!
こりゃ大変だ。
何が大変かというと、2サイクルは4サイクルのようにバルブの開閉によって吸気排気圧縮がしっかり制御されていません。爆発燃焼によって排気ポートから飛び出した圧力がチャンバー内壁に反射して戻ってきて、その排気脈動によって吸気された混合ガスを燃焼室に閉じ込めるという、なんとも計算しづらい複雑な性質をもっているのです。
構造はシンプルなんですけどね(笑)
ややこしい話は割愛しますが、ノーマルに比べて2mmも排気ポートが下がるということは、エンジンの性格がガラッと変わってしまいます。
ざっくりシンプルに言うと、ピーク回転が下がっちゃう。
高回転型のエンジンが、中回転型のエンジンになるということ。
それはつまり、スポーツバイクがカブみたいなビジネスバイクになる感じ。
その予想は当たっていて、このボアアップキットを組み付けてから実際に走ってみると、パワーバンドの回転域が全体的に2000回転も下がりました。
ボアアップして排気量が上がったのに、体感できるピークパワーは下がってしまったのです…。
ちなみに、吸気ポート(掃気ポート)の高さも変わってしまうので、エンジンの性格は全然別物になってしまうのです。
モノは考えよう? 素材と考えるか、乗りやすさを取るか…
専用設計じゃないからしょうがないですね~。
これを65ccの排気量としてゼロから作った場合、吸排気特性から全部見直しになるので開発する手間は膨大なものとなります。
もしそうしたら、値段はやっぱり高いものになってしまうでしょう。
なので、素材の原価とボーリング加工賃と考えればこの値段は納得なのです。
もしこのボアアップキットで高回転特性を取り戻したいならば、ポートを加工して自分でチューニングするしかないけど、これがまたとてつもなく難しくて、知識と経験と熟練と技術を要する作業になってしまうのです。
時間かけて作業したけど、削りすぎちゃって逆にパワーダウンしたり最悪エンジンが焼き付いたりしていまうのはよくある話。
だけど・・・ モノは考えようで、排気量アップによって低回転は確実にトルクアップしているので、そこにピーク回転を落とす特性が加わると、2サイクルエンジンとは思えないようなトルクフルで乗りやすいエンジンになるのです。
2サイクルのピーキーさに不慣れな今の若い人には、むしろちょうどいいかもしれませんね~。
事実非常に乗りやすくて、オフロード走行でテストしてみたらメチャクチャ走りやすかったです。
オフロード走行ではすっごく乗りやすくて最高! だった
永遠の峠小僧へ告ぐ! 「にわかチューナー」やってみない?
と、いうわけで。
お値段が安いし、古いバイクにもかかわらず現在でも部品提供していることはとてもありがたいと思います。
これもひとつの「素材」と考えて、扱いにくいじゃじゃ馬を好む40代以上のおっさんは、リューター片手に「にわかチューナー」気分でポート加工に挑んでみるのもまた一興ではないでしょうか?
首尾よく高回転に回るようになってパワーアップすれば良し、うまく行かななくてもそれはまたそれで良し?とか思っちゃったりして。
2サイクルが消えゆく昨今、おっさん達よ自分好みのエンジンにするべく格安ボアアップキットを手に入れてチューンナップに挑戦してみようではないか~!
この記事が皆様の参考になれば幸いです。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました~!
動画解説はこちら↓
YouTube動画のほうでは映像付きで解説しているのでよかったら参考にしてください♪
私のYouTubeチャンネルのほうでは、「バイクを元気にしたい!」というコンセプトのもと、3日に1本ペースでバイクいじりの動画を投稿しております。よかったら遊びにきてくださいね~!★メインチャンネルはコチラ→「DIY道楽」 ☆サブチャンネルもよろしく→「のまてつ父ちゃんの日常」
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(DIY道楽テツ)
エンジンがかかりにくい→完全停止へ 今回直したのはスズキのZZです。2000年代初頭に登場した50ccスクーターで、「通勤快速」として人気を博し、油圧ディスクブレーキやアルミホイールなど、当時としては[…]
雨の日の滑るポイント「滑るMAXな四天王+1」 バイクが雨の日に滑る場所って、だいたい決まってます。もうわかりますよね? ライダーならみんな一度はヒヤっとしたことある、あの“定番トラップ”たちです。滑[…]
スパナやレンチの長さが違うのはナゼ? 工具箱に並ぶスパナやレンチ。 10mm、12mm、14mm…サイズごとに全長が違うのは、当たり前の光景ですよね。これもそうだし。 コッチもそう。狭所作業用の短いス[…]
ダイソーのアイテムを買ってみよう使ってみよう この記事で取り上げるダイソーのアイテムは「極厚 油よごれクリーナー」! 税込み110円で大判15枚入り。商品名が「油よごれクリーナー」なのに・・・ その下[…]
「バイクのスプロケットの交換タイミングはいつなんだろう?」 これは、バイク仲間や先輩、バイク屋さんやバイク雑誌などでも昔からとずっと語られてきたことで、今ではインターネット検索すればいくらでも情報が出[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
エンジンがかかりにくい→完全停止へ 今回直したのはスズキのZZです。2000年代初頭に登場した50ccスクーターで、「通勤快速」として人気を博し、油圧ディスクブレーキやアルミホイールなど、当時としては[…]
大和ハウスグループが手がけたD-Wash 愛車を長持ちさせるためにも、大切にしたい「洗車」という作業。 汚れの放置はサビや各部品の劣化が進むことにもつながるし、洗車をしながら、緩んでいるボルトやパーツ[…]
“機械遺産”のコンディションをどう維持するか 電気自動車や電動バイクの普及が進めば進むほど、旧車や絶版車ムーブメントは一段と熱くなりそうだ。内燃機関に対する注目度が高まるのと同時に、ユーザー自身は“機[…]
擦らず拭くだけでOK。デリケートな素材も傷つけることなく赤サビを除去できる バイクや自動車の部品はもちろん、橋梁/建築物/工具/アウトドア用品の材料として当たり前のように使われている鉄素材。豊富な埋蔵[…]
スパナやレンチの長さが違うのはナゼ? 工具箱に並ぶスパナやレンチ。 10mm、12mm、14mm…サイズごとに全長が違うのは、当たり前の光景ですよね。これもそうだし。 コッチもそう。狭所作業用の短いス[…]
人気記事ランキング(全体)
オートマ・AMT&ベルトドライブ採用の250ccクルーザー! 自社製エンジンを製造し、ベネリなどのブランドを傘下に収めることでも知られる、中国・QJMOTOR。その輸入元であるQJMOTORジャパンが[…]
懐かしのスタイルに最新技術をフル投入! 2025年3月の東京モーターサイクルショーで詳細が発表されたヨシムラヘリテージパーツプロジェクト。対象機種は油冷GSX-R750とカワサキZ1となっており、GS[…]
K-2439 フルメッシュロングジャケット:スタイルと機能を両立するツーリングジャケット 腰までしっかりと覆う安心感のあるロング丈でありながら、後襟から袖口へ流れるように入ったラインデザインと、ウエス[…]
日本を代表するツーリングロードのティア表だっ! 「次のツーリングは、どこへ行こう?」 そんな嬉しい悩みを抱える全てのライダーに捧げる、究極のツーリングスポット・ティア表が完成した。 ……いや、そもそも[…]
機能豊富なマルチパーパスフルフェイスのシールドを外した、さらに身軽なフォルム 『TOUR-CROSS V』は、アライヘルメットが’23年6月に発売したマルチパーパスヘルメットだ。高速走行時の空気抵抗を[…]
最新の投稿記事(全体)
「背肩シート・セットで蒸れんゾ・インテグラ―レ」とは? これまで多くのライダーが夏の「熱」や「蒸れ」に対して様々な対策を講じてきた。高機能なインナーウェア、メッシュ構造のジャケット、あるいは空調ウェア[…]
シリーズ第6回は「小回り&Uターン」。ボテゴケ体質を改善だ! 白バイと言えばヤングマシン! 長きにわたって白バイを取材し、現役白バイ隊員による安全ライテク連載や白バイ全国大会密着取材など、公道安全運転[…]
夏の避暑地としても人気の山中湖エリア 山梨県南都留郡山中湖村に位置する山中湖は、東京からもっとも近い森と湖のリゾート地として人気だ。富士五湖の中でもっとも富士山に近く、湖越しに望む雄大な富士山の姿は圧[…]
バイク駐車場の拡充に取り組む千葉市 千葉市内には6区で50の鉄道駅がある。中でも千葉駅は千葉県の中心駅として、JR東日本の在来線6線と京成電鉄、さらに千葉都市モノレールが乗り入れている。 都心や成田空[…]
州知事や政府関係者のほか、従業員も参加し祝う 四輪車はもちろん、ビジネスジェット機でも知られ、最近では再使用型ロケットでも話題のホンダ。その始まり、つまり「祖業」は二輪車にある。 スタートは自転車用補[…]
- 1
- 2